【 恋愛なんてくだらない 】
同級生の山峰春花。
僕は彼女に恋したことが嬉しかった。
” 恋愛なんてくだらない ”
人を信じては傷ついて、怒って泣いて感情をさらけ出す…。
そんな姿を人に見せるなんて格好悪い、僕はずっとそう思っていたんだ。
高校時代に砕け散った僕の淡い恋心。(※)
きっと知らず知らずのうちに臆病になっていたんだと思う。
山峰さんに恋していたことも怖がってどこかで気付かないふりをしていたのかもしれない。
ク―ルなふりをして人と距離を置く。
そうやって傷つかないように自分の気持ちをうまく隠して逃げていたんだと思う。
自分をさらけ出して、みんなでバカみたいに大騒ぎ。
本当になんて清々しんだろう。
空はいつもより青く広く、空気はとても美味く感じた。
こんなに楽しいのは一体いつぶりだ?
僕はきっと、今までにもたくさんの大切なことを取りこぼしてきたに違いなかった。
だってずっと一緒にいたはずなのにみんなのことを全然知らなかったんだ。
いつもだらしない賢治や麻雀三昧のあげく試験をたくさん落とす井上にも心底呆れていた。
医者を目指すための心構えができていない。
こいつら本当に医者を目指す気があるのか?
そんな風にも思っていた。
知ろうともせず人と距離を置いていた僕。
毎日一緒に授業を受けていたのに山峰さんのことにも全く気付かなった。
三田さんと賢治がこんなにも仲良しだったことも、井上に美鈴さんという彼女がいることも、真剣に二人の将来を考えていることも知らなかった。
みんなが教室で楽しそうに話しをしていても会話に入ろうとさえしなかった。
くだらない、面倒だと避けていたことが、大切な事だったんだと今さらながらに気付いたんだ。
例え授業で居眠りばかりしていても、試験をたくさん落としても、バカみたいに教室で騒いでいても…。
みんなの方がずっとずっと “人間らしい” 、そう思った。
誰よりも大人なつもりでいた僕。
‶ク―ルボ―イ″なんて言われて格好つけても自分が一番子供だったことに気が付かされた。
山峰さんがそばにいると僕の心臓は勝手に慌ただしくリズムを刻む。
いつもの平常心がどこかへ行ってしまうんだ。
隠そうとしても自然と溢れてはこぼれていく感情……。
君に恋をしたことで、僕は意味で気づかなかったたくさんのことに気がついたんだ。
(※第5話 【僕のパートナー】後半 ~ 第6話【初恋の傷跡】 ぜひご覧ください )
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次話【 みょうがの天ぷら 】
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