【 おかしな踊り 】
♪―♬――♬♪
僕が風呂から出ると同時に流れ始めたノリノリな音楽。
「お、翔!! 風呂上りに一杯どうだ?」
酔っぱらってご機嫌なジョ―ジがビール片手に僕の首に腕を回してきた。
「俺はいらない」
「翔はいつもつれないな―」
絡まるジョ―ジの腕をすり抜けた僕。
「井上、お茶! 冷えてるやつ頼む!」
「翔、ビ―ル美味いぞ~! 極旨だぞ~!お前もいっぱいひっかけちまえよぉ~」
「だからいらねーよ」
井上はニヤニヤしながらびしょびしょに濡れたお茶を一本投げてよこした。
ぐぅぅぅぅ~。
豪快に鳴る俺の腹。僕は夕飯に喰らいついた。
ジョ―ジ特製の絶品スペアリブは肉汁たっぷりで柔らか。でひと手間加えたジューシーな焼き野菜や醤油をたっぷりの焼きトウモロコシも最高!
これだから夏のBBQはやめられない。
「賢治いいぞ―!」
急に賢治をはやし立てた井上。
賢治がノリノリで踊り始めたのだ。
クネクネしたおかしな動き。明らかに酔っぱらっていた。
「私たちも踊ろ♪」
山峰さんと美鈴さんを引っ張っていく三田さん。
「やだぁ―、踊れないよぉ!」必死に抵抗する山峰さん。
「イェーイ♪」意外と鈴香さんはのっていた。
「あかね離して―!」
僕の顔が緩んだ。
三田さんに放してもらえず無理やり踊らされていた山峰さん。
どうやらみんなの前で踊ったり注目を浴びたりするのは苦手なようだ。
その何とも恥ずかしそうに踊る山峰さんの可愛い表情や仕草を僕の視線は自然と追った。
その挙動のおかしさから山峰さん以外みんな酔っぱらいなのは明らかだった。
「由美さん、賢治も三田さんも未成年だよ?」
「大丈夫よ! みんなもう大人だし、それにちゃんと監督してるから大丈夫よ。みんな将来お医者になるんでしょ? いろんな経験しておかなくちゃ!」
由美さんもしっかり酔っていた。
説得力があるんだかないんだか全くわからない。
僕は楽しそうに騒ぐみんなを見てカメラのファインダ―を覗き込んだ。
「あはは、みんなやりたい放題だな」
僕は笑いながらシャッタ―を下ろした。
カシャッ、カシャッ、カシャッ。
調子に乗ってどんどん減っていくクーラーボックスのお酒。
上がっていくテンション。
写真を撮っていると、ファインダー越しに賢治とふと目が合った。
「あれ? あれれれ~? 翔ちゃんみ―――つっけた!」
酔いのまわった怪しい目つき。
「げっ!」
嫌な予感がした。
「翔ちゃぁん、カモぉーーーン!」
なんと賢治の不敵な笑みがどんどん僕に近づいてくるではないか!
ズームしていたファインダーに急激にアップになっていく賢治の顔。危機迫るものを感じた僕。
「俺はいいよ、絶っ対踊らないから! 賢治、来るな! 来なくていいから!」
「翔ちゃん踊らないのぉ~? なんでぇ~?」
ネットリとした賢治のその視線ば完全に僕をLock-on!
僕は慌ててカメラを置いて逃げようとしが遅かった。
「ぐぇっ」
「翔ちゃん、捕まえた♡」
賢治に羽交い絞めにされた僕。
「うぁ―、賢治やめろ! やめろってぇ!」
まとわりつく賢治の体温と酒臭い吐息。
僕は全力で振り切りにかかった。
「いのさん! 俺らも賢ちゃんに加勢するぞ―!」
「お―ぅ!」
面白がって加勢する井上とジョ―ジ。
最悪だ。
「三人がかりなんて卑怯だぞ!」
僕の抵抗もむなしくあっと言う間に僕はみんなの前に引っ張り出されたんだ。
♪―♬――♬♪
流行りの曲なんてわからない。
逃げることもできず、僕は仕方なく踊るしかなかった。
隣りにいた賢治のクネクネダンスの真似をした。
「翔いいぞ―! ガハハハハっ!」
ジョ―ジと由美さんは僕の踊りに爆笑。
「はっちゃけた酔っぱらい共め…」
全くなんて恥ずかしいんだ。
進むお酒にますますハイテンションになっていくみんな。
賢治は、調子に乗ってドジョウ掬いまで始める始末。
しらふで正常を保っていたのは僕と山峰さんだけ。
「糸倉君、お願い何とかしてぇ!」
恥ずかしそうに困り顔で踊る彼女と何度も何度も目が合った。
「俺だって何とかしてほしいよ!」
僕ら二人はお互い恥ずかしさに耐えながら踊り続けるしかなかったんだ。
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次話【 沈黙 ① 】
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