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【 最近どうも調子が狂う ① 】

「ただいま!荷物運ぶの手伝って―!」


「おお―ビ―ル来た―!しかも冷えてるぅ♡」

「さすが由美!わかってるね―!」


風呂上がりの井上とジョ―ジ。二人は待ってましたとばかりに買い物袋に群がった。

スーパーの氷まみれにされたビ―ル。

気を利かせた由美さんがビールをキンキンに冷やしていたのだ。


 

「プッシュっ、プシュッ!カンパ―イ!」 

グビッ、グビッ、グビッ!二人の喉が豪快に音をたてた。


「ぷは―っ!最高っ!」


庭に準備されたBBQセット。

「後はやっとくから由美たちもサッと風呂入って来いよ」


「やった―! 温泉だぁ♡」

女子たちは意気揚々と風呂に向かっていった。


「ちぇっ、俺だけ入れないのかよ」

別荘に残っていた男はみんな先に風呂に入っていた。

自然と漏れるため息。僕の体は汗でもうベトベトだった。


「じゃぁ翔、お前も女の子と一緒に入って来いよ♡」

ニヤけ顔で僕を肘で小突くジョージ。


頭の中にふっと浮かんだ女の子たちのお風呂の光景。

白く柔い肌に石鹸の香り……。


「ばっ、バカ言ってんじゃね―よ!」

急に顔が熱くなる。

僕は一瞬、想像しそうになった自分を恥じた。


「翔、顔赤いぞ―?どんな想像したのきゃな~?」

酒に酔い僕をからかうジョ―ジ。


「赤くねぇよ! 冗談言ってないで準備しろよ!」

見透かされたようで一気に恥かしさが込み上げる。


「はいは〜い、準備しますよ―」

ジョ―ジはお尻を振り振りしながら渋々準備にとりかかった。



「すげ―っ! スペアリブ美味そー!」

食品用のク―ラ―ボックスにはジョージがフェルマで仕込んできた大量の肉が入っていた。


ぐううううううっ! 激しく鳴る井上と賢治の腹。


「あ―、早く食いてぇ〜!!」

「そんじゃ、一足先に始めますかっ!」

「やった―!!」


ジュ――ッ、ジュ――ッ。

火にかけられたスペアリブ。肉にしみ込んだタレの香ばしい香りが立ち込める。



「焼き始めてくれたの? さっすがジョ―ジ!」

「ガハハハハ! 由美、早かったな!」

食欲をそそる匂いにつられたのか女の子たちはすぐに風呂から上がってきた。



「賢ちゃん達ちゃんと温泉浸かった?」

「あかねちゃん♡ うん! ほら、硫黄温泉だからお肌つるんつるん♡」

風呂上がりの三田さんを前に、賢治は三田さんに自分の頬を触るよう顔を少し突き出した。


賢治の頬に手を伸ばす三田さん。


ジョリジョリジョリっ!


「いや――っ! 賢ちゃんの髭ジョリジョリ―!!」

悲鳴を上げて走って逃げる三田さん。


「え―? ジョリジョリかなぁ? そんなことないよ―!」

自分の頬を撫でながら追いかける賢治。


「きゃ―! ジョリジョリ来た―!」

ふざけて逃げる三田さん。二人は楽しそう庭中を走り回っていた。


みんなの笑い声が響く別荘の庭。それはいつにない賑やかな夏休みの光景だった。



「さて、飯の前に俺もひとっ風呂浴びてきますか」

そう思って立ち上がろうとした時だった。


「クスクスクスっ」

後ろからの笑い声に僕は振り返った。


「あかねと賢治君、あの二人本当に仲いいよね」


なんと、そこにいたのは風呂上がりの山峰さんだった。

縁側に座っていた僕に話しかけてきたのだ。


血色のいい頬の色。


サッパリとした清々しい表情の山峰さん。

トクントクンと音が響く。


突然のことに僕の鼓動は早鳴っていった。


お読みいただきありがとうございます!


また、誤字報告をくださった皆さま、ありがとうございます。


ブックマークや評価、感想を頂けますと励みになりますので、どうぞよろしくお願いします.。.:*☆


次話【 最近どうも調子が狂う ② 】 


毎週水曜日 お昼の12時更新予定です。

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