【 大掃除 開始! 】
「さぁ始めるぞ――――!」
「お―――――!!」
ジョージの掛け声で始まった大掃除。
男たちは炎天下で広い庭の草刈りだ。
ギュイ――――ンッ、ジャジャジャジャ!
勢いよく音を立てる草刈り機。
頭からはタオルと帽子をかぶり、長袖長ズボンの完全武装。
頭上から絶え間なく熱を降りそそぐ太陽が恨めしい。
滝のように流れる汗。
まさに灼熱地獄だ。
「は――、気持ちいい!」
途中の休憩時間。
口元のタオルをとった瞬間新鮮な空気がなだれ込む。
立ちこめる土と青臭い草の香り。
ジジジッ、ミ―ンミンミンッ、ホーホケキョ!
草刈り機のけたたましい音が消えると蝉や鳥の声が鳴り響いた。
「ク――ッ!! 生き返るぅ!!」
縁側に用意された冷たい麦茶。
カラカラの喉に一気に注冷たい水分がしみ込んでいく。
「ビ―ルがのみてぇなー」
今にもビールを取りに行こうとするジョ―ジ。
「何言ってんだ。脱水状態にアルコールなんて言語道断! 利尿作用で脱水が悪化、血液中の水分が減って腎臓にも負担過多!体にいい事なんかなにもないんだぞ!」
事実、アルコールは水分にならないし脱水が加速すれば尿も濃くなり腎不全に繋がることもある。
しかもジョージの場合はビールばかり飲みまくる習犯だ。
「へいへい、わかったよ。まだ学生なのにもう医者みたいなこと言うんだからなぁ」
罰が悪そうに僕の話しを聞き流そうするジョージ。
「まぁ、実際尿が濃くなると体にはよくないっすからね。でも俺もビ―ルのみてぇなぁ―!」
「じゃあいのさん、今宵は風呂上りに一杯やりますか!」
「いいっすね! 真夏の風呂上りビール、最高じゃないっすか!」
二人で盛り上がる井上とジョージ。
「俺もビ―ル飲む飲むぅ!」
「井上はいいけど賢治はダメだ!! お前は未成年だろ!」
僕は賢治の頭を叩いた。
二年浪人していた井上は僕や賢治より二つ年上。
成人だ。
「えー? でもいつも寮じゃみんな飲んでるよぉ? 」
「マジ!? そうなのか?」
僕は驚いた。
賢治のように入学して一年目は寮に入る学生も多い。
つまり未成年も多いということだ。
「大学生なんてもう大人だよ。無理にすすめる奴もいないし自己責任自己責任」
井上は笑いながら言った。
何が自己責任だ。
でも"大学の新入生歓迎コンパで未成年が急性アルコール中毒で救急搬送" そんなニュースを聞いたこともある。つまり未成年でも意外と安易にお酒を飲んでいる人も多いということだ。
でも確かに、自分ですすんで飲むなら自己責任か…。
そう言えば、山峰さんも寮生だ。
彼女も未成年のはず。
もしかしてみんなとお酒を飲んだりするのかな?
でも入学当初彼女は相当体調を崩していたみたいだしあまりお酒を飲むようには見えないか。
僕の頭の中には頬を赤らめ可愛くカクテルをのむ彼女の姿が浮かんでいた。
「よっしゃ、早く終わらせて今宵はBBQ! 冷えたビ―ルで乾杯だ!」
テンション高く気合を入れる井上。
本当に彼女について気になることがいっぱいだ。
なんでもいい、BBQで思い切って山峰さんに話しかけてみようと思った。
ちょっとしたドキドキ感にまみれながら急に夜が来るのを待ち遠しいと思う僕がいた。
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次話【 大掃除 開始 ② 】
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