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【 伊豆バイト旅行 出発② 】

伊豆への旅路。

僕らの車は休憩ポイントのサ―ビスエリアに到着した。


「みんな―、トイレ休憩だけだから早く戻って来いよ――!」

みんなに声をかけるジョージ。

「は―い!」

車を降りるとみんな一斉に建物に向かって歩きだした。


「翔ちゃん! そっちはどう? 楽しんでる!?」僕に駆け寄る賢治。

「ああ、楽しんでるよ。で、そっちこそどうなんだよ」


「もうメ~ッチャ楽しい♡ このバイト、誘ってくれて本当にありがとう!」

そう言って賢治は、ぎゅ―っと僕の腕に抱きついた。

「やめろよ賢治! 暑苦しい! 男同士でくっ付くなよ!」僕は賢治の手を払いのけた。


「あははっ! 本っ当に二人って仲いいね~!」

背後からの三田さんの声に僕と賢治は振り返った。

よっぽど仲がいいのだろう。僕らの後ろには腕を組み、楽しそうにする三田さんと山峰さんがいたんだ。


急にソワソワしだす僕の胸。

三田さんの隣りで山峰さんはクスクスと笑っていた。

今日の彼女はジ―パンに白のTシャツ、腰にグレ―のパ―カ―を巻いていた。彼女のすらっと伸びた足の長さがよくわかる。


「い、井上達ほどじゃないよ」僕は井上と美鈴さんをチラッと見た。

「ねえねえ、あの二人ってお似合いだよね!」

そう言いながらぐっと僕らにぐっと近づく三田さん。自然と山峰さんとの距離も近くなる。


「あの2人幼馴染なんだって。付き合って6年だってさ」

「え、6年!?」

僕からの情報に驚くみんな。


「幼馴染なんだ…。でも大学の友達にも紹介するってことはそれだけ真剣ってことだよね…」

山峰さんは前を歩く二人の姿を見つめながら静かにボソっとそう言った。


「この旅行も彼女を不安にさせないために一緒に参加したんじゃない? 井上君って紳士だよね。しかもさりげないけどすごく気遣い上手!」

三田さんの言葉に頷く山峰さん。二人は井上達に興味深々だった。


「へ~、井上ってそんなに紳士な奴なの?」それは僕の素朴な疑問だった。

「糸倉君の方がいのさんと仲いいのに何言ってんの!」

半分呆れ顔で三田さんは笑った。


「確かに優しいけど、まさか女子からの評価がそんなに高いとは……」

いつも麻雀のことばかりの井上。女子からの思わぬ高評価に僕は意外な印象を受けたんだ。


「へ~意外!糸倉君も女子の評価とか気になるんだ。なんか糸倉君ってイメージと違って案外面白い人のかもね!」

三田さんはケタケタと笑いながら僕の背中をバシッと叩くと、山峰さんと仲良く小走りに走っていった。


遠ざかる山峰さんの後姿を自然とお目で追ってしまう僕。

「翔ちゃ―ん! あかねちゃんとらないでよぉ?」

不安そうに顔を覗き込んでくる賢治に僕はハッとした。


「と、とらねーよ! それに、今回は賢治のための旅行なんだからいらん心配すんなよ」

「へへへっ」安心したのかいつものようにヘラッと笑う賢治。

「ほら、休憩短いから俺たちも早くいくぞ!」

「待ってよ翔ちゃ~ん!」


頼りないヨレヨレな奴だけど…

"こいつも一生懸命真剣恋をしているんだな" そう思うと賢治のことをちょっと見直す自分がいた。




再び走り出した車は、沿岸を伊豆半島沿いにひたすら南下していった。


「うわ―っ、海だぁ!」

目の前には雲一つない青空と大海。

窓を開けると、むせかえるような湿気と熱風が車内になだれ込む。

磯の香りが強烈だ。


波もなく穏やかな海。青い空に水平線。

遠くには船が何隻か止まっていた。


カシャ、カシャ。

僕はカバンからカメラを取り出し何枚か写真を撮った。


「翔、お前カメラなんてやってたんだな」

井上が言った。

「中学の時からボチボチね」

僕は強いこだわりこそないが写真を撮るのが好きだった。


そうこうしていると、前を走るジョ―ジの車から賢治がにょっと顔を出した。

「ねぇ、なにあれ! 賢ちゃん罰ゲームでもさせられてるのぉ?」

由美さんの言うように賢治はジェスチャーをしながら何か必死に叫んでいた。


「あいつバカだな―!」

風圧で賢治の頭はボサボサだ。井上は賢治のこういうバカさが大のお気に入りなんだ。


「翔、あのアホみたいな賢治、上手く撮れるか?」

「へっ!? あれ撮るの?」こんなくだらない写真を撮るのは生まれて初めてだ。


「旅の思い出だよ!」井上は完全に面白がっていた。

「しょうがないな……」


気が進まなかったがつけていたレンズのテレ端(レンズの最大望遠)、250mm。

僕はズ―ムにしながら、賢治の動きに合わせてシャッタ―を切った。


カシャ、カシャ、カシャ!


『I LOVE YOU…』 か? 

ファインダ―をのぞきながら思わず僕は笑った。賢治は風にあおられて、本当にひどい顔だったんだ。

「賢ちゃん、ひどい顔ね~!」

望遠レンズで撮った賢治の顔のドアップに大爆笑。みんな腹を抱えて笑っていた。


そんなことをしながら進む旅路。

その後沿岸の入りくんだ道をくねくね進み、僕らは一さんとの待ち合わせ場所に到着した。

お読みいただきありがとうございます!

また、誤字報告をくださった皆さま、ありがとうございます。


ブックマークや評価、感想を頂けますと励みになりますので、どうぞよろしくお願いします.。.:*☆


次話【 伊豆バイト旅行 出発 ③ 】 


毎週水曜日 12時更新予定です。

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