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色売る悪魔と支える天使の恋愛日誌

作者: みずしろ

 その少女は、天使と呼ばれていた。

 かつて誰かから言われ始めたのだろう。由来なんて分からない。ただ天使はほかの誰よりも優しかった。

 どうせ顔だけなんだろうと入学当初は舐めていたけど、マジで優しかった。

 だって体育の前の僕なんかに声をかけて、「太郎くん、顔死んでるよ」と言ってくれたから。

 死んでなんかない。元気が出ないだけだ。運動神経が悪い。

 天使の名前は東野佳保さんと言う。黒髪ストレートの子だった。

 今朝も天使の姿を教室で目視した。

 アイロンの行き届いたスカート、教科書でパンパンのカバン、踏んづけてない黒光りするローファー。

 目に入るすべてが丁寧で、綺麗に綺麗にブローした黒髪は、光り輝いて見えた。

 今日は天使の覚醒日でもあるのだろう。いとお美しい。

 そんな冗談を彼女に言っても、「登坂くんキモッ」とならないところがまた天使の良いところで、あ、じゃああいさつでもしておこうか。

 近寄っていって、おーい天使「東野さんおはよう」「え、キモ」キモがられた。

 まぁ、僕体重88キログラムだし、いつも汗かいてるし、体臭は臭いし、そんな僕に話しかけられても困るよなぁ。

 家庭科の授業では、とんかつとご飯三杯食べていたら、天使に「おかわりするんだ……」と絶望的な瞳で見つめられた。

 さすがに危機感を感じて夕飯のお味噌汁をパスしましたけどね。

 天使は優しいはずだが、ちらりと嫌味を言う時もある。

 例えば、情報科学のテストでクラス最高点を叩き出した天使は、誇るでもなく恥ずかし気に言った。

「誰にも言わないでね」

 えぇ、そりゃ伝えませんよ。自慢ですもんね。だって気になるテストの点数はーー六十五点。

 そりゃ恥ずかしいよなぁ。四十人いるこのクラスでなんで六十五点が抜けないの、どんだけ馬鹿だったんだ僕らは。

 ちなみに期末テストだからな。

 天使はいつも好調である。

 そしてこのクラスの鉄の掟。

 天使、および第三階層には決して逆らってはいけない。

 天使は第三階層で、僕らは一つ下の第四階層。一体、どれだけ僕は底辺なのだろうか。

 この学園での僕らへの扱いの酷さと言ったらヤバイ。

 時給百円でやった祖父母の畑仕事の手伝いぐらい理不尽さを感じる。上は掃除はやらないし、部活の試合に出してももらえない。

 テストと宿題は多めにあるし、課外活動のボランティア労働も必須。下に住む我々にとって、大変なことが増えていく。

 僕も最初はバスケットボール部で青春を謳歌しようとしていました。だってこの高校、強いとこだし。

 けれど来る日も来る日もフットワーク練習に耐えられず、音を上げた同期の生徒は多かった。

 バスケが得意な同学年の男子生徒が一人、レギュラーを獲得することになって、英雄視されたので褒め称えておいた。普通に全員辞めた。

 善人の僕だけ決起集会で「もう一度頑張ってみようぜ」とか言っていたが、全員から「最も馬鹿なプレーヤー」と言われたので僕も辞めた。

 そりゃそうだよなぁ。僕はスリーポイントシュートの届かないシューティングガードだから、全国級のチームにはふつう要らんよなぁ。

 ともあれ、第四階層は学園での最下層。どうしようもない連中がここに集まり、怠惰な日常を送っている。

 勉学もスポーツも芸術も、知的ゲームすら嫌い。そういうやつが多いので、たぶんダメ人間と落ちこぼれを作ることにかけてこの学園は実に上手い。

 上だけを見上げてため息をつくのは、もう疲れた。

 別に上の階層が特権階級だからといって、できることの違いが能力差なだけで、天使の憧れの人が第一階層の人だからと言って。

 僕の自尊感情が傷ついていい話にはならないでしょう。

 アホだよなぁ。高校に入学して七~八か月が過ぎたのに、天使のことをずーっと考えてる。

 まぁいいか。このクラスでも平和だから良いじゃないの。先生の号令の音を待っていた。起立、礼、着席。

 今日も一日始めましょう。

 奇妙な奇妙な学園の、一-二四クラスの四十人。

 そこに落ちてきた麗しの美人。

 クラスの注目の的になった彼女が言った言葉は、一つ。


「ウザい」


 それはそうでしょうとも。人気者を育てるための、日本一の高校のお話です。



短編 夢売る悪魔と支える天使


「え、マジ!?」

「うん、そうだよ」

「都落ち、いつ来るの」

「二限までには」

「へぇ」

 お。どうしたどうした。教科書を探している時、教室がざわついていると思って見回したら、クラスはうわさ話でもちきりだった。どうやら頂点の第一階層から下落してくる女子高生がいるらしい。

 へぇ、そりゃ激エロですなぁ。年に数回あるかないかの都落ち。人生は壮絶になる。上位カーストからこんな肥溜めまで落ちてきたら、普通は学校辞める。というか今まで全員辞めてきた。

 それもそうだ。徹底的な標的になるからな。どうやら敵は美女らしくて、捕食者の笑みを女子のクラスメイトの皆さんが浮かべていた。

 やるせないですねぇ。イジメられますよーヒッヒッヒ。

 やがてうわさ話も終わって授業が始まった。生物のお話だ。DNAが遺伝子で、シトシンとアデニンが組み換えで、結合図がどうとか知る訳ねぇし。

 こないだ生物のテスト前に必勝プリントを溝口から借りようとしたのだけど、そいつガチギレしてましたね。俺がパスできなくなるだろうが!

 底辺同士の争いって醜いからなぁ。中身覚えとけよ、溝口。今見れないと俺が不合格になる。クソ失礼言われたなぁ。

 先生が次回もミニテストですよーと言っていた。げー。教室全体が阿鼻叫喚に包まれる。

 学校って辛いことが多い。これでまた人気ポイントとランキングが下がっていくと思えば、悩みのタネは尽きない。前の扉が授業中にも関わらずガララと開いた。

 そこには美女が立っていた。挑発的なミニスカートで、蠱惑的な顔。威嚇するような大きく開かれた瞳。

 つん、と澄ました表情は手負いの猫のような愁いを帯びていた。割とやりやすそうだな、と田中あたりが言っているが、いやぁ厳しいと思いますよ。

 僕らすっぽんで、相手は月なんで。と言っても落ちてきた月だけどなぁ。

 自己紹介。「七海あやです。今日からこのクラスでお世話になります。どうぞよろしくお願いします」

 その凛とした声を聞いて、思い出した。第一階層で中核にいた女だ。たしか、学生生活の生命線である携帯情報端末を盗むのが天才的に上手かったはず。それで上のグループに気に入られていた有能女だったはずなのに。

 ちなみに携帯情報端末を盗めると、学校生活はだいぶ有利だ。校則的にも盗みO.K.だし、人気システムの中心部分を担っている携帯情報端末。初期配布なんだな、こいつが。

 全員がその七海の転落を驚いたに違いない。どうして落とされてきた。天才じゃなかったの、お前。

 天使が質問攻めにしている。貴様、やってくれるか。はい、軍曹。ガンガン攻めようぜ。

 概要から申し上げるに、仲間として認められなくなったのだと。第一階層は生存競争熾烈ですからね。ただの校内犯罪集団なので誰も尊敬してないけど、上は上。

 切られた理由も想像に難くなかった。こいつ、生意気だ。

「どうして都落ちまでされたのですか?」

「お前には関係ない」

 質問タイムがそれで終わると、七海はスタスタと歩いて窓際の席までたどり着いた。これからどれだけの艱難辛苦があることか。遊びができて良かったね、わがクラス。田中と頷きあった。

 そして午前中の授業が終わりだと告げる鐘が鳴り、昼休憩に突入すると七海の周りには一瞬で人の波ができた。モテて羨ましいですよ。しかし、王侯貴族さまへの最後のご奉公なんでね。

 女子学生も任務なんですけれども、七海の表情が微動だにしていないので勘違いはしていないのだろう。きゃあきゃあ騒いでいる中心で、一人冷めた表情で座っている。

「田中。美女も仕事だな」

「あ? 知らねーよ」

 話になんね、こいつ。田中ってバカだからなぁ。マジで頭悪いんだよな。話をはぐらかすしかないところも友人なんだけども。

「七海さんだよ。あいつもこれから苦労するだろって話」

「あー、まぁな。彼女の人気ポイントいくらか知ってるか、太郎」

「それこそ知らない」

 馬鹿と話してたらマジで馬鹿になるからな。僕だけは頭が良い。テストとかスポーツとかじゃねーし、話は。コミュニケーションだよ、コミュニケーション。

 話が回せる僕ってカッコいいよなぁ。

「七海のポイント、百切ってるんだとよ」

 へ、へえ。

「ど、どこで知られたんですか? 田中さん」

「サッカー部の連れ。あいつら待ってるから食堂行くぞ」

「すみません」

 サッカー部人脈には勝てねえからなあ。田中はサッカー部ね、僕は帰宅部。

 七海を最後にちらと見る。次の日はいないだろう。どうしてこんなところまで連れてこられたのだろうか。彼女の心境を察すれば大爆笑しかでない。

 悪いな、女。お前はここで息を引き取ってもらう。 だが、彼女のPDAに表示される人気ポイントだけは、終日計測を続けてうなぎ登りになるだろう。

 レリーフ学園入学時に配布されるこの携帯情報端末は優秀だ。学業成績やスポーツの実績、課外活動以外にも、人間関係の人気も集計してくれる。

 毎日繰り返した底辺友達運動さえ続けていれば、僕の下に百~二百名はいる計算だ。よほど下を見て生きてきた。

 クラスの色々な人に話しかけて愛想よくしているだけなのだが。田中はクラブがあるからもう百位ぐらい上かな。

 ともあれ、第三階層でクラスのまとめ役でもある天使は、ランキング千五〇〇位ぐらいはあるはずだけど、七海はどうだろうか。

 僕より下の可能性も無きにしも非ず。それだと、定期テストや不慮の事故で人気ポイントが死んだら強制退学をも食らうことになる。

 人気ランキング化された自分の地位を初めて本当の意味で知った時、人は怒り続ける。

 ま、彼女のことは女子学生に任せておこう。昼飯や、昼。

 友人の田中圭祐と連れ立って食堂に向かった。彼は僕の友人をやってもう半年が経過した。お互い話が凄い合うということでもないのだけど、わりかしいいやつだ。しかし体育の授業で僕が運動神経の悪さからバレーのトスを田中に上げそこなった時、彼は言った「何してんだよ!」いや、ガチギレしなくても……。帰りの更衣室で、さらにロッカーを蹴飛ばして「クソっ」体育のバレーって勝ったら何かもらえるんです?

 そんな熱血漢で正義感の強い田中圭祐は、いつだって愛らしい僕の友人だった。

「今日なに定食にする? 鮭、サバ、とんかつ」

「牛肉定食ですかね」

「いいですねえ」

 適当な会話を繋げながら、僕たちは廊下を並んで進み、階段と渡り廊下を使って食堂に行った。



「馬鹿なんですねぇ」

「はぁ」

 あいづち女が、あいづちを打っている。それも天使にだ。残念だが、話を聞いてる子の表情から、天使もまた馬鹿だと思われてそうだが、天使は構わず続ける。「だって話しかけてもうんともすんとも言わないもん」あぁなるほど。七海の悪口か。

 深刻そうな顔で話し続ける彼女らを盗み聞きしていると、どうやら七海の態度が悪くて事情聴取できず、それで天使たちもご立腹らしい。

「何を聞いたんだ、東野」

「ん。あぁ太郎くん」

 お。話が通った。

「七海、仲良くしないほうがいいよ」

「へぇ」

「ロイヤルの癖、まだ残ってる」

「それはな」

「うん。何を聞いても『嫌われたから仕方ない』としか言わない。そんなの私だって嫌われてるよ。ねぇ?」

「うん」

「おい。否定してよ」

「人気は友達いなきゃ無理だけど、人付き合いぐらいはね」

「諦めてるのかもな」

「まぁねぇ」

 ふぅ、と天使はため息をついた。人気ポイントや携帯情報端末の喪失で強制退学にならないことぐらい簡単だ。誰か最低限の友達ぐらい囲っておけばいい。

 俺は田中。天使はいろいろ。七海はいないはず。悲しいねえ。友達がいないって、マジで悲しいよお前。俺は田中がいるからな。田中だけは最低限の友達だな。なぁ田中。ちげーけどな。うそだあ。マジで。うそだあ。

 やべえ、大激怒しそうになった。悲しい俺。マジで可哀そうだった今。田中が笑っていた。


 そのまま昼休憩から午後の授業を駆け抜けた。体育があったが、テニスの科目で僕と田中はあまり活躍できなかった。

 しなくてもいいスポーツを積極的にするのは、決まってプロか暇人と相場がある。テニスは上流階級すぎて無理ですね。体育の授業で挫折してしまった。

 そして放課後。田中がサッカー部の補欠の練習に出るというので見送って、俺はトイレで用を足して図書館を覗きに行った。

 たくさんの本に囲まれながら勉強する生徒がもういる。熱心ですねえ。受験なんかしなくても、人気を追っていればいいのでは。わが校の三年で、タレントとかなれないのかな。

 テーブル席の中央よりの後ろに、我がクラスのオタク男子たちが陣取って雑談しながらちびちびと本を読んでいた。

「よ。お前ら元気してるか」

「おー。太郎じゃん」

「何しに来たの」

「挨拶をしにきたんだよ」

「失敗する時あるんですかねぇ」

「挨拶なら八割打てるぞ」

「残りの二十%はなんなんだよ!」

「面白い本ないかと思って。ガンダムでも読んでんの?」

「違う。ミーナちゃんの本読んでる」

「はぁ?」

「今度きた七海ちゃん、ミーナみたいだろ? それで攻略対象にしようと思って」

 あぁ、厳しいと思いますね。男性って常にこれだからな。女子だったら鏡見ろとか言うんだけど、まぁ俺も88キログラムだからなぁ。

「クソ甘いと思うぞ、その観測」

「楽観的観測を忘れてはならない」

「悲観してくれ……」

 俺はため息をつきながら、「じゃあな」「おう」とあいさつを交わして教室に帰ることにした。

 もう時刻は十六時半だった。西日が差し始めた教室に戻ってくると、寂しいピアノが流れているようだった。

 そんな中に窓際の席で七海だけがぽつんと座って外を眺めていた。哀愁をそそる姿だった。

 帰らないのだろうか。--七海とは仲良くしないほうがいいよ。天使に言われた言葉を思い出しても、俺はついつい悲劇の女に話しかけてしまった。

「七海さん」

「はい」

「帰らないのか」

「帰るって、どこに?」

 きょとんとした顔で彼女は聞き返す。

「いや、自分の家とか、寮とか」

「あぁ。ごめん、ぼーっとしてた。帰るね」

「いいんだけど。俺が悪かった」

「悪いなら言うなよー」

 ばすん、と熊のぬいぐるみが飛んできた。キャッチ。ゆっくりカーブを描くように投げて返す。

「送るよ。家どこ」

「ストーカーなんですけど」

「寂しそうに見えたから」

「いやいや」

 ふわっとした笑みを高校生美女が浮かべると、蕩けるぐらい見惚れてしまった。

「一緒に帰るかー」

「いいけど。寮生活、歩いて十五分」

「それぐらいなら余裕」

「どうも」

 高校指定のカバンをお互いが持って、一緒に歩き始めた。校門を抜けるまで誰かに見つかるかと心臓がドキドキしていたが、案外無視された。

 相手が第一階層から嫌われている七海だと知っていても、今だけは幸せの中を送り届けてやろうと思った。

 てくてくと歩いて、彼女の寮まで本当に十五分だった。その間は話したことはほとんどない。ただ「天気いいね」「夕方だけどな」「秋って好き」「だなぁ」ぐらい。

「じゃ、またね」

「さよなら」

 別れの挨拶を言って七海を寮の門前まで送り届けると、俺は晴れてすがすがしい気分に浸れた。

 今日はよく眠れそうだ。明日からあいつの顔を見ることはないだろう。

 じゃあな、第一階層だった美しき女よ。 

 そしたら何故か、翌朝の学校に七海が登校していた。クソ恥ずかしかったんですけど。

「よ。昨日はどうも」

「あ、はい」

 えぇー、自主退学じゃねえのかよ……。

 七海は二日目ともなると、さっそく教室で集団生活的行動を起こすことにしたようだ。ガタと席を立って、教室真ん中らへんの天使の席へ歩み寄った。

 立ち姿だと百六十五センチはありそうだな。天使がびっくりしている。

「え。なになに」

「東野さん、でいいんでしたっけ」

「佳保でも結構ですが」

「なら、東野さん。これから私に構わないでくださいね」

「いや。別にそういうんじゃない」

「これからこの教室で生きていくことにしたので」

「態度を改めるとか」

「私は私なので。同格の仲間がお前とは……」

「私だって貴方に不満ぐらいは」

「上だったんだけどな」

「お前には優しくしてやんないもん」

 火花の散るような応酬だった。おそらく、両者とも譲る気はないのだろう。

 天使は友達に「ないよね」「ないない」などと地道で根暗な根回しをしている。報われることはなさそうだ。

 お互い歩み寄ればいいのでは、と思ったが、そんな気はさらさらないらしい。シベリア凍土ほどの冷戦だった。

 ガキなんだよ、分かれよお前ら。クラスを二分する戦いだ。どっちにつくよ、完全に天使派なんだよなぁ。

 七海は冷たいから男子に人気だが、天使しか応援しないという女子は多い。俺も天使でオーケーです。好きなの? 違う。

 エリートに劣等感バリバリの天使が可愛すぎてどうしようもないだけなんだ。お前もしょせんは無能だよ。

 憧れの人、第一階層だったもんなぁ。きみの目の前にいるけどなぁ。悔しいよな現実って。これがリアルだよ、天使。うるさい黙ってて。イエア。

「七海ちゃんさあ。天使には優しくしてやってくんねーかな」

 僕のダチである田中がバトルを総括しながら言った。

「別に」

「俺らこれでも底辺なんだよな。ポイントとかも融通し合って生きてるし、互助会なんだわ」

 そう。一年-二四組はもはや学園の互助会だ。全員、強制退学だけは避けたいからと嫌々ながら人と関わり、ポイント百~五百をウロウロしているランキング最下層がすべて。

 このクラストップエリートさんの天使ですら、上昇志向がない。生ぬるい空気に浸って、僕ら仲間なんですよみたいなところに来たら、それは元第一階層も嫌がるであろう。

「第一階層の王ってイラつくからな……。別に……」

 ぽそりとつぶやかれた言葉は、七海の象徴のようだった。落ちてきた地位を眺めれば、イライラするのも理解はできる。

 でも多分、ここのほうが楽しい気がするけどな。上とか下とかみんな全然気にしないし。

「……分かったよ。私が悪かった」

「おし」

 男子には従順という方針で、上手く田中がまとめた感じがする。

 この日から、七海が正式にうちのクラスの一員になった。特に何もしない美女だった。

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