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戦い終わりに出でるは異形、頭角顕す均等振り

————————————


【RESULT】

 EXP 17153

 GAL 10462

 TIME 30’13”08

 DROP ”骸骨霊の残穢×48”、”布亡霊の布切れ×49”、”毒蛇の皮×23”、”毒蛇の毒牙×21”、”大鼠の毛皮×25”、”大鼠の尻尾×18”、”大蜘蛛の糸×38”、”首領大鼠の毛皮×3”、”首領大鼠の毒腺×2”


【EX RESULT】

称号【戦いに入り浸りし者】を獲得しました。


————————————




 戦闘時間が三十分を超えたにも関わらず、呪獣転侵が暴発しなかったことを鑑みるに、エリックが施してくれた祈祷はしっかり効力を発揮してくれたようだ。


 早速、自動発動の確率が低下した恩恵をあやかることになるとは。

 多分、従来の効果だったら最後まで戦い抜くことなく自滅していただろうな。


「ふう……ようやく片付いたか。全員、無事か?」

「うん、なんとかね。皆んなが守ってくれたから」

「僕も平気だよ。うん、皆んなで力を合わせればなんとかなるものだね。……とは言っても、ジンム君に頼る部分が大きかったけど」

「ちぃも頑張りました。褒めて欲しいです」

「うん、そうだね。チョコさんがいてくれたから大助かりだったよ」

「むふん、どや」


 確かにチョコの活躍は目を見張るものがあった。


 闘氣による攻撃がゴースト二種に通らなかったら、もっと劣勢を強いられていただろうし、戦闘時間も延びていたはずだ。

 いくら呪獣転侵が暴発しにくくなったといっても、無為に長くなっても良いというわけではない。


 やっぱ短期撃破に越したことはない。


「ひとまずエネミーの発生は大分落ち着いたみたいだけど、これからどうするか……って、どうしたチョコ?」


 ふと視線を感じ、その方向に顔を向けると、チョコがぽーっとこちらを見つめていた。


「ちぃは、ジンムさんの豹変振りにちょっと驚いています。戦っている時は鬼のようでしたのに、今は憑き物が落ちたみたいに静かなので」

「よく言われる。……けど、鬼は大袈裟だろ」

「いえ、あれはまさに鬼でした。修羅です、夜叉です、羅刹です」

「どれも悪鬼の類じゃねえか」


 なんか前にもこれに似たようなことをどっかで言われた気がすんな……。

 誰に言われたんだったか……まあ、いいか。


 こういうこと言うのは、大抵エムエムだし。


「……褒め言葉なのです」

「分かった、そういうことにしておくよ。というか、逆にチョコは全く調子が変わらないんだな」

「当然です。ちぃはちぃなので」

「お、おう……」


 微妙に会話が噛み合ってないが、修正しようとすると余計にズレそうだから追及はしないでおこう。


(……にしても、戦闘中も平時と同じテンションでいるタイプって、かなり珍しいよな)


 戦っているところを全部見たわけじゃないから、何とも言えないところはあるが、大抵の人間は、戦闘に集中すればするほど何かしらの変化は出てくる。

 普段より騒がしくなったり、逆に静かになったり、気合が入ったり。


 けど、チョコに関しては一切の変化がない。

 ぽわぽわとした緩い空気を纏ったままギアが入って、元に戻る。


 正直、こういう手合いは相手にしたくない。

 間違いなくこっちの調子が狂う。


 ……でもまあ、それはさておくとして。


「敵の数も大分減ったし、ここらで戻るとするか。こんだけやりゃエネミーが地上に出てくることもない——全員、戦闘準備!!」


 ——見えた。


 入り口方向、まだ大分距離があるが確実に通常の敵ではない異形が。


 ボロボロの黒いローブを纏った、脚を持たず宙に浮く亡霊。

 頭部らしきものなく、代わりに痩せこけた腕が左右に三本ずつ生えている。


 従来の生物とはかけ離れた構造を持つそいつは、明らかに何かがヤバいと本能に語りかけてくるようだった。


 ——倒さなければ。

 アレは、なんとしてでもここで葬らねばならない。


「シラユキは俺以外にINTバフしてから方陣術で攻撃! 朧は後方で火力支援とシラユキの護衛! チョコは後衛周りに敵が湧いたらそいつらを片付けて、可能ならこっちに攻撃参加頼む!」


 一息に指示を出し、俺はスプリングブーストを掛けながら異形の亡霊に接近する。

 懐に潜り込む直前にリフレックスステップ、ドッジカウンター、ホライズフラッシュを同時発動——雷牙の剣を振り抜き、異形の亡霊を斬り払う。


「……チッ、やっぱテメエもか!」


 が、刀身は亡霊の身体を綺麗にすり抜け、俺の攻撃は不発に終わった。


 ゴースト系っぽい見た目から、こうなることは予想していた。

 シラユキたちに術攻撃主体の下準備をするよう指示を出したのもその為だ。


 とはいえ、ボスが物理攻撃無効なのは、面倒なことこの上ない。


(結局、俺は囮役をやるしかねえってことか……!)


「仕方ねえ、遊んでやるよ!! 来な!!」


 憤怒の投錨者(アンガーアンカー)発動——異形の亡霊のヘイトを強制的に俺へと向ける。

 瞬間、六本の腕に禍々しさ溢れる黒い魔力が纏った。


(……っ!? これは……!)


 ネロデウスの持つ魔力と酷似している。

 しかし、限りなく酷似しているだけの別物だ。


 むしろこっちの方が、どこか純粋なような——。


 思考も束の間、六本の腕が一斉に襲い掛かる。

 魔力があることで関節一つ分のリーチが増え、攻撃の軌道が読み難くなっている。


 だが——、


「遅えよ!」


 遅い来る腕の一本を落花瞬衛で無理矢理防いで回避ルートを作り出し、攻撃を掻い潜る。

 その際に再度一太刀浴びせようと試みるも、やはり失敗に終わってしまう。


(クソ、殴れねえとフラストレーションが溜まるな……!)


 現状、俺が一番タンク役になるのがベストだからやっているが(そうしないと完全にパーティーのお荷物になるし)、やはりただ防御に徹するってのは肌に合わない。

 ぶっちゃけ今すぐにでも朧と交代したい。


 けどそうしないのは、朧が第二の砲台役になり得るからだ。


「浄陣・燦華!」


 地面に刻まれた円陣から浮かび上がる浄化の光が、異形の亡霊にダメージを与える。

 その直後——、


「リリジャス・レイ!」


 後方から飛んできた荒ぶる光の奔流が異形の亡霊を呑み込んだ。


 リリジャス・レイ。

 クァール教官の周回でも悪樓の討伐でもずっと攻撃の主軸となってきた、強烈な威力を誇る術式。


 しかし、これを発動したのはシラユキではない。


 ——朧だ。


 後ろを振り返る。

 シラユキと並んで術式の発動待機に入っている朧の左手には、リリジャス・レイの術式が刻まれた魔導書が握られていた。


 アイテム譲渡によって一時的にではあるが、魔導書の持ち主は朧となっている。

 外付けの術式だからこそできたことだ。


 勿論、それだけでは足りない。


 村人系統の最大の強みである全武器種装備可能。

 それと今まで有効活用されることの無かった最低限のMPとINTが、朧を擬似的な魔法系DPSへのスタイルチェンジを成功させていた。


(……まさか、ジョブと均等振りがここに来て活きるとはな)


 全く予想だにもしてなかったが、嬉しい誤算ではあった。

 これでシラユキがヒーラーとしての役割も両立しやすくなる。


 ま、それは俺が被弾したらの話だけど。


 ずっとシラユキに攻撃し続けてもらう為にも、俺は気を引き締め直して異形の亡霊のヘイトを惹きつけることにした。

朧に魔導書を貸し出せたのは、ヒロインちゃんが自身で中位術を習得したことで攻撃をリリジャス・レイだけに頼らずに済んだのも大きいです。

あと、主人公もサブジョブを僧侶か魔術士にして、適正を魔導書使いにすればリリジャス・レイを使えるようになります。MP不足ですぐガス欠&低INTで火力は全然出せませんが。

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