新たな職で戦って、思い悩んで
Mr.CBさんは3連(+200連)で引き当てました。どうにか致命傷で済みました。
昨夜、冒険者ギルドを訪れたのはクランを設立する為ではあったが、実を言うともう一つ目的があった。
それは——ジョブシステムの機能拡張。
上級職へのクラスアップ。サブジョブ、セカンダリージョブの開放だ。
これらはクレオーノ以降の都市系の街にある冒険者ギルドでのみ開放可能となっている。
当然、全員その場でジョブ機能を拡張させ、それぞれ上級職にクラスアップし、サブジョブとセカンダリージョブのセットも完了させていた。
場所は変わって、ネクテージ渓谷最深部——ボスフロア。
現在、俺たちは悪樓の型落ち……もとい壊邪理水魚とクラスアップで新たに獲得したジョブで戦闘を繰り広げていた。
「おいおい、そんな温い攻撃で当たるわけねえだろうが!!」
怒り状態の壊邪理水魚から繰り出されるボディプレスをギリギリのところで躱しつつ、カウンターの斬撃とパワーキック、それとシールドバッシュを連続で叩き込み、
「ジンくん! 術発動するよ――エナジーショット!」
シラユキの手に握られている、所々に豹柄の装飾が施された長杖”雷牙の長杖”から放たれた魔力弾が壊邪理水魚の脳天を撃ち抜く。
リリジャス・レイを使うと、俺たちが悪樓を倒した連中だと気づかれるかもしれないから、魔導書は封印している。
俺が第二形態になった悪樓に飛び乗っていた間に、上空に向かってぶっ放していたからフロア外にいた連中にも見られていた可能性は十分にあるしな。
それに現状のステータスと装備からして、わざわざリリジャス・レイに頼らずとも勝てる相手だ。
俺も聖黒銀の槍は使わずに剣と盾だけで戦っていた。
ただし……今回、メインの攻撃手段に据えているのは——蹴り技だ。
全部で十一ある基本職の一つ”格闘士”。
徒手空拳の他に棍、爪といった武器の扱いを得意とし、素早い身のこなしと鋭い攻撃を織り交ぜた戦闘を行う近接系DPS。
理由は幾つか挙げられるが、俺はサブジョブにセットするジョブを格闘士(蹴脚使い)にしていた。
そして、アルクエにログインする前に配信であの絶望の夜明けを走っていたのは、蹴り技をメインに据えても戦えるようそのウォーミングアップの意味合いも兼ねていた。
エナジーショットの射線から逃れた直後、俺は助走をつけた飛び蹴りを放つアーツ——フライングキックを発動、攻撃と同時に壊邪理水魚に肉薄し、
「まだまだぁぁぁっ!」
左脚で上段回し蹴りを悪樓の顔面にお見舞いした直後、更に右脚上段で強烈な回し蹴りを叩き込むアーツ——ラウンドシュートにコンボを繋げる。
左右ほぼ同時に放つ二連の回し蹴り。
少し前にクソ夜明けで魔王シュバルツナイトメアにとどめを刺した連撃だ。
ゲームエンジンのスペック差やアーツによる補正もあるが、あの時よりもスムーズに技を繰り出すことが可能となっていた。
立て続けに蹴り技を畳み掛けられたことで壊邪理水魚は体勢を崩し、更に横転してダウン状態になる。
「——シラユキ、発動いけるか!?」
「もう少し待って……!!」
「了解! 準備できたら言ってくれ!」
ジャンプスラッシュ発動、斬撃の通りが良い腹部側に移動しつつ斬り下ろしを放ち、間髪入れずにトリプルスラッシャーの三連の斬撃を浴びせる。
一度膝蹴りを挟んでからバリアーナックルを抉るように打ち込み、リキャストが終わったシールドバッシュとパワーキックを叩き込もうとして、
「——ジンくん! お待たせ!」
「頼んだ!」
「うん! ——浄陣・燦華!」
シラユキが発動したそれは、僧侶が習得できる術ではない。
方陣術と呼ばれる対象の範囲内に効果を及ぼす”巫覡”特有の術系アーツスキルだ。
僧侶系上級職——”巫覡”。
僧侶からクラスアップする事で開放される三つのジョブの一つ。
派生先としては特殊な部類で、習得する術の傾向が変わり、方陣術の他に法術や結界術を得意とするようになる。
壊邪理水魚の脚元に直径五メートルほどの円陣が生成される。
しかし、悪樓ほどではないとはいえ、壊邪理水魚も十分巨体なエネミーだ。
全身を円の中に入れるには至らなかったが、とはいえ何も問題はない。
地面に刻まれた円陣が光を発した瞬間、壊邪理水魚は苦悶の咆哮を上げた。
円陣の光そのものに攻撃判定があるからだ。
そして、破邪の光が壊邪理水魚の巨体に致命傷となるダメージを刻み込むと、これがとどめとなり、程なくして壊邪理水魚はポリゴンへと散っていくのだった。
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【RESULT】
EXP 3510
GAL 2010
TIME 4’49”91
DROP ”怪魚の鱗×3”、”怪魚の爪×2”、”怪魚の魔核”
【EX RESULT】
称号【怪魚を討ち倒し者】を獲得しました。
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……ああ、そういや壊邪理水魚はこれが初討伐だったか。
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PN:ジンム Lv:1
所持金:3054ガル
PP:0
ジョブ:武者(盾使い)
サブジョブ:格闘士(蹴脚使い)
セカンダリージョブ:放浪者
HP:63 MP:18
ATK:160 DEF:170
SATK:9 SDEF:56
SPD:87 TEC:49
STR:87 VIT:17
INT:9 RES:18
AGI:72 DEX:34
LUK:25
アーツスキル
・シールドバッシュLvMAX ・ジャストガードLvMAX ・ジャンプスラッシュLvMAX ・パワーキックLvMAX ・挑発LvMAX ・トリプルスラッシャーLvMAX ・ハードアッパーLvMAX ・バリアーナックルLvMAX ・ストレートジャベリンLvMAX ・呪獣転侵Lv3 ・フライングキックLv2 ・ラウンドシュートLv2 ・アサルトスラストLv1 ・ホライズフラッシュLv1 ・リフレックスステップLv1 ・パリングガードLv1 ・フェルビーターLv1 ・ドッジカウンターLv1
装備
武器1:雷牙の盾
武器2:雷牙の剣
頭:雷豹の兜
胴:雷豹の戦衣
腕:雷豹の手甲
腰:雷豹の穿物
脚:雷豹の半長靴
アクセサリー:-
アクセサリー:-
シリーズボーナス:ATK、SPD、TEC+15、雷属性強化(中)、雷属性耐性(中)
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エリアを抜けて、街道を歩きながら。
改めてステータスを確認してみて、始めた頃より大分成長したな、としみじみと思う。
特にアーツスキルのセット上限が増えたところとか、使える技が多くなったところとか。
……まあ、これでも呪獣転侵のせいで他の人より枠が六つ少ねえんだけど。
(マジで技スペがカツカツ過ぎて笑えねえ……)
セットするアーツスキルを何にするか問題は、全プレイヤーが共通して抱える課題であり、恐らくこれから先もずっと付き合っていくことになると思われる。
例え最上職になって更にスキルの枠が増えたとしてもだ。
今の俺のスキル構成は、攻撃系のアーツスキルを中心に組んで、防御、補助系のアーツを添える形になっている。
そもそものセット数が少ないってことを抜きにすれば、現状はこれで特に困るようなことは起きてないが、でもこのままで良いかというとそうでもない。
盾、剣、槍、蹴り……四種類の攻撃系アーツを同時運用しているせいで、自己バフをほとんど積むことができずにいた。
確かに攻撃系アーツは使いやすくて簡単にダメージも出せる。
けど、ぶっちゃけなくてもどうにか戦うことは可能だ。
だったら、攻撃系に割いている分の枠を防御、補助系に回してもいいんじゃないかというのが、現時点における俺の考えだ。
(……まあ、実際に試してみないことにはなんとも言えないか)
などとつらつらと考えながら、ステータス画面と睨めっこを続けていると、シラユキが小首を傾げて訊ねてくる。
「ジンくん、さっきから難しい顔をしてるけど……何か考え事?」
「ああ、スキルの構成をどうするかをちょっとな」
……あ、そうだ。
「まだライトたちとの集合時間まで時間があるから、クレオーノに着いたら術技設計屋に行こうと思ってんだけど、良かったらシラユキも一緒に行ってみないか?」
「……う、うん! いいよ」
若干、声を弾ませてシラユキは頷いてみせた。
クラスアップ
基本職から上位職、上位職から最上職といったように現在セットしているジョブを一つ上のランクに昇格させる。クレオーノ以降の都市部にある冒険者ギルドでのみ利用可能。クラスアップ機能を開放することによって、サブジョブとセカンダリージョブが解禁となる。
クラスアップをするには、該当ジョブのレベルを最大まで引き上げる必要がある。
また、クラスアップをするとレベルは1にリセットとなり、クラスアップ前よりパラメーターが少し下がる。加えて、これまでに割り振ったPPもリセットされる。しかし、これまでに獲得したPPは持ち越し+クラスアップボーナスで新たに20ポイント貰えるので、すぐにクラスアップ前のパタメーターを追い抜くことは可能。
基本職から上級職にクラスアップをする際、三つの派生先から一つを選んで変更することができます。
僧侶で例を挙げると、派生先は、
・神官
・僧兵
・巫覡
の三つの中から選ぶことができます。
それぞれ簡単に特徴を挙げていくと、
神官……僧侶の正統派進化。無難に今まで通りの戦い方をしていたい方にオススメ。
僧兵……物理方面に強くなる派生進化。支援と物理攻撃を両立したい方はこのジョブを選ぶといいでしょう。
巫覡……術の系統がガラッと変わる特殊派生。パラ補正と配分も僧侶の頃と異なります。気分を一新したいのであれば是非。
このようにどのジョブに変更するかでプレイスタイルがガラッと変わるので、よく考えてから選ぶようにしましょう。
サブジョブ、セカンダリージョブはまたの機会に。
あとクラスチェンジとジョブチェンジも。