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打開策、クソゲー談義から見出して

「――そういえば、創志。最近、アルカディア・クエストをやり始めたみたいだけど、やっぱり面白いのか?」


 親父が訊ねてきたのは、片手にピザ、もう片手にエナドリとちょっと早めのアメリカンなディナーを堪能しながら『Fight of Eleven』――長いから以後ファイイレ――の戦術について議論を交わしている最中のことだった。


 親父にアルクエを始めたと言った覚えはないが、フレンドのオンライン状況で把握したのだろう。

 一緒に同じゲームをプレイすることはまずないが、一応VRギア同士のフレンド登録はしてあるからな。


「……親父がアルクエに興味を持つなんて珍しいな。有名どころにはまったく興味を示さないド偏食家なのに」


 親父は決してクソゲーマニアではないのだが、ゲームを選ぶセンスが壊滅的に酷く、買ってくるゲームの悉くがクソゲー、ハズレゲーばかりとなっている。

 加えて、クソゲーのクソ要素を純粋に楽しめる精神性を持っている異端者なので、クソゲーばかりの地雷原を完全に住処としていた。


「何、父さんだって興味くらいは持つさ。ただ自分でやろうという気持ちにならないというだけで。それに創志が新しいゲームに熱中しているなんて久しぶりだからな。一体どんなゲームなのか気になるじゃないか」


 かく言う俺も偏食側……いや、悪食側の人間ではあるけど。

 悲しきかな、これが親子の遺伝子というものか。


「とりあえず……何かよく分からねえ縛りプレイさせられたり、無理ゲーチックなレイドに挑むことになってるけど……まあ、面白いか面白くないかでいえばめっちゃ面白い。流石、テック社が鬼畜路線に走らずに作っただけのことはある」

「えっ、アルカディア・クエストを開発したのってあの会社だったのか!? 昔、創志にあげたJINMUを作った!?」

「そうだけど。知らなかったのかよ」


 本当に覇権ゲーになると何も情報がないのな。

 逆にすげえって言うか、単純にクソゲー……もといマイナーゲーしか頭にないのか。


(……そういや俺もアルクエ始める直前まで気づいてなかったから、人のこと言えねえじゃん)


「はえー、そうだったのか。てっきりもっと大御所的な企業が作ってると思ってた。そうかそうか、あのJINMUを作ったテクノハック社があんな有名なゲームを作るなんて……世の中何があるか分からないもんだな」


 噛み締めるように独りうんうんと頷く親父をよそに、俺は缶に残ったエナドリを飲み干す。


 でもまあ、親父がそんな感情を抱くのも無理はないか。

 人情の欠片も無い鬼畜難易度で数多くのプレイヤーの心をクリア前に折ってきたもんな、あのゲーム。


 クソゲーにはかなりの耐性を持つ親父でも鬼畜難易度には敵わず、珍しく挫折しちまったくらいだし。

 まあ、だからこそ興味を持った俺にJINMUが渡って来て、今に至るわけなんだけど……って、さっきと話題が逸れてるな、軌道修正するか。


「んで話を戻すけど、最低限の被害で相手をぶちのめす方法か……タイマンで一人ずつ潰す訳にはいかないのか?」

「それが上手くいったら苦労していないさ。父さんは創志みたく喧嘩が強いわけじゃないから。それにお相手さんもそういったプレイヤーへの対策も講じているようだし」

「ふーん。意外とめんどいんだな、オンライン対戦って」


 何をトチ狂ったかファイイレにはオンライン対戦モードが実装されており、何故かプレイヤー人口も意外と存在している。

 そのおかげか、サービス開始当初ではただの混沌だった殴り合いが、今ではいかにして自陣の被害を抑えつつ敵チームの選手を負傷退場させるかの戦略ゲーとなっており、しかもサービス開始からそれなりに月日が経っていることで、戦術や環境が成熟しきっているとのことだ。


 だからこそ開発も2の発売に乗り切ったのかもな。


 ちなみに現在の主流な戦法は一人ずつタイマンでぶちのめす、もしくはゴールキーパー含めた十一人でボールを持った選手をリンチにするかのどちらからしい。

 極端過ぎだろ。つか真面目にサッカーしろよ。


「父さんが今考えているのは、三人の選手でトライアングルを作りながら敵陣地に攻める戦法だ。敵が詰めてくる前にボールを上手く回すことができれば、一斉に狙われることも防げるし、逆に孤立した敵にボールを渡すことで返り討ちにするプランも狙える。どうだ、悪くはないだろう?」

「まあ……それなら悪くはない、かもな」


 ボールを奪いたきゃ力尽く(物理)で奪えっていう頭世紀末なファイイレだが、何もかもが無法地帯ではない。

 これもおかしなルールではあるが、暴力行為が許されるのは、ボールを所持しているプレイヤーとボールを奪取しようとしているプレイヤーに限られている。


 もし、ボールを持っていないプレイヤーが別のボールを持っていないプレイヤーに攻撃したらどうなるかというと、殴った側がペナルティを課される事になる。

 しかもペナルティの適用基準は現実のサッカーに則したものとなっているため、大抵は一発レッドカードで退場となる。


 なのでただ無闇に殴れば良いのではなく、自分はちゃんと合法的に殴れる状態を作り上げ、相手には作らせないようにすることが肝要とのことだ。

 ……なんでこういう所は無駄に戦術的なんだよ。


「けどよ……トライアングル作って敵陣地に入った後に、他二人へのパス通路を塞がれたらどうする? そしたら孤立するのは親父の方になるぞ」

「ふっ、その点は問題ないぞ。ちゃんと対策を考えてある。そうしたら別の二人と三角形を作ってヘイトの向き先自体を変える。パスができないということは、そこに人が集まっているという証拠でもあるからな。そして、守りの薄い場所から一人ずつ潰していくっていうのが父さんの考えた戦法――名付けて、三角鳥かご戦法だ!」

「なるほど、理には適ってる……のか?」


 常にチーム全体が誰とでも三角形を作れるようなポジショニングを取ることでボールの保持率を上げ、仮に奪取されたとしてもすぐに袋叩きにして取り返せる。

 おまけに選手一人ひとりの距離が適度に空いているから、相手は容易に詰めることができないし、マークも絞ることもできない。


 本物のサッカーで通用するかはともかくして、ゲームでやる分には十分に試す価値はありそうだ。


「取り囲んでヘイト管理か。これもしかしたらアルクエでも置き換えられる……――っ!?」


 脳内に電流が走った。


 ……そうか、この手があったか。

 これなら抱えていた問題が諸々解決できるはず……!


「ん……創志。急に固まってどうかしたか?」

「いや、なんでもない。ただ親父のおかげでいいヒントが得られただけだ。ありがとな」

「お、おう……そうか! なんだかよく分からんが、父さんが役に立ったのなら何よりだ」


 待ってろよ、悪樓……次は完璧な布陣で速攻で叩きのめしてやるからよ。

ファイイレのプレイスタイルは主に二つに分かれます。

一つは自らが先陣を切り、ボールを果敢に奪いに行く(退場させに行く)鉄砲玉型。

もう一つは、自身でボールを取りに行くのではなく、周りのCPUを上手く扱いながら盤面を組み立てていく司令塔型。

主人公は前者で、父親は後者に分類されます。

鉄砲玉型は自身をFWに置くことが多く、自分一人で試合をひっくり返せたり、早期決着が得意な分、プレイヤースキルに依存する部分が強く、手詰まりになるととことん完封されやすいです。

逆に司令塔型は、自身のポジションをボランチやCB、SBに設定することが多く、単騎での無双とかはあまりできませんが、少しずつ相手の人数を減らしていき時間をかけて盤面を支配することができます。

どっちが強いかは一概には言えませんが、自身の戦闘技術に自信があるのであれば鉄砲玉型。戦術や頭脳で戦うのが得意であれば司令塔型を選ぶのがベターです。

ちなみに主人公と父親で対戦をした場合、七割程度の確率で主人公が無双して勝ちます。逆に、CPU数人がかりで主人公をキツくマークさせ、主人公が上手く身動きが取れない間に人数を削りきることに成功する場合は父親が勝利します。何気にボール保持に関係するプレイヤーにしか攻撃できないという謎ルールが活きた結果ですね。


……自分は一体何を書いているのでしょうか()

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― 新着の感想 ―
[良い点] 本編に関係の無い質問への回答、ありがとうございます。疑問が解消されすっきりしました。 [一言] 引き続き楽しく読ませていただきます。
[良い点] シンプルなゲームですね。暴力的ですが、ボールを持っている相手だけを殴れるルールは逆に潔くて好きです。 [気になる点] もし相手が殴りモーション中に自分が他の選手にパスをし、パス成功してから…
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