表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/188

特訓と効率と見極めと

「――朧、タゲ集中任せた!」

「了解! ねえ、こっちにおいでよ! 僕が相手だ!」


 朧が挑発を発動し、クァール教官のヘイトを惹きつける。

 まだスキルレベルが1だからちゃんとタゲ集中が取れるか不安だったが、クァール教官はちゃんと標的を朧に定めて襲いかかった。


 挑発はさっきアトノス街道で新調した武器の試運転をした時、ついでに習得してもらっておいたものだ。

 ヘイト管理が出来るやつが増えればその分シラユキに攻撃が向く可能性を抑えられるし、話を聞く限り結構回避力がありそうだったから擬似的な避けタンク運用が出来るんじゃないかと思ってな。


 まだ戦闘が始まったばっかだから見極めるのはこれからだが、まあそれなりにやれるんじゃないかとは予想している。


「ナイスだ、朧!」


 クァール教官の意識外から一気に距離を詰め、昨日新たに購入した”アイアンバックラー”でシールドバッシュとパワーキック、それからハードアッパーのコンボを顔面に叩き込む。


 本来なら攻撃力が上がっているところ、デスペナのせいでダメージ量がお可愛いことになってしまっているが、スタンといった追加効果に影響はあまりないはずだ。

 そう予想を立てて攻撃を続けていると、程なくして一回目のスタンが入る。


「よし、予想通り! スタン入ったから二人とも一斉攻撃行くぞ!」

「「分かった!」」


 すぐさまクァール教官の側面に回り込みながら指示を出すと、朧は朱色のエフェクトがかかったブーメランを投げ放ち、シラユキは頭上に発生させた光球から極太レーザー——リリジャス・レイをぶっ放す。


 荒ぶる光の奔流がクァール教官を飲み込むのを目の当たりにして、俺は思わず息を呑む。


「うわ……やっぱ威力えげつねえな。今の防御力であれに巻き込まれたら確実に死ねるな」


 決して朧の攻撃力が低いというわけではないのだが、リリジャス・レイの威力が桁違いすぎて貧弱に見えてくる。

 とはいえ、術系アーツスキルは威力、範囲共に優れる反面、フレンドリーファイアが存在するせいで、いつでも気軽にぶっ放せるわけでもないのが難点ではある。


 ただの雑魚敵であればこれで消し飛んで戦闘終了となるが、流石はエリアボス。

 かなりいい感じにダメージは入っているようではあるが、まだまだ弱る気配は見られない。


 まあ、そりゃそうか。

 アクシデントがあったとはいえ、一昨日は倒すのに十五分近くかかったわけだし。


「オーケー! 朧、このままもう一発畳み掛けるぞ!」

「う、うん!」


 スタンが解除されるまではまだ時間がある。

 リリジャス・レイのエフェクトが消失した直後、俺は朧に指示を出しつつ、これまた新調した”アイアンソード”によるジャンプスラッシュで攻撃と同時に距離を詰め、トリプルスラッシャーを繰り出す。


(チッ……分かってはいたが、デスペナで攻撃力が落ちている分、いつもより手応えがねえな)


 高速で倒すっていうんなら、アイアンソードじゃなくて聖黒銀の槍を使うのが最適解なのは分かっている。

 使っていないのは、決して舐めプとかじゃなくて、単純にデスペナで基礎パラが下がった影響で、装備するのに要求されるSTRを満たせなくなっているからだ。


 アイアンソードとアイアンバックラーで幾らか火力はマシになっているが、それでも朧とどっこいどっこいといったところか。

 ダメージを稼ぐのは素直にシラユキに任せて、俺はスタンを取るのとコーチングに専念した方が良さそうだ。


 二人以上同時に指示出しとかNPC相手にしかやったことないけど、これも練習の一つだ。


 トリプルスラッシャーの最後の一閃を放ち、バリアーナックルに連携を繋げながら二人の動きを確認しようと周囲を見渡して、ふと気づく。

 朧がスタン中にも関わらず、ずっとクァール教官と一定の距離を保っていた。


 あいつ……もしかして投擲でしか攻撃してないのか?

 ……なるほどな、だから倒すのに二時間かかったわけか。


「朧、それ持って攻撃することできないか!?」

「え……多分、できると思う?」

「なら次スタン取ったら投げて攻撃するじゃなくて、試しにそれで直接ぶん殴ってくれ!」

「りょ、了解……!」


 ブーメラン――カテゴリ的に”投刃”に分類されるこの武器は、名称に()って文字が入ってることから、遠隔系ではあるけど、だからと言って投擲専用というわけでもないだろう。

 盾が直接殴ってダメージを出せたように、ブーメランを持った直接攻撃で同様の処理がされてもおかしくはないはずだ。


 というか、そうでもしないと投げてから返ってくるまでのタイムラグがある分、撃ちっ放しで済む弓や術系アーツとかと比べて、DPSにかなり差が開いてしまう事になる。

 それだとただの下位互換になりかねない……いや、実際もうなってそうだな。


 だとすれば、他の遠隔武器との差別化要素が存在しているはずだ。

 例えば……遠近両用で攻撃可能――とかそんなのが。


「ははっ……パラ配分だけじゃなくて武器までも玄人向けとか、マジで茨の道を進もうとしているな」


 投刃が強いのか弱いのかはさておくとして、もし本当に遠近両用なのであれば、使いこなすのには前提として高い練度が要求されると思われる。

 近接攻撃と遠隔攻撃を一つの武器で可能にしている代わりに、火力や射程距離、取り回しやすさとかが中途半端になりがちだからだ。


 ぶっちゃけ幅広いレンジに対応したいんだったら、弓とナイフのように二種類の武器を組み合わせて持った方が手っ取り早いし、大抵そっちの方が強い。

 もし投刃で同等のパフォーマンスを発揮したいんなら、投刃だからこそできる強みを見つけて差別化を図らなきゃならない。


(……それが簡単にできんなら、もう既に強武器になってるか)


「ま、それが朧に合っているんだったら止めるつもりはないけど」


 小さく呟いてから、再使用可能になったばかりのシールドバッシュをスタン終わりにのクァール教官の顔面に打ち込み、すぐさま後ろに跳んで距離を取る。


 スタンが解除されたことで怒り状態になるクァール教官を横目に、俺は次の指示を二人に出すのだった。


「シラユキはもう一度リリジャス・レイを発動できるように準備。朧はもっかい挑発でクァール教官の注意を惹きつけてくれ! 放電には注意な!」

投刃に分類される武器の殆どが独特な形状の為、扱いが難しい武器の一つによく挙げられます。にも関わらず、攻撃力が短剣と同程度しかないせいで上級者からも使用は忌避されがちです。

逆に言うとまだ研究が進んでいない武器種でもあるので、もしかしたら化ける可能性は無きにしも非ず(?)です。多分、先にアプデで修正入る可能性の方が高いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ