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アルカディア・クエスト~死にゲーを極めたRTA廃人が駆け抜けるMMORPG『理想郷探索Any%盾使いチャート』~  作者: 蒼唯まる
欲望と万富の教祖へ捧ぐ黄金の神話崩壊

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奪取できずとも

 十数分後、俺は最終面であるステージ5に挑んでいた。


「っし、やるか」


 一瞬の脱力から勢いよくスタートを切った直後、早速立ちはだかる高さ十五メートルはある凹字状の壁を一気に駆け上がる。

 本来なら壁ジャンプを使って登る障害だが、助走距離さえ確保できれば、そんなもの使わずとも余裕で突破できる。

 というかJINMUの鹿登りと比べれば、こんなの子供のアスレチックだ。


 壁を駆け上がれば、次に待ち受けるのは、宙に浮かぶほぼ垂直に近い傾斜の道が三つ。

 壁走りをしながら傾斜から傾斜に跳ばなきゃならないが、別にこれもいつもの動きをしていれば容易く突破可能だ。


 それから立ちはだかるギミックは、ランダムに現れたり消失する砂岩の足場の数々。

 足場の性質上、一度足を踏み入れたら途中で立ち止まることはできない上に、足場がランダムポップなせいで少し運要素こそ存在するが、ある程度の予測と反射神経があればどうにかゴリ押しできる程度の範疇だ。


 このギミックを突破すれば、今度は幾つものジャンプ台を使った上方向への飛び移り。

 ジャンプ台以外に足場は無く、飛ぶ際の力加減をミスれば即落下のゲームオーバーに繋がる難関ギミック。

 とはいえ、ここに至るまでに何回かジャンプ台は使ってきたから、どれくらいの力でジャンプすれば良いのかの感覚は何となく掴めている。

 最短、最速を意識しつつジャンプ台からジャンプ台に連続で飛び移り、鼠返しになっている足場によじ登れば、遂に最後のギミックが行く手を阻む。


 最後の障害——それは、鋭く曲がるカーブと激しい落差によるワイヤーレール(加速装置付き)の滑降。

 加えて途中でレールが途切れている為に何度か滑りながら別のレールに飛び移る必要があるおまけつきだ。


 現実だったら間違いなく靴底が一瞬で摩耗しきってしまいそうな勢いで火花を散らしながら、俺はレールを高速で滑り落ちる。

 バランスを崩さぬよう丁寧に、けれどスピードは一切殺さぬよう大胆に旋回と落下を繰り返す。

 三度あるレールからレールの飛び移りも難なく成功させ、最後にゴールラインを駆け抜ければリザルトが出現した。



————————————


 クリアタイム:35.56秒

 獲得コイン:700枚


————————————




「ふぅ……まあ、及第点だな」


 挑戦するのに500コイン必要だったから、収支はプラス200コイン。

 クリアタイムもステージ1と大して変わらないし、稼ぐ効率に関しては格段に良くなっているから、中々に美味しいと言えるだろう。


「欲を言うなら三十秒は切りたかったけど」


 でもまあ、初見でほぼノーミスでクリアできたわけだし、悪くはない結果と言えよう。

 俺一人ならこのまま何周でもリトライするところだが、流石にこれ以上シラユキを待たせるわけにはいかないか。


 まだ街の散策も済んでないわけだし。


 少しだけやり残した感じを持ちながらも俺は、もう一度やるかどうかの確認ポップアップに[NO]を選ぶことにした。




 スタジアム入り口のロビーに戻れば、シラユキが俺を見つけるなり、ぱたぱたと駆け寄ってきた。


「ジンくん、お疲れ様。凄かったよ! まさか全部一回でクリアしちゃうなんて……!」


「これくらいの難易度ならどうってことねえよ」


 アスレチック系のギミックは、大体JINMUのRTAで経験済みだし、そうでなくても応用でどうにかなる。

 ちなみに、シラユキがミニゲームの内容と結果を知っているのは、プレイ中の観戦が可能だからだ。

 フレンド同士であればリアタイ、アーカイブどちらにも対応していて、ニンジャ・トライアル以外のミニゲームも全て同様に観戦できるようになっているらしい。


「いやいや、あの難しさをこれくらいって言えるのは、めちゃ少数側っすよ……」


 少し遅れて、あまみおがやれやれと肩を竦めながらこちらにやって来る。


「そうか? このゲームやり込んでれば、このくらいのタイムならそこまで苦労しないで出せると思うが」


「トップ層ほどのやり込みようじゃないと無理っすよ……。まあ、それはそうとしてGGっす! 流石はJINMU RTA世界六位っすね!」


「ぐふっ!」


「ジンくん!?」


 世界六位……コンマ五秒負けての世界六位。

 初手でガバらなきゃ世界五位だったのが世界六位……。


 不意に配信の記憶が蘇る。


「主さん、急に項垂れてどうしたっすか!?」


「いや、KIDにほんのちょっとだけタイム負けてたのに、世界五位だって勘違いして叫んでたのを思い出しただけだから気にしないでくれ……」


「あっ……なんか、申し訳ないっす……」


「大丈夫だ、本当に気にしないでくれ」


 向こうとしては、ただ純粋に褒めてくれたんだろうし。

 ただ俺が勝手に軽いトラウマを感じているだけだ。


「そ、そうっすか……。で、でも、ウチ、主さんの本当に凄いと思ってるっすよ! なんたって、主さんとKIDさんが同じタイミングで一気に台頭したことでJINMU RTA最上位勢の呼び名が四天王からBIG6に変わりつつあるんすから……!」


「え、そうなのか?」


「そうっす! だから、どうか胸を張って欲しいっす!」


 ……それもそうだよな。

 傍から見れば十分過ぎるほどの大記録だ。

 いつまでも引きずるのも良くはねえよな。


(——にしても……BIG6、か)


 俺個人としては、四天王の座を奪い取ってやりたかったところではあるが、それと同じような立ち位置になるのも悪くない。

 実際、俺とKIDのタイムとモナカ達とのタイムって、もうそれほど差が開いているわけでもないし。


 などとつらつらと考えながら、俺はネガティブな感情を頭の中から振り払うことにした。

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― 新着の感想 ―
あら、この作品の更新はお久しぶりですね これから更新されるのだとしたら、とても嬉しいなぁ
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