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初の対人、手合わせて

「二刀流で……?」

「うん。前にモナカさんから聞いたんだ。別のゲームだけどジンム君って昔は、二刀流をメインにしてたって」

「確かにそうだけど。でも、アイツにそんな話したことあったか……?」

「結構前に配信でそんなことを話してたって言ってたよ」

「あー、そういうことか」


 それなら納得だが、にしても……んなことよく覚えてたな。

 まあ、配信で息抜きAny%を走る時は、二刀でする事が多かったし、実際、他の武器でやるよりは確実に練度も高かっただろうから、それもあって記憶に残りやすかったのかもな。


「とりあえず……事情は知らんが分かった。じゃあ、中庭に出てサクッとやろうぜ。言っとくけど一切手加減はしねえからな」

「……うん! よろしくお願いするよ!」


 それから中庭に出て、朧が腰に下げた投刃を構えるのを横目に、俺は両手の武器を変更する。

 黒刀と黒禍ノ盾がインベントリに格納され、代わりに両手に握られるのは二振りの小太刀。


 左手に握るは、赤と黒が混じる剣——焔【赤陽】。

 右手に握るは、青と白が混じる剣——焔【青月】。


 揺らめく炎のような刃紋が特徴の二振りは、それぞれのコヨトルを素材にして作られた雌雄一対の双剣だ。


 ——つっても、必ずしも二本セットで使わなくてもいいんだけど。


「さてと、この機能を使うのは初めてだな……」


 このまま戦ってしまうと、初撃を当てた方がフレンドリファイアー扱いになるだけでなく、街中で犯罪を犯したってことで当分の間、プレイヤーネームが黄色く表示され、その間は他プレイヤーやNPCから警戒されるようになってしまう。

 だからそうならないよう、これからそれの予防策を張る。


 まずはメニューを操作し、フレンド一覧に画面を切り替える。

 次に朧を選択して、内容を調整してからある申請を飛ばす。


 模擬戦——フレンド限定ではあるが、ルールを設定してPvPを行える機能だ。


 これならどれだけ攻撃を与えても問題にならないし、うっかりPKになるなんて事態にもならずに済む。

 尤も、その仕様が適用されるのは対戦相手のみだから、間違って他プレイヤーとか最悪NPCに巻き添えが行ったら、即お仕置きNPCが飛んできてアウトなんだけど。


 んでもってソイツらも災禍の七獣と一緒で、普通に戦ったらまず負けるっていうくらいクソ強って聞くから、一度戦ってみたさはあるが……負けた時、普通に死ぬよりもデスペナが酷くなるみたいだから試すのは止めておこう。


「ルールはODH(ワンダイレクトヒット)の攻撃アーツ禁止。一発諸に喰らった時点でアウトな。カスダメはノーカンだから、攻撃が当たっても油断するなよ」

「うん、分かった……!」


 表情を険しくした朧が申請を承諾すると、目の前に”10”から始まるカウントダウンが表示されたウィンドウが出現する。

 当然ながら、この数字が”0”になった瞬間、戦闘が開始する。


(さて、朧はどう出る……?)


 朧が右手に装備しているのは虚異霊を素材にしたであろう、極端に刀身が湾曲した黒い片刃剣。

 特殊効果は恐らく、魔属性付与とMP消費で術式無効化……どっちもそんなに気にしなくても良さそうだ。


 それと左手に装備しているのは、同じく刀身がくの字になるくらい湾曲した片刃の剣。

 悪樓の素材を使ってるかと思ったが、全体的にダークグレーの色合いをしているから、多分別のエネミーの素材を使って作られている。

 パッと見た感じ大方、防具にも使っているシェイドワイバーンって奴の素材とプラスαってところだろう。


 悪樓の素材を使った装備品は別に作っているのか……それとも、そもそもまだ使わずに取っておいてあるのか。


 ——ま、今は戦う事に集中するか。


 カウントは刻々と進んで行き、ウィンドウに表示される数字が”0”になった瞬間——、


「はあああっ!!」


 勢いよく地面を蹴り上げた朧が、飛びかかるようにして接近してきた。


「、っ!?」


 へえ、攻めてくるか……!

 けど……、


「甘い」


 動きが一直線な上に、胴体がガラ空きだ。


 朧の繰り出す振り下ろしを紙一重で躱しつつ、赤陽で空いた胴体に刺突を放つも、


「……チッ」


 空中で無理矢理身体を捻らせたことで回避される。

 ならばと、青月で回避直後の隙を狙って斬撃を浴びせようとするも、今度は()()を蹴って跳ばれたことで難なくやり過ごされてしまった。


「うっわ……分かってはいたけど、どんな回避能力してんだよ」

「ちょっと前にモナカさんとダイワ君に扱かれたからね」

「ふーん、なるほどな。じゃあ朧は、これが初PvPじゃねえんだ」

「そうだね」


 ってことは、今の回避は空中ジャンプと強化ステップの合わせ技か。

 そうか……ダイワの空中機動から発想を得たか。

 アイツも空中跳躍とかやってたもんな。


 けど、それを短い間で自分のものに出来るのは天性の高いセンスがあってこそ。


 ——やっぱコイツは間違いなくKIDレベルの逸材だ。


「でもまあ、相変わらず自分からの攻撃は苦手そうだな。もう一回掛かって来いよ。今の攻撃じゃ、いつまで経っても俺に攻撃は当てられねえぞ」

「それじゃあ……お言葉に甘えさせてもらうよ!」


 言うや否や、今度は飛びかかるのではなく、一直線に地面を駆けて距離を詰めて来る。

 攻め方を変えてきたようだが、これではさっきと同じ——攻撃で無防備になった箇所を狙い済ませばいい。


 となればタイミングを図ってカウンターを叩き込む。

 ……と、そう行動を誘ってからの、


「——直前にステップで側面に回り込んでからの奇襲だな」

「えっ!?」


 狙いは悪くないが、視線でバレバレだ。


 俺の予想通り朧は、間合いに入る直前に跳躍距離の伸びたステップで俺の右側面に回り込んでから、強化ステップで一気に肉薄して来る。

 これでケリをつけるつもりだったんだろうが、奇襲は読まれてしまったらただの無謀な突撃に成り下がってしまう。


 強化ステップは既に発動してリキャスト中。

 跳躍距離上昇はまだ効果時間が続いているんだろうが、跳ばれるよりも先に攻撃を当ててしまえば問題ない。


 須臾の見切り発動——僅かに後退してギリギリで朧の両腕の斬り払いを回避してから、即座に鏡影跳歩で朧の懐に潜り込む。


 ここも判断が甘いな。

 既に攻撃が読まれている以上、攻めて片方だけの攻撃に留めるか、攻撃自体中断して防御に徹するべきだったな。


「けどまあ——やっぱ動きは悪くねえな」


 ニヤリと笑みを浮かべて俺は、朧の胴体を叩き斬ってみせた。

模擬戦のルールは大まかに分けて四種類。

・先に直撃を当てた方の勝ち……ワンダイレクトヒット(ODH)

・カスダメでも良いから先に初撃を当てた方の勝ち……ワンヒット(OH)

・先にHPを半分削ったら勝ち……ハーフライフロスト(HLL)

・先に全損させた方の勝ち……フルライフロスト(FLL)


模擬戦はどれだけダメージを与えてもデスしないような仕組みになっているので、うっかりPKとかは発生しないようになっています。ただし自滅はするので注意。


以上の基本ルールに、細かなオプションを付けてPvPを行います。

闘技場は、これに加えてどれだけ暴れても周囲に影響が及ぶこともなく、フレンド以外とでも対戦可能なので本格的にやりたいなら闘技場に行きましょう。

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[良い点] 主っち冷静過ぎて悟り武者モード、オボロン厳しそうだ [気になる点] オボロンに英才教育施してJINMU逆輸入計画…?
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