またも諸共巻き込んで
——あれから一夜明け、俺とシラユキは朝からコヨトル二匹の周回を続けていた。
レベリングも兼ねているが、どっちかというと新しい装備の素材集めがメインの目的だ。
昨日のオーバード討伐や壊邪理水魚周回とかも含めた結果、それなりにレベルは上がっていて、現在のステータスはこんな風になっている。
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PN:ジンム Lv:40
所持金:171000ガル
PP:2
ジョブ:武者(盾使い)
サブジョブ:武闘家(蹴脚使い)
セカンダリージョブ:放浪者
HP:144 MP:56
ATK:283 DEF:281
SATK:35 SDEF:141
SPD:126 TEC:108
STR:142 VIT:39
INT:20 RES:41
AGI:111 DEX:93
LUK:30
アーツスキル
・盾震烈衝Lv7 ・守砕剛破Lv8 ・シールドスローLv6 ・三浪連刃Lv6 ・フライエッジLv5 ・破邪一閃Lv4 ・月砕蹴撃Lv3 ・落花瞬衛Lv7 ・巌柳剛衛Lv3 ・鏡影跳歩Lv6 ・憤怒の投錨者Lv7 ・フィルスビーターLvMAX ・パシュートヒッターLv7 ・瞬鋭疾駆Lv2 ・ラフファイトLv8 ・須臾の見切りLv3 ・コンボリワードLv7 ・致命の慧眼Lv3 ・呪獣転侵Lv3
装備
武器1:黒禍ノ盾
武器2:黒刀【帳】
頭:雷豹の兜
胴:雷豹の戦衣
腕:雷豹の手甲
腰:雷豹の穿物
脚:雷豹の半長靴
アクセサリー:虚異霊の脚甲
アクセサリー:浄魔の腕輪
シリーズボーナス:ATK、SPD、TEC+15、雷属性強化(中)、雷属性耐性(中)
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テクトリコヨトルが赤炎を、シワコヨトルが青炎を激しく燃え上がらせる。
発狂モード——体力が残り少なくなった証だ。
二匹の魔獣が迫り来る中、フィルスビーター、ラフファイトを起動。
続けてパリングガードの強化版——巌柳剛衛でテクトリコヨトルの攻撃を弾いてから、反撃に殴打系のアーツを連続で叩き込む。
直後にドッジカウンターとクリティカルアイの強化版アーツ——須臾の見切りと致命の慧眼を発動。
更に鏡影跳歩を掛け合わせてシワコヨトルの噛みつきを紙一重で躱しつつ、ホライズフラッシュの派生アーツ破邪一閃で喉元を断ち斬る。
アーツ発動後、俺は即座に黒刀を鞘に納め、インベントリからあるアイテムを二つ取り出す。
それは、手のひら大の青い球体……前に悪樓戦で世話になったライトニングボムの色違いバージョンだ。
”アクアボム”——壊邪理水魚がドロップする魔核を利用して、ひだりに作製して貰ったアイテムであり、昨日わざわざネクテージ渓谷に赴いて壊邪理水魚を倒しまくっていたのは、この為だった。
(——まさか、またボムを作る為にエリアボス周回をすることになるとはな……)
MMOと周回は切って離せないとは言うが、だからと言ってデジャブを感じるほど似たような展開になるとは思わなかったぞ。
でもまあ……そいつはさておき、このアクアボムがあるからこそコイツらの怨讐化対策を図れていた。
テクトリコヨトルとシワコヨトルと戦う時の厄介な点、それは片方を倒すと残った一匹が怨讐化……超絶強化されることだ。
時間制限付きではあるものの、怨讐化されると対処が面倒になる。
一度や二度ならそれで構わないが、何度も倒さなきゃならない以上、なるべく怨讐化を発生させずに倒す必要があった。
そして、考えた対抗策が弱点属性のボムによる範囲攻撃だった。
片方倒すともう片方が怨讐化するってんならよ——怨讐化する間を与えずに二匹とも同時に倒せば良いって事だろ。
「ハハッ、そろそろぶっ飛べよ……諸共なあ!!」
「——レジスト!」
シラユキが発動した術式によって緑の光が俺の身体を包み込むと同時、俺は両手に握り締めたボムを直接コヨトル二匹に叩き込む。
瞬間、着弾点を中心に発生した渦巻く激流が爆裂し、莫大な量の水が俺ごと周囲を飲み込んだ。
——結局、自爆特攻も前と一緒じゃねえか。
内心ツッコミを入れつつ、水飛沫と共に後方に吹き飛ば……いや、押し流される。
水って雷と違って質量でゴリ押すから、ライトニングボムみたいにゼロ距離で何度も連続でぶっ放せないのが難点だよな。
(……そもそもボムって至近距離で爆発させるものじゃない気もするが)
けど、これが一番手っ取り早いんだから致し方ない。
「ぐ、あっ!」
「ジンくん、大丈夫……っ!?」
勢いよく地面に叩きつけられ、何度か転がってからようやく動きが止まったところで、すぐにシラユキが駆けつけ、今の自爆で消失したHPを治癒術で回復させる。
その光景を横目に、仰向けになりながら空を見上げると、バトルリザルトが出現していた。
先にアーツで削りを入れていたのもあったが、今の二連爆撃が二匹のトドメとなったようだった。
「……まあな。つーか、さっきからずっと言ってるだろ。心配しなくてもいいって」
「それはそうなんだけど……でも、毎回見せられる側としてはどうしても心配しちゃうよ。ジンくん、いつも無茶ばかりするんだから」
「ハハ……悪い」
全くもう、と肩を竦め小さくため息を吐くシラユキ。
とはいえ、自爆特攻に関してはもう少し慣れて欲しいところではある。
何せディヴロザップ大砂漠を越えて黄金楽園に行くには、何回も自爆を繰り返さなきゃならないわけだし。
勿論、使わないに越したことはないが、俺らの機動力の問題上、必ずどこかで必要になる場面が出てくるはずだ。
「——まあでも、俺が好き勝手やれてるのは、シラユキが後ろで支援してくれてるおかげだ。……改めてだけど、ありがとな」
「………………」
「どうかしたか?」
「……ううん、唐突だったからちょっと驚いただけ」
照れくさそうに微笑するシラユキ。
それからすぐに立ち上がって、
「これでよし、と。体力の回復も終わったし、そろそろボスフロア出よっか。また戦うの?」
「いや、そろそろクランハウスに戻るつもりだ。大分素材も集まってきたし、時間的にも丁度いいしな」
時刻を確認すれば、もう少しで十二時を回ろうとしている。
ついでにフレンドのオンライン状況を確認すれば、ひだりは落ちているがライトはまだオンライン状態だ。
ライトがまだログインしている内に新装備の作製を頼んでおくか。
チェストに必要な素材入れてメッセージで済ますことも出来るけど、可能なら直接依頼した方が手っ取り早いしな。
「そういう訳だし、帰ろうぜ」
「……うん!」
Q.なんで前日から主人公の所持金が区切りのいい感じになってるんですか?
A.ひだりが貯金箱をクラフトして主人公のマイルームに設置して貰ったからです。これで呪獣転侵が暴発したり、思いがけぬ事故デスしても前ほど悲惨な状況にはならないですし、ヒロインちゃんにお金の管理をして貰わずとも済むようになりました。
ちなみにヒロインちゃんは、主人公からお金を預かる度にその金額をしっかりとメモしており、貯金箱が設置されてからは、これまで預かっていた合計金額分をきっちり返却していたり。