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狂化、抑えて

 自分で言うことではないかもしれないが、戦闘中スイッチが入った時の俺は分かりやすくテンションがハイになる。

 それこそ前にJINMUの配信をした時は、キャラ豹変し過ぎだとか、バーサク状態になってるだとか、バトルジャンキーみたいだとか、そんなコメントがかなり散見していたくらいに。


 つっても今までの配信で指摘されてきた事でもあるし、テンションを抑えようとすると何故かパフォーマンスが落ちるから無理に直すつもりもないのだが、今後の事を考えれば、安易にジンム()RTA配信主()だと気付かれるような事態になるのは避けた方がいい気がする。


 もしジンム=RTA配信主だと認知された状態で悪樓撃破の犯人が俺だってバレたら色々めんどくなりそうだし。


 ……まあ、そもそも自惚れるほど俺の認知度はないんだろうけど。

 とはいえ、みゆぴーみたいなレアケースもあるだろうから、用心するに越したことはないはずだ。


 ——そんなわけで、今回のボス戦はちょっとした制約をかけた上で戦ってみようと思う。


 エリア最奥部ボスフロア。

 戦闘開始から早々、俺はゲディエイト砂漠のエリアボスである(つがい)の獣型エネミー——テクトリコヨトル(赤と黒の魔獣)シワコヨトル(青と白の魔獣)に向けて憤怒の投錨者を発動する。


「よぉ、二匹まとめてかかって来いよ……!」


 制約の内容は至極単純だ。

 吠えない——ただそれだけ。


 戦闘スタイル自体が他と比べてほんのちょっとだけ特徴的だと自負しているが、それ以上に戦闘中によく叫ぶことこそが俺を俺たらしめている気がする。

 なら、必要以上に叫ばずに戦うことでジンム=RTA配信主だと気付かれにくくなるはずだ。


 いまいちエンジンがかからないのを感じつつ、ドッジカウンターとクリティカルアイを同時起動、ボスの片割れ——テクトリコヨトルに向かって鏡影跳歩で速度を乗せたホライズフラッシュを居合抜刀で放つ。

 直後、落花瞬衛でシワコヨトルの前脚の叩き付けを防ぎ、カウンターで三浪連刃を浴びせ、追撃にラウンドシュートを叩き込む。


「遅え……よ!」


 思わず叫びそうになるが、グッと堪える。


 ——癖ってそう簡単に抜けるもんじゃねえな……!


 内心で歯痒さを感じつつ、テクトリコヨトルの反撃をパリングガードで防ごうとするが、


「チッ——」


 タイミングが微妙に合わず発動失敗。

 ただの防御となったことで肉体に負担がかかり、HPが少し削れてしまう。


(……クソ、地味に感覚が合わねえ)


 パリングガードは通常のパリィと比べて発動時間は長めに設定こそされているものの、それでも成功タイミングがシビアなことに変わりはない。

 普段は感情と感覚のままにやっていれば自然と成功していたから気にすることは無かったが、テンションを抑えようとするとここまで影響が出るのか。


「分かってはいたつもりだけど、な……!!」


 シアヨコトルの攻撃を躱しつつ、返しに頭部に盾震烈衝を打ち込むと、


「——聖蕾・光牢」


 続け様に足元に発生した光の結界がシアコヨトルを覆い拘束した。


「ナイス、シラユキ!」


 生まれた僅かな隙を突き、黒禍ノ盾にありったけのMPを流し込み、動けずにいるシアコヨトルに黒の爆発をぶっ放そうとするも、


「っ!」


 横槍が入る。

 テクトリコヨトルが番の危機を救うべく、鋭利かつ頑丈そうな牙を立てながら俺に飛びかかってきた。


 奴の狙いは俺の頭部——まともに食らえば、たちまち俺の頭蓋は噛み砕かれ、HPも一瞬で消失するだろう。


「——クソッ……!」


 普段であれば構わずシアコヨトルへの攻撃を続行していたところだが、今はそれをやるとなんかヤバいガバしそうな気がする。

 なのでシアコヨトルへの攻撃は中断、ターゲットをテクトリコヨトルに変更し、通常の防御と同時に溜め込んだ魔力を放出する。


 多少のHPと引き換えに、発生した黒の爆発がテクトリコヨトルを吹っ飛ばす。

 それから即座に拘束が解ける寸前のシワコヨトルに盾震烈衝を命中させた後、一度距離を取って、インベントリからポーションとマジックポーションを取り出し、失ったHPとMPを回復させた。


「ジンくん……!?」

「大丈夫だ。シラユキはそのまま後方支援を頼む」

「……うん、分かった! とりあえず他のバフを掛けておくね……!」


 俺を心配そうに見つめるシラユキだったが、すぐに意識を切り替え、術式の構築に入った。


(……にしても、やり辛えな)


 まさかこんなにもパフォーマンスに悪影響が出るとは思わなかったぞ、おい。

 想定以上の体たらくに堪らず顔を顰めてしまう。


 ——なんなんだ、この微妙な感覚は。


 上手く言語化できないが、何かが致命的に噛み合っていない。

 なんというか……アクセルを全開に踏んでいるつもりなのにいまいち踏み切れていないような、ちょっとだけブレーキをかけてしまっているような……。

 何にせよ、攻めの意識と実際の動きに僅かなズレが生じているのは確かだった。


「……修正をする必要があるか」


 ハイになっている時の動きを基準に戦闘を組み立てていては、絶対にどこかでやらかす。

 であれば、ギアを上げないなりの戦い方を模索していくべきだ。


 それに——、


「いつもあの戦い方が出来るとも限らないしな」


 その為にもまずは……アイツらの動きを見極めるところから始めるとするか。

この辺りのエリアからボスが複数体出てきたりするようになります。


ローテンション=弱い……というわけではないです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほんのちょっと(壁のぼり、武器以外に手も足もアクロバットも出る、変態回避) [気になる点] ハイテンション=悟りを啓いているだけ説…?
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