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超越を冠する者を撃破して

 街まで届きそうなほどの爆音が轟いた後、静寂が辺りを包む。

 大きく息を吐き出せば、このままごっそりと身体の力が抜け落ちてしまいそうな錯覚に陥るが、どうにか耐えて前を向く。


 眼前に広がるのは、半身が吹き飛んだ狂戦斧鳥に衝撃の余波ですっかりはげあがった地表。

 そして、狂戦斧鳥がポリゴンへと散りゆく光景と共に目の前に出現したバトルリザルトと()()()()()()で九割以上削られたHPを見ながら、俺は密かに決意する。


 ——ちゃんと防具を揃え終わるまでは、フルチャージで闇の魔力をぶっ放すのは止めよう、と。




————————————


[——に侵されし魔物はここに討たれた。しかし、——がある限り、超越を冠する魔物は再び現れる]

[オーバードエネミー『アックスビーク”狂戦斧鳥(トマホーク)”』を撃破。レイドバトルを終了します]

[参加人数:7/24]


………………

…………

……


【EX RESULT】

称号【超越を冠する魔物を討ち倒し者】を獲得しました。

称号【脅威から街を守りし者】を獲得しました。


————————————




 悪樓みたく第二形態になる……なんて展開にはならなかったか。

 内心、そうならなかった事にちょっとだけ安堵していると、


「——ジンくん!」


 シラユキが慌てた様子でこちらに駆け寄って来た。


「はあ……良かったあ。一気に体力が無くなった時は、本当にヒヤッとしたよ」

「悪い、心配かけた。……でも、シラユキのおかげで助かったよ。ありがとな」


 笑いかければ、シラユキはほんのりと頬を赤く染めてはにかんで見せた。


 レジスト——一定時間RESを上昇させる下位の強化術。

 黒禍ノ盾にぶち込んだ魔力をぶっ放す直前、俺の身体を包んだ緑の光の正体だ。


 残りのHPからして、もしこのバフを掛けられていなければ、今頃俺は肉体が耐えきれず自滅し、クランハウスの自室で目を覚ましていただろう。


(まさか……また似たような感じで助けられるとはな)


 思い出すのは、ドン・ヴァルチャーに引導を渡した際の瞬間。

 あの時に掛けられたのはVITを上昇させるバリアーだったが、あれがなければ俺は落下ダメで奴と共倒れになっていた。


「にしても……よく咄嗟にバフかける判断できたな」

「ジンくんがマジックポーションをたくさん飲んでたのを見たら、自然と身体が動いてたんだ。なんとなくだけど、ジンくん無茶しそうな気がしたから」

「……全くその通り過ぎて返す言葉が無え」

「ううん、気にしないでも大丈夫だよ。ジンくんが好きなように動けるようサポートするのが私の役目だと思ってるから。——それに、これからもジンくんと一緒にやって行くには、これくらい出来ないとだから……ね」


 言って、にこりと眩いばかりの笑顔を浮かべるシラユキ。


「……って、それよりもまずはHPを回復しなきゃだよね。すぐに回復するからじっとしててね」


 あー……今ならシラユキに助けられたNPCの心情が分かる気がする。

 確かに、これは天使と形容したくもなるな。


 俺に手を翳し、術名の無い治癒術を施すシラユキの姿と徐々に回復するHPを横目にしながら、ふと強くそう思う。

 つい言葉にしてしまいそうになるが、先日の一件もあるから喉元でグッと堪える。


 十秒程度で失ったHPが全快しかけた頃、みゆぴーが野良プレイヤー達と共にこっちに近付いてきた。


「二人共、お疲れさん。いやはや、最初はどうなる事かと思ったけど、少年とお嬢さんのおかげでどうにか勝てましたなあ」

「いえ、皆んなで力を合わせたからですよ。皆さん、本当にGGでした!」

「うおっ!? 想像以上に謙虚な答えが返ってきた。おっさんには、その純真さがちょいと眩し過ぎるぜ……!」


 自分で話振っておいてダメージ喰らうなよ……。


「まあでも、シラユキの言ってることはあながち間違ってもないだろ。傍から見て貢献度が分かりやすいか分かりにくいかってだけで、全員がそれぞれの役割を果たしたから勝てたバトルだっただろうし」


 シラユキに同意すると、みゆぴーが豆鉄砲を食らったように目を見開く。


「おお、少年……思ったよりも周りを気遣った事も言えるのね」

「おい、喧嘩売ってんのか?」

「だってさー。少年、さっき面と向かっておっさんの使い魔を邪魔とか言ってたじゃない」

「つっても、実際邪魔だったし。それに時間が無い状況で言葉選んでる余裕なんてないだろ」

「だからって言い方ってものがあるでしょうよ……」


 はあ、と溜め息を吐き、みゆぴーは肩を竦める。

 しかし、次の瞬間にはケロリと表情を戻していた。


 それから軽く会話をした後、野良パーティーと別れてすぐのことだった。

 みゆぴーがこちらを振り向きながら、


「——ところでさ。少年に訊きたいことがあるんだけど」

「ん、どうした——」


 ……うわ、なんかめんどくさそうな予感がする。


 思わず眉を顰めるも、みゆぴーは構わず続けるのだった。


「——少年さあ、もしかしてだけど……一昨日JINMUのRTA配信してた名無し君だったりする?」

Q.なんでアーツ無しで治癒術が使えるんですか?

A.回復効果のある魔力を直接当てているからです。ただし、僧侶系統ジョブの特権ではあります。ただし範囲はゲキ狭なので戦闘外でしか使えないです。


災禍の眷属、裂け目の怪物、オーバード。

どれも似ているようで別物です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 圧倒的理解力!やはりバカッp (ry [一言] ぬしっち早速身バレしちゃってるじゃないですかー。 そら(盾使い)そう(廃テンション)なる(狂戦士)
[一言] まさか、この人はランカー勢⁈
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