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アルカディア・クエスト~死にゲーを極めたRTA廃人が駆け抜けるMMORPG『理想郷探索Any%盾使いチャート』~  作者: 蒼唯まる
黒く爆ぜろ、魑魅魍魎を飛び越えて

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単騎の盾と一つの懸念

 鋼鉄ゴーレムと水銀スライムが退いたことで動きに制限が無くなった狂戦斧鳥の攻撃は、より俊敏に、より苛烈になっていた。


 斧状の嘴を間髪入れずに何度も振り下ろしたり、バタ足をするように大きく両脚を何度も動かす蹴りを放ってくる。

 どの攻撃も落花瞬衛やパリングガードといったアーツで防いでいなければ、防御を貫通して肉体にダメージが行くであろう威力を誇っていた。


 俺のような紙VITでも一、二発程度であれば耐えられるかもしれないが、それじゃあ俺が一人でタンクを引き受けた意味がねえ。


「やっぱ、やるならノーダメだよなぁ!!」


 ドッジカウンターを起動させながら素のステップでバタ足キックを回避と同時、盾震烈衝を狂戦斧鳥の顔面に叩き込む。

 からのクリティカルアイ+コンボリワード発動——三浪連刃と通常の斬撃で全身をめった斬りにする。


 時折、会心が発生した手応えは感じるが、ダメージエフェクトはそこまで大きくはない。

 純粋な強さで評価するとそんなでもないけど、スタンになる気配は見えねえし、不自然にダメージカットされているわでめんどくせえ、という感情が一番に出てくる。


「仰け反りにもならねえし、まだあっち(JINMU)の連中の方がサンドバッグになるぞ……!」


 思わず舌打ちを鳴らした直後、ノーモーションで繰り出してきた突進を鏡影跳歩で躱した瞬間、


「——リリジャス・レイ!」


 後方から発射された光の奔流が狂戦斧鳥を撃ち抜く。

 すると、戦闘が始まってから初めて狂戦斧鳥から苦悶の叫声が上がった。


 ——何度見ても階級詐欺してるとしか思えねえよな、あの術。


 重ねがけされたバフと弱点属性が前提にあるとはいえ、そもそもの威力が壊れてやがる。

 恐らく、この場にいる中で一番レベルが低いであろうシラユキが一番の火力を叩き出しているであろう事実が何よりの証拠だ。


(……ヒーラーが一番のダメージ源になってるって、完全にDPS泣かせだよな)


 ただまあ正直なところ、シラユキの魔導書を解禁させるのは、結構リスキーな行為ではある。

 悪樓戦の時、ボスフロア周辺にいたプレイヤーから、リリジャス・レイの術エフェクトを見られている可能性があるからだ。


 悪樓撃破から数日が経って、大分ほとぼりが冷めたとはいえ、未だに悪樓の……というより『アルゴナウタエ』の一件を恨んでいる連中ってのは少なからずいる。

 当然だ、折角のトップクランに入れるチャンスを失くされたんだからな。


 実際、掲示板やらSNSを見てみると、一部の層からではあるが、俺たちに対するヘイトはそれなりに溜まっているみたいだった。


 俺から言わせれば、三日間ネクテージ渓谷を通行止めにしてしまった申し訳なさはちょっとだけあるものの、自分の不始末を自分で片付けただけだから、んなこと知ったことじゃねえが。

 まあそれは置いておくとして、その際に俺らを特定するヒントとして二つの要素が挙げられていた。


 まず一つは、獣呪化した俺の姿だ。

 実を言うと、第二形態に変化して上空を飛び回るようになった悪樓に全身真っ黒な煙みたいなのに覆われたプレイヤーが飛び乗ったという話は、既に動画付きで出回っていたりする。


 確かにあれだけ人がいれば、その瞬間を録画する奴がいてもおかしくはない。

 そういう事もあって、人前では絶対に呪獣転侵を発動しないようにしているが、仮に周囲にプレイヤーがいる時に暴発した場合は、即バレるだろうな。


 それともう一つの要素が——そう、リリジャス・レイである。

 本来、実質基本職のみでしか挑戦できない悪樓戦において、何故か中位の術式が使われていた、という事実が獣呪化した俺の姿と同じくらい話題になっていた。


 こっちは、見られる=即バレみたいな事態にはならないとは思うが、不審に思われたとしてもしょうがないことではある。


 リリジャス・レイ……というより、聖属性の術式を扱えるプレイヤーが比較的少ないし、魔導書を所持しているプレイヤーとなればもっと限られてくるだろうから。

 ……それが、まだ上位職にクラスアップしてからそんなに時間が経ってないであろうプレイヤーとなれば尚更な。


 だけど、ここでリリジャス・レイを出し惜しみすれば、狂戦斧鳥にはまず負ける。

 じゃないと、HPを削り切る前に制限時間がやって来てしまう。


「みゆぴー!! もっとデバフを重ねがけ出来ねえか!?」

「もうちょっと待ってくれ、少年! 今、全力の本気でやってるからー!!」


 問い掛ければ、返ってくる必死な叫び。

 ちらりと後ろを振り返れば、新たに召喚した額に赤い宝石を宿した四足歩行の小動物とリスに似たエネミーを肩に乗せ、真剣な表情で術式を構築していた。


 ——もう少し粘らねえと、か。


 周りを見渡せば、みゆぴーだけでなく、他のDPS組もバフに徹するようになったもう一人のヒーラーも自分が出来ることを尽くしている。

 タイムリミットは刻一刻と迫っているが、まだ焦るような時間でもない。


(というか、デバフ頼りとか何腑抜けた思考になりかけてんだよ……!)


 決定打が無いだけで着実にダメージは与えられている。

 だったら、攻めて攻めて攻めまくればいいだけのことだ。


「——それに、ただ攻撃を耐え凌ぐだけなんてつまらねえだろうが!!」


 パリングガードで振り下ろされた斧嘴を弾き、地面に叩きつけるようにして守砕剛破を狂戦斧鳥の脳天に放つと同時、持っているMPを全部注ぎ込んで闇属性の魔力を爆発させる。


 しかし、これでもダウンには至らず、怒り狂いながらすぐに立ち上がる狂戦斧鳥に向けて俺は手招きしながら挑発をかける。


「オラ、かかって来いよクソ鳥! もっと遊んでやるからよ!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 狂戦士スイッチぃー入っちゃいましたかー [気になる点] そんなとこに力使うならさっさとレベリングするなり魔境越えなりすればいいものを。一定数存在しますなぁ…
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