叫び
「ふざけないで!」
美雪の言葉にカリュードは固まった。
何を言われたのか理解できない、そんな顔だ。
その表情により一層美幸は怒りが募る。
「家族がどうでも良い!?そんなこと言わないで!そりゃあ貴方にとっては他人であろうとも、私にとっては血の繋がっている、かけがえのない人たちなんだよ!?どうでも良いみたいな言い方はしないで!否定するようなことを言わないで!」
一気に言い切り、美幸は息が切れる。
はあはあと荒い呼吸を繰り返していると、カリュードの声が耳に届く。
「…家族とはそんな良いものなのだろうか。」
「馬鹿にしているの!?」
普段より荒い口調な美幸を、カリュードは無機質な目で見る。
「家族とはなんだろうか。血の繋がった…血が繋がれば家族なのだろうか。理解不能。解析不可能。」
「なっ…!」
人間とは思えない言動に、絶句する。
だが、憤った感情は、止められない。
「分からない!?カイくんは親をなんだと思っているの?それでも人間!?」
「………。」
カリュードは何も答えない。
美幸は今までにないほど強く睨む。
「……もう二度と私に構わないで。」
***
「あぁ〜…英梨お弁当分けて…」
中島英梨は、隣の席でぐでーとなっている友人を見て、呆れた表情になる。
先程からずっとこんな感じなのだ。
「良いけど。忘れたの?」
「んー、そんな感じ。」
「あんたが忘れるって珍しいね。」
「まあ、色々あって。」
美幸はその後すぐにその場を去った。
溜息をつきながら教室に戻ると、何故かお弁当がなくなっていた。
カリュードが頼んだと言っていたのを思い出したとき、美幸は本気で呪った。どれだけ効果があるか分からないが。
「ほい。」
「ありがとう!」
唐揚げを食べていると、カリュードが教室に戻ったのが見える。
ぱっと視線をそらすと、英梨が目を丸くした。
「あれ、あんた達婚約者じゃ。」
「違う。あんな奴が婚約者とか無理。」
「なにがあったの…」
英梨はいつになく荒ぶっている友人に、頭を抱えた。
「婚約者っていうのはカイくんが勝手に言っているだけ。私は全然好きじゃない。」
「なんか言われた?」
「私の、いなくなった家族をどうでも良いって言った。」
「ああ…うん、ダメなやつだったか。」
そりゃそうだわと呟くと、英梨は十年前の出来事を思い出した。