現実に戻りましたが離れません
『一時間が経ちました。最後の鬼は滝奏さんです。みなさん中央に集まって下さい。』
今日も奏が罰をくらう。
聞いた時に美幸は顔を歪めた。
男がどうしたと聞いてきたが、誤魔化す。どうせ信じないだろうから、
美幸たちは異空間から出て、中央に向かう。
少女に連れていかれる奏は最後まで泣き叫んだが、美幸たちには、どうすることもできなかった。
男はよくわかっていない様子。そして、少女を見た時に、驚いた様子を見せた。
全員は解散すると、それぞれ我が家へ帰る。
確実になにかが壊れていっているのを美幸は感じた。
「あの、何故離れないのでしょう?」
美幸は異空間を出てもなお隣にいる男に困っていた。
だが、男はただ蕩けるような笑みを向けてくるだけ。
(もう、何が起こっているの?名前も知らないこの人に…うん?)
自分が思ったことに疑問を持つ。
(私この人の名前知らない…?)
「あの、名前は…」
「あぁ、言っていなかったね。私はカリュード=フレンブ。カイって呼んで。」
馴れ馴れしいなと思いながら、美幸は断る。
「えっと、いきなりはちょっと…」
「そうか…分かった。今はカリュードで我慢するよ。今は。」
美幸は何も言っていないのにいきなり名前で呼ぶことに引きつった笑いが浮かぶ。
そして、“今は”と念を押されたことに先が不安になった。
***
美幸は自分の家まで来ていた。
そして、扉を開けようとして気付く。
「あのー、地球に来たのは良いのですが住む場所ないですよね?」
「敬語はやめろ。…それなら問題ない。既に手配してある。」
「え?」
美幸は生まれて初めで自分の耳がおかしくなったのかと疑った。
聴覚には自信があったのだが、何故か今、『既に手配した』と聞こえたのだ。
しかし残念ながら、現実であった。
「美幸の家を見つけた時に、念話で私の従者に頼んでおいたんだ。この隣に家を用意しろって。だからその心配はいらない。」
「す、凄いね…でも私は学校があるからずっと一緒とはいかないから…じゃあね。また明日…かな?」
「ああ、おやすみ。」
カリューどは美幸がただいまーと言うのを聞くと、許可したものにしか見えない家に入る。
カリュードが住んでいる世界は、魔法と科学がどちらも存在する世界。
だが、魔法だけでは限界があるので、科学も重宝されている。
口に手を当てて、カリュードは今後のことを考える。
先程美幸がずっと一緒にいれないというのを。
「……ずっと一緒にはいられない、か…さて、どうしたものか…」