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異空間にて彷徨う

今謝ります。すみません(土下座

あの日以降美幸たちの関係はギクシャクした。

罰を受けた栄樹は死んではいないが、全身を焼かれると言う夢を見せられたらしい。

夢だから良かったねと奏が声をかけたが、痛みはリアルのそれらしく、二度と見たくないと言っていた。


学校で美幸はクラスメイトに「木月たちと何かあった?」と聞かれたが、曖昧な笑顔で返すほかなかった。

いっても誰も信じないだろうから。


「あ…」


五時。

美幸たちはショッピングモールへと呼び出される。

一般の人もいるこの時間にやるのかと思うと、美幸は憂鬱な気分になった。


「疲れた…」


呟いているのは木月。栄樹も含め全員が一階に居る。

そして少女が現れた。


昨日のようにニタリと笑うが、美幸だけはあの表情を見てしまったため怖くなかった。


「さあ、今日もアタシのゲームで遊ぼうね?いーち、にー、…」


問答無用で始まる。

皆無言でエスカレーターを登る。


美幸はエレベーターへと向かった。

エスカレーターだと余計な体力を使うと一日目で分かったからだ。


幸い誰も使っていなかったのか、あっさりと乗れた。

無人のエレベーターの中、美幸は五階を押そうとしてーーー


「…あれ?」


変なボタンがあることに気づく。

五階建ての筈なのだが、その上の、数字ではない何かが書いてある。

丸い記号の中に星のマーク。

惹かれた美幸は、押してみた。

動く。上へ上へと向かって行く。ぐんぐんぐんぐん。


「…長い?」


そう、長い。

五階を振り切り、階を示すメーターがプツリと消える。

そしてエレベーター内が真っ暗になる。

何が起こるのか。美幸の心は恐怖で染まる。


「え!?何?…怖い…!」


耳を抑えてしゃがんでしまう。こうして恐怖が逃れるわけではないが、何かしていないと耐えられなかった。


「……っ!」


いきなりガクンとエレベーターが止まる。

衝撃に思わず目を開ける。つんのめり、手をつく。

扉が開く音がし、美幸の目はつられるように目が外に向かう。


「……え?」


漏れ出た声は茫然としたものだった。

それはあり得ない景色だったからだ。

宇宙のような空間に一つ丸いものが浮かんでいる。まるで地球のよう。

絶景と表すべき目に映るものは、エレベーターからみるものではない。


「……何これ」


疑問が口を出る。

だが、答える人はいない。

恐る恐る床ギリギリまで寄る。

落ちないように細心の注意を払い…


「あっ!」


バランスを崩した。気をつけたんじゃないの!?と突っ込みが入りそうだ。


「死ぬ…!…あれ?」


だが、なぜか落ちなかった。

身体がうつ伏せの状態で空中にとどまっている。

驚きながら身体を起こそうとしたら、思うがままに動いた。


「…え、これ何?不思議な感じ…飛べたりするのかな?」


前に進む。動いた。下へ急降下。余裕で出来た。


「…ファンタジー?」


先ほどまでやっていた鬼ごっこがそもそもありえない現象なんてことは頭になかった。

重力を無視して動ける自分に眼を瞠る。

そのまま宙返りしたりして遊んでいたが、少しすれば飽きて、地球に似たものに近づく。


「あれは…一体なんなんだろう…」


距離が詰まるとだんだんと細かいところが見え、地球ほど大きくない事に気づく。

ロシアとアメリカだけの規模だ。


かといって人の手でその規模が作れるとは思えない。

つまり…


「…ここは地球の中で作られたものじゃない?」


完全な別空間。

異世界ということになる。

ありえないと頭の中で思えど、すでに空中で自由自在に動けることがありえないのだからすんなり受け入れた。


また少し近づいて観察し、一周してみる。


「太陽系に入ったら一番小さくなるよ」


クスッと自然に笑みが溢れこわばっていた体がほぐれていく。

少し冷静になったところで当たり前のことに気がついた。


「…他に星がない?」


周りを見渡せば本来あるべき恒星が存在していない。

だからただ見えないだけかもしれないが、輝くものが一切暗闇の中に見えない。

そう、惑星とも衛星とも、ただの星と言えるものさえ他に存在していないのだ。

一度止まり、もう一度観察する。


「間違いない。他に何もない…少し、不気味かもしれない」


美しくも暗い中に一つしか物体が存在しないというのはどこか恐ろしい。

1人でいるのが怖くなり、美幸はこの星の適当に何処かに着地することにした。


この星か、この一帯かは知らないが、近未来感が強く、高層ビルが立ち並んでいる。

美幸が着地したところも、ビルの上だった。


「……この世界にいる限り私は自由に動けるのかな?」


もしかしたらこの星の住民がそうなのかも知れないけどと思いながらも、美幸は探索を続けた。

普通に歩いている通行人に見つからないように、上の方を飛ぶ。

とっくに鬼ごっこのことなど忘れていた。


***


変な服を着て無表情の住民に疑問を持ちながら美幸は移動していた。

恒星がないのにも関わらず、街は明るかった。


「すごい…天井が光になってる…」


少し語彙がおかしいかもしれないけれど、でもそうとしか言い表せなかった。

天井が造られライトが地面を照らしている。そうまるで太陽のように。


確かに恒星がなくなればそうすればいいけれど…でも


「寒くないのかなあ…」


美幸はあまり何も感じないけれど、この星の人がそうだとは限らない。

それとも自分と同じように寒さなんて感じないのだろうか。


「…面白いなあ」


好奇心から興味に変化し、人目も気にせず観察していく。


「何で服が硬そうに見えるんだろう?…現実で首にヘッドホンかけてる人っているんだあ…」

「あれ、これどうやって使うんだろう…説明書もないってことは日常的に使うものなのかな」

「わ、美味しそう…だけどお金…うう…」

「お菓子が全自動で作られてる!たくさんたべれるのいいなあ…」


地球よりもはるかに科学技術が発展している街並みは中学生の心を踊らすにが十分だった。

しばらくフラフラ彷徨っていると、頭に声が響いた。


『一時間が経ちました。最後の鬼は滝奏さんです。みなさん中央に集まって下さい。』


「……あ。そうだ、鬼ごっこ…奏ちゃんか…」


憂鬱そうな表情で美幸は浮かび上がる。

だんだんと離れていく星は綺麗で、でもどこか寂しい。

最後まで一つの星を見ていたが、美幸はエレベーターに再び乗り、消えた。

明日こそ…(汗

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