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ゲームの開始2

「とりあえず5階まで行って…何処かに立て籠もる?」


走りながら考える。

そしてついに、少女は走り出した。


「キャハハは!」


「……っ!」


恐怖で身体が竦むが、止めた瞬間に、捕まってしまうような気がした。


(鬼ごっこ?そんな可愛いものじゃない!)


どうしてこうなってしまったのかと思ってしまう。

そもそも木月が触れなければ、こうはならなかったのだ。

歯を食いしばりながらも、エスカレーターを駆け上る。

一般の人が見てきたが、気にしていたらこのゲームには勝てない。


「……それにしてもあの子可愛かったな…」


美幸は無類の可愛い物好きだ。それが人であろうと物であろうと、なんでもいい。


「今女の子は……一階にはいない?……エレベーターに乗って一階に…っ!?」


美幸は悪寒がして一気に走り出す。

後ろから舌打ちをする音が聞こえる。


「ちっ!噂ではそうだが…お前…なんで走れるんだよ!」


木月だ。


(走れないと思っていたから私を追いかけることにしたの…?)


美幸が走れると言うのはとても不思議なことなのだ。

小学生の頃事故に遭い、しばらくの間は動けなかった。

しかし、人並み以上の足はある。

木月が後ろで叫んでいるのはそう言うことなのだ。


だが…何故木月が鬼に変わっているのだろうか。


(まさかーー女の子の足が橋田より早いの!?)


この中で一番速いはずの木月が鬼というのはそう言うことを意味する。

まだ始まって間もない。

しかし、状況が回るのが早すぎる。


冷や汗をかいていると、目の前にエレベーターがちょうど来ているのが見えた。


「このままだと私が鬼になっちゃう…橋田には悪いけど逃げさせてもらうね…!」


美幸は呟くと、人混みへ一直線に走る。

木月が見失うと、エレベーターが閉まっていく。

その中には美幸もいる。間に合ったのだ。


「ふぅ…ごめんね、橋田。」


罪悪感が半端ないので謝る。


階は一番遠い一階で降りる。

壁際を移動しながら歩いていると、あの少女がいた。

中央の丸い椅子の座っている。

しかし、表情はあの狂気を感じさせる顔ではない。むしろ何処か孤独を感じさせている。


だが、ほんの少しだった。

少女は私の方を向くと、ニタリと笑った。


「お姉ちゃん!どうしたの?私を捕まえに来た?」


一人称が私に変わっでいることに気づくが、気にはとめない。

普通なら逃げるところだが、この子と美幸は話がしたくなった。


「ううん、私は鬼じゃないよ。貴方が橋田を捕まえたの?」


少女は驚いた顔をすると、笑顔で話を続ける。

美幸は少女が座っている椅子の隣に座った。


「橋田?もしかして茶色い髪の男の子?」


「そう、その男の子。」


「それなら私が捕まえたよ?ねえ、誰が最後鬼になるの?」


「分からないなあ…最後鬼になった子はどうする?」


「決まってるよ?それなりの(ペナルティ)が与えられるの。」


私は食べると言わなかったことに眼を瞠る。

だが、何故か聞いてはいけないような気がした。


「…そうなの?…ねえ、貴方は何でこのゲームをするの?」


「私が生きる為。」


少女は言い切る。


「…そしたら仕方ないね。名前は?」


「名前?誰の?」


お人形のような顔で少女は首をかしげる。


「貴方の。何時迄も貴方って呼ぶのはおかしいでしょう?」


「…私の、名前…は…」


いつまで経っても名前は言われない。

上の階で悲鳴が聞こえる。人混みから全然声が届かないはずなのにここまで聞こえたという事は、かなり近い。

美幸は聞くのをあきらめると、立ち上がる。

少女は何の反応もしない。


「思い出せないなら、また聞きに来るね!」


「バイバイ!」と美幸は走り出す。


残された少女は暗い顔で「名前…」と呟いていた。

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