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もう一度

***


「毎日を楽しく過ごした。新婚ごっこをしたり毎日を楽しく過ごしたのだけど…美幸は突然来なくなった。」


「それが…事故で記憶を失ったから。」


「思い出した?」


「……うん。大体の記憶は」


美幸の頭に入り込む大量の記憶。それは失う以前のものの記憶だ。

幼い頃の正常に成長していったら覚えていないものは勿論記憶になかったり、曖昧なものが多い。

でも確かに思い出されていくものは実の親、妹と過ごした記憶で、懐かしく暖かくそして儚く…素敵な素敵な家庭なのに二度と触れることはできない…気がついたら美幸の目には涙が浮かんでいた。


「………」


決して泣かないと唇を噛んで我慢していると、気付いたカリュードが抱きしめる。


「っ!」


「…泣きたければ泣けば良い。」


「…うっ…うぇぇええ」


心からの優しい声に我慢することなどできず、まるで子供のように美幸は声をあげて泣いた。

他人から説明されて絶望した時よりも、悲しみは深くしばらく涙は止まらなかった。


***


「…ありがとう」


「どういたしまして。」


「それで…その…」


美幸は口籠った。なんて言えばわからないからだ。

カリュードが好きだという気持ちが振り返され、まともに視線を合わせられない。思い出されるのはいつだって笑っている顔。


「っ!!!」


「どうしたんだい?」


「う、ううん。何でもない」


これではまるで今も好きというみたいではないかと、美幸は恥ずかしくなる。

そんな様子を見ていたカリュードだが、ふと真面目な表情をした。


「…ねぇ美幸、思い出したってことは…私のことも入れて良いんだよね?」


「うん」


「ならもう一度言うよ。」


ーー私と結婚して


同じ人から人生3度目のプロポーズ。

そんなの誰が夢見ただろうか。

きっと女性なら迷わずはいというだろうが…美幸も本当ならそう言いたいが複雑な気持ちが邪魔をする。


「…ごめん」


「…っ!流石に、思い出したからってだめだよね…そう、だよね…」


わかっていたよと悲しそうに笑うカリュードに申し訳なくなって、美幸は心の内を全て言うことにする。


「あ、あのね?別に好きじゃないとかそう言うわけじゃないの。むしろ好き、なんだけど…あの、なんていうか…」


口にすれば顔を真っ赤にして弁解する美幸は自分で墓穴を掘っているただのアホの子にしか見えない。

でも馬鹿にせず、真面目にカリュードは続きを待つ。

きっと、自分の納得のいく理由がまっているから。


「…好きだけどそれはなんか幼い頃の気持ちなの。だから改めて今の私で好きになって返事をしたいな、って…」


「…別に私は返事だけもらえればいいのだけれど」


「いや、あの、そうなんだけど!そうなんだけど!!」


納得いかない理由だったため反論が入った。

うーんと美幸は上手い説明がないかと首を捻る。


「いや、いいんだけど…うーーーーーん…」


確かに今も好きではあるからいいのだけれど、それが今後変わることのない恋心なのかと聞かれればはいと言い難いだけなのだ。

しかし、カリュードにも期限という事情がある。

五日後までに結論を出してもらわなければならない。


「…わかった。でも、四日後に返事をもらうでもいい?」


「…なんで?」


今までと違い焦燥感を感じるカリュードに訝しげな表情をしながら美幸は尋ねる。

まるで何かに追われているようだ。


「実は、国の方で五日後に王の引き継ぎをしないといけなくて…王になったら私は国に戻らないといけないから…」


「…なるほど」


予想以上に難しい問題に眉を顰める美幸。

もし自分がOKをいったら王妃となり一生あっちの世界で暮らすことになるだろう。

だが…


「…こっちの生活もあるからね…すぐにはいと言い難い…」


「だよね」


わかっていたというように頷くカリュードは苦しそうに見えた。


「…こっちの世界とあっちの世界って簡単に繋げられるのかな」


「どうだろう。世界を超えて自分の好きなところにワープ、それも誰でもは考えたことがないからわからない…でもそれで美幸がいいよといってくれるのなら絶対できるようにしてみせるよ」


「…できるの?」


「おそらくは」


絶対ではないけれどできるのなら…その問題は考慮しないで、あとは純粋に自分の気持ちの問題だけになる。

だけれど、これが一番問題なように思える。


「…うーん…四日後までには絶対に返事するから、待っててもらっても、いい…?」


「うん勿論」


優しく微笑んでくれたカリュードの笑顔は美幸も胸に深く刺さった。

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