遊ぼう
いつもの空間に着くと、美幸は大きく息を吐いた。
「鬼だけど…今は何も考えたくない…」
その場に座り込んでしまう。
ずっとこうしていたい…と美幸が自暴自棄になっていると、何者かがやってくる。
「美幸、どうしてこんな時間にいるんだい?」
「カイ…?」
顔を上げると、驚いた表情のカリュードが浮かんでいる。
「今は夜なのに…家まで送ろうか?」
「ううん、帰れないの。あと一時間はいなきゃ。」
「何で?」
「聞いたことあるでしょう?『鬼ごっこの少女』。」
「……ごめん、わからない。」
「そう?まあ、今はとにかく帰れないの。」
「帰れないのはわかったけど…何故ここに?」
美幸は言おうか迷った。家族のことを昼間の出来事はまだ引きずっていた。
そんな考えを見透かしたように、カリュードは苦笑する。そしておもむろに美幸の手を取ると、あの星へと飛び出した。
「ちょっ、何するの!?」
抗議の声を美幸が上げると、カリュードは自分の方に美幸を引き寄せた。
「なっ…」
「そんな顔をしないでよ。私には分からないけど、何かあったんだろう?美幸には笑顔でいて欲しい。だからーー遊ぼうよ。」
誰かと重なる。ブレブレで顔が見えない男の子が一瞬だけ見えた。
美幸はどこかで見たことがあった。誰か大事な人。カリュードにとても似ていて、同じように腕を引っ張ってくれて…。
だが、美幸はそれ以上を思い出すことを出来なかった。
その先を思い出そうとすると、すごい頭痛が邪魔をし、どうしても思い出すことができない。
気がついたら美幸は返事をしていた。
「っ…鬼ごっこが終わるまでだよ?」
「ありがとう。じゃあ、私の国を案内しよう。」
「え?」
「そうだ、思い出の場所を巡ろう。美幸が思い出せるように。」
そう言ってカリュードは一直線にあの星へと飛んだ。
「え、国って…あれは星じゃないの!?あと私のってどういう事!?」
「国が一つしかないから、国とも表せるんだ。二つ目の質問だけど…今は答えられる自信がない。だけどーー」
思い出したら分かるよ。
その言葉に、美幸はもどかしさを感じる。少し前までは馬鹿にしていたが、忘れている何かがあると、先程感じることができた。
「…じゃあ、全て思い出したら、隠してる事全部教えてくれる?」
「勿論。だって、私は美幸に全て教えているから。」
ぐんぐんと地形が近づく。美幸はグーグ○アースを思い出した。
そして着いた場所。そこは、遊園地だった。だが、子供のはしゃぐ声が何一つ聞こえない。受付に立っている男性も無表情。
絶句して美幸は言葉を失った。
カリュードが微笑む。
「美幸、遊ぼうか。」