ゲームの始まり
一部分千文字です。
「私と友達になろうよ!」
「俺と?」
ある日異空間で出会った少女と少年は一つの約束を交わした。
しかし少年は今はなる事はできないと言う。がっかりした少女を見ると、少年は再び口を開く。
「ーーーーーー」
少女は嬉しそうに頷く。
「ーーーーー」
こうして二人は別れた。
しかしこの約束が守られる事はなかった。
少女が事故に巻き込まれたと言うのは少年が知ることなかった。
***
「キャハハ!ゲーム開始!アタシから逃げ切れるかなぁ?キャハハ!」
狂ったように笑っているのは小学生低学年程の女の子だ。
しかし滑舌はしっかりしており、目は殺意で燃えている。
あるショッピングモールでは最悪のゲームが始まった。
ゲームの参加者は、現在高校二年生の少女と少年達だ。来年には受験が控えている。
「何やってるの!?知っていたはずなのになんでゲームを始めたの!?」
そう言ったのは羽鷺美幸だ。
元の肌が白い所為か、青ざめている顔はより一層青く感じる。
肩までの髪は少し乱れていた。何故こんなに焦っているのか。理由はこのゲームだ。
「はあ?本当かどうかしらねーし。俺のせいじゃねーよ。」
眉を顰めながら、しかし内心では焦っている男は美幸の同じクラスの橋田木月。
この五人の中で一番足が速い。
彼ははある噂を確かめる為に少女に触れた。
どれだけの運命を変えるのかを知らずに。
「まっ!逃げ切ればいい話だから簡単よ!」
滝奏は長い髪をフサァと払うと、自信満々な笑みを浮かべる。
モデル顔負けの彼女は容姿に見合う、大手企業の娘だ。
「僕だって逃げ切る自身はあるよ!」
小柄な男子は塀大栄樹といい、美幸のクラス一の頭脳を誇る。
「美幸は心配しすぎだ。お前だって小学生のような子に負けるほど遅くはないだろ?」
栄樹に対し大柄な彼は熊田咲夜。
空手などの武術を得意としており、足の速さはそこそこだ。
咲夜の言った通り、美幸は足は早い方だ。
「でもーー最後に鬼になった人は死んじゃうって話だよ!?」
何故彼女は最後にと言ったのか。
誰もが一度は遊んだことのある子供でもできるあのゲーム。
そう、このゲームの内容は普通の鬼ごっこだ。
しかし、最後に鬼になった人は、そこの少女にとって食われるという噂だ。
ただしこのゲームも無差別とはいかない。
大人にはこの少女は見えないのだ。
ゲームの参加条件は中学生である事。そして、少女に触れる事。
触れた途端、ゲームは開始する。
そしてその言葉を証明するように、今開幕した。
少女は挨拶をし終えると、いーち、と数えだす。
おそらく普通のルールと同じく十秒数えたら動き出すのだろう。
美幸達は頰を引攣らせると、エスカレーターで上の階へと上がって行く。
「…っああもう!最後までみんな逃げ切るよ!」
「おう!」
「当然ね。」
「頑張るよ!」
「…ふっ!」
それぞれの返事を確認し、美幸は最上階へと急ぐ。
逃げなければいけない時間は一時間。長すぎるこの時間を、少しでも稼がなくてはいけない。
エレベーターもあるのだが、待っている時間が惜しかった。