わたしの旦那には羽がある
……なんてことを言ったら、まず百パーセント『頭おかしいんじゃないの?』と返されるだろう。
でも、本当なんです。
いわゆる天使の羽が、背中から生えているんです。
わたしにしか見えないみたいです。
でも時々、変な人が寄ってくるのだそうです。
……本当に変な人たちが。
わたしには決して会わせてくれませんが、その人たちは羽が見えるから寄ってくるのだそうです。
……わたしにしか見えないのにね。
それをなんとか説得してお帰りいただいているのだそうです。
わたしはその場に立ち会えませんから、説得の手伝いもできないし、大変そうだなあ、とせめて旦那の好物を食卓に並べるのです。
羽は物理的なものではありません。
でも触れます。
矛盾してますよね?
わたしから触りに行っても触れないのです。
すかすかと手は羽を突き抜けてしまうだけ。
でも。
旦那がわたしの横を通る時には、羽が当たるんです。
羽の先で顔をなでる程度ならいいのですが、いきなり振り向いたりすると、羽の根元がエルボーかましてくれたりして、何度か向こう岸を見たりもしました。
なんか理不尽です。
怒ってみたのですが、旦那は眉尻を下げてごめんと言うだけで、触れるようにもなりません。
エッチの時だけは、その……あってよかったなとは思うのですが。
飛べるわけでもない、触れるわけでもない羽は、今日も旦那の背中にあります。