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 夕方、全ての業務を終えた松井は青葉と別れて帰路に向かう。傍らにはなぜか伊勢の姿もあり、二人になってから空港での出来事からの後日談を聞いていた。


「長岡さんとはやり直されないんですか?」


「冗談にしてもたちが悪いです」


 伊勢は相変わらず思いが顔に出やすく、あからさまに嫌そうな表情を見せている。


「そこまで嫌そうになさらなくても」


「同じ轍を踏むほど暇ではございませんっ」

 

「はいそうですか」


 松井は肩を竦めて彼女を見る。二人の視線がカチリと合い、伊勢は何かを思い出したかのようにそう言えば、と話題を変えてきた。


「この前『何かあれば悠介くんを頼れ』的な事仰ってましたよね? あれどういう意味だったんですか?」


 その問いに松井は肩透かしを食らったような気分になる。


「それ聞いてきますか?」


「だって分からないんですもの」


「本気で仰ってます?」


「冗談で伺いませんよこんな事ぉ」


 伊勢はしゅんとして松井を見る。


「分かるまで宿題です、真剣に考えてください」


 そんな会話をしている間に駅に到着する。時計を見ると発車時刻までさほどの猶予が残されていなかった。二人は慌てて改札を通り、新幹線口まで走って松井だけ停車している新幹線に乗り込む。


「松井さん、必ず良い記事にします」


 伊勢はそう言って右手を差し出した。


「期待してますよ」


 松井も右手を出して彼女の手を握り返すと、それに合わせて発車を報せるアナウンスが流れる。二人はそっと手を離し、松井は奥に入ろうと背を向けたが、再び伊勢に呼び止められて足を止める。


「!」


 ‎けたたましく鳴るベル音にかき消されて彼女の言葉はほとんど聞こえていなかった。それでも掻い摘んで耳に届いた内容に思わず固まってしまう。結局何の返答も出来ぬままドアは無情にピシャリと閉まり、新幹線は定刻通りに発車した。

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