お勉強の時間。
能力発動回です。
ユズキさんの能力を見せて貰ったあと、朝食の再開となった訳ですが、昨日の夜と言い、今朝と言い色々な意味で驚かされてばかりです。
何でもユズキさんはこっちの世界に転移する前は調理師専門学校の学生さんだったそうです。
『それにしても美味しいですね、お店とか出さないんですか?』
『あー…店、なぁ…』
何やら困った様に言葉を濁すユズキさん。
リコリスさんとリオンさんが意地の悪そうな笑みを浮かべています。
どうしたんでしょう。
スノーさん一人だけ我関せずと食事を続けていますが、
『働いてた店で、能力使ってやらかしたんだよ、このコは。』
とレシアさん。
『“やらかした”…って、何したんですか?』
『それに関しては、黙秘権を主張する。』
目を反らすユズキさん。
『さっきのアレを、客の目の前でやっちまったのさ。しかも、その客が貴族の令嬢でね、爆殺したアレが令嬢の顔に飛び散って…。』
それは…多分誰でも軽いトラウマになりますね。まして蝶よ花よと育ったお嬢様にとっては…。
『おい婆さん!何で言うんだよ!!』
『××、×××』
ニヤニヤしながらリオンさんが何やら言ってます。
『うっせぇ!リオン、お前の分の昼飯は無いと思え!』
『××!?××××!!××、××××…..。』
『××、××。』
リコリスさんが苦笑いを浮かべながら三人を宥めますが、ユズキさんは少々ご立腹の様子。
『××、×、×××』
リコリスさんが、こちらに向けて“すまなそう”な苦笑いを浮かべて居ますので、僕も苦笑いで返しておきます。
『いえいえ、こう言う賑やかな食事も悪くないですから。』
『×××』
そしてスノーさんは相変わらず食事を続けてました。
と、言うより僕の皿が無いんですけど…。
良く見るとスノーさんの手元には食べ終わったらしきお皿が何枚か重なってました。
犯人はあなたですか…。
いや、キョトンとした顔されましても。
朝食を食べ終えた後…リコリスさんとスノーさん、リオンさんは何処かに出掛ける様です。
『あれ、何処かに行かれるんですか?』
『ああ、昨日こいつ達が狩った魔獣の査定が終わってる頃だから、冒険者ギルドまで金を受け取りにな。』
冒険者ギルドですか、突如耳にしたファンタジーな言葉に僕の心は少しワクワクしてしまいます。
『興味があるなら、今度連れてってやろうか?けど、今のままじゃ無理だな。そもそも、こっちの言葉わかんねえだろ?』
『そうそう…って事で、坊やはこっち来な!』
レシアさんに呼ばれて着いて行くと。
何冊かの本を渡されました。
『読みな』
『僕、こっちの言葉分からないんですけど…』
『安心しな、そいつは転生者が書いた本さ。ちゃんと日本語の訳が乗ってるから。それとも実地教育が良いかい?』
『…読ませて頂きます。』
暫くの間、日本語訳を見ながら、四苦八苦しつつ読書を続けていると、気付いた事があります。単位や単語、個々の言い回し等、厳密に同じとは言いきれませんが…大半が主語→述語→目的語。何時、何処で、何を、どうする。
と言った様な日本語と似通った文法である事に。
これなら覚える事も少なくて済みそうです。
本を読みながらでも食べられる様に、昼食にサンドイッチを用意してくれるユズキさん。
『おーぅ、あまり根詰め過ぎっと良くねぇぞ?』
どうやら結構な時間が経っていた様です。
と言っても、文法等の日本語との類似性を発見した所で、個々の単語までは覚えられる訳ではないので、時間と読み進んだ頁はあまり比例していないのが現実ですが…。
『嗚呼、もうそんな時間ですか?すみません、頂きます。』
『どうだ…大変だろ?あの婆さんスパルタだからな。』
『はい、正直な所、言葉が分からないとこの先どうしようも無いので、必要な事なんですが….。このパンが“食べると物覚えが凄く良くなるパン”とかなら、話が早いんですけどね。』
『ははっ…こっちにゃそんな便利なモノ出せる青狸は居ねえぞ。でも違いねえわな。』
軽く昼食を済ませて再び読書を再開しますが……
あれ?何だかさっきよりも内容が頭に入ってくる気がします。
あれよあれよと読み進めてしましました。
夕方になって……
『マザーただいま。ユズ兄とシンシアも。』
『帰ったわ…』
『ただいまー…疲れたぁ。ユズ兄ったらら本当にあたしの分の御弁当だけ作ってくんないんだもん。』
あれ?彼女達の言ってる事が解りますよ?
本人は未だ気付いてません。