女の子にされたけど、能力を貰いました。
二話です
『此処、何処だろ』
周りに何も無い草原で、一糸纏わぬ“少女”が不思議そうに辺りを見回す…
すると突如
『やぁ、調子はどうだい?』
『誰?ってかぬいぐるみが喋った!?』
『やだなぁ、さっきも逢ったじゃん、ボクだよボク、“カ、ミ、サ、マ”。って言ってもこのコを依り代にして君と会話をしてる訳だから、本体はちゃんと別にあるんだけどね。』
『そのカミサマが何の様ですか?』
『いやー、こっちの手違いでほぼ同じ姿で前居た世界からこっちに来て貰う手筈だったのに、身体を用意する担当が君の性別を間違えたみたいで、“女の子”になっちゃったんだよね、君。』
『なんか不穏な一言が聞こえたんですが、幻聴か何かですか?』
『ううん、違うよ、確かめてみそ?』
そう言われて改めて自分の身体を見てみると…
やや小ぶり、もとい申し訳程度ではあるが男であれば無い筈の女性の証たる脂肪の塊、乳房。
代わりに股間に手を触れてみても感触すらない、嫌が応にも居ない事を理解させられる、生まれてから死ぬまで苦楽を共にした相棒、男であった証。
『無いんですけど、僕のアレが。しかも全裸だし。』
『うん、何て言うか…ゴメンね。お詫びと言ってはなんだけど、君にちょっとした能力をあげようかな。って…』
『能力とか要らないから元に戻してくれます?あと服も。』
若干ひきつりながらカミサマに応えると
『それに関してもお詫びしないとね、本当に申し訳ない事をしたよ。あ、やらかした担当は懲戒免職に処したから安心してね。』
『いや、まったくもって安心とか出来ないんですが。』
『それはそうと君… 君だったっけ?せっかく“あげる”って言ってるんだから、貰っといた方が良いと思うよ。何て言ってもこの世界には君が元居た世界と違って…君らが言う所の“魔法”とか“モンスター”とかが存在するんだから。君なんかが丸腰で言ったら目的を果たす前に即オダブツさ。』
神とは思えないフランクな態度で謝罪の意を示す目の前の猫のぬいぐるみを、
腹いせとばかりにとりあえず一発殴っておく
『痛っ…くはないけど、君の気持ちも分かるからね。けど、こればかりは幾ら僕でも無理なんだ。』
溜め息を吐き座り込むと
『はあ、分かりました。なってしまったモノは仕方がありません。』
『不本意そうだけど、納得はしてくれたみたいだね。それじゃ今から能力を与えるから、目を閉じててね。良いって言うまで開けちゃ駄目だよ。神が人に何かを与える時の光は、至近距離で直視すると失明しちゃうからね。』
目を閉じたまましばらくじっとしていると、
『もう開けて良いよ。』
言われた通りに目を開く
『何かが変わった感じはしないんですが。』
『…と思うでしょ?試しに“ステータスオープン”って唱えてみて。』
言われた通りに唱えてみる
『ステータスオープン!』
目の前の空間に突如現れる文字の羅列
名前-シンシア
種族-人間
性別-女
年齢-15
装備-無し
戦闘力-5
魔力量-9999
能力-付与術(“格”、“曰”、“謂” )
範囲定-“格”、“曰”、“謂”共に知覚可能域
対象-万物、万象
能力-逆境適応
『カミサマ、この“シンシア”って何ですか?』
『嗚呼、それ?こっちでの君の名前、元の名前だと色々不便かな。って、元の名を文字ってみたよ。もしかしてお気に召さなかった?他にパッと思い付くのなんて“ああああ”か“もよもと”位だよ?』
『“シンシア”で良いです。と言うか“シンシア”が良いです!』
『そう?気に入って貰えて良かったよ。』
『それから、この“付与術”って言うのは?』
『そのままの意味だよ、武器や道具なんかに特性を持たせる能力の事さ。ちなみに与えるモノの大きさや程度によって消費魔力は違うからね、君の場合は、他の能力も…なるほどね、使い方次第ではなかなか面白い事が出来るかもね。それじゃ僕はそろそろ戻るよ、越権行為もあまり良くないからね。じゃね!』
『分かりました、お手数掛けますね。………って、ちょっ!?服くらい置いてっt…居ないし。』
こうして僕の“シンシア”としての新たな人生が幕を開けました。
能力より大事なモノはなんでしょうか。