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増殖する殺意・1


がらくたの(ラビッシュ)曲芸団(サーカス)』の本社が存在する都市の周辺なだらかな丘が広がっている。都市へ延びた街道から離れた所にはこじんまりとした林が至る所に点在し、更に木々の下にでは旧時代の名残であり今では鉄塊としてしか意味を為さない大小様々な兵器群が根に絡まり埋もれるていた。

 それは特段珍しい事ではない。要らなくなったものが廃棄され続けているというだけの事。林の中に木の枝や岩があろうと誰も気にしない事と変わりない、既に誰にでも当たり前となっている林という空間の、当たり前の光景。

 

 そんな林の中の一つ。その奥で、




「フルハウス! ハハ、俺の勝ちだな!」

「くそ、またか」

「…………畜生」




 三人の男達の声が響いていた。

 その林の奥にはこれも旧時代の名残である兵器倉庫が木々に周囲を囲まれ埋もれていたが、その大きさゆえ建築物として生きながらえていた。

 分厚い鉄製の壁はほぼすべてが茶色く変質していたが倒れる雰囲気は微塵もない。全長は約五十メートルはあろうか。内部の奥では役立たずの車や戦車といった刀剣の材料がグチャグチャに折り重なり動物の寝床にでもなりそうだが、現状この建物を占領するのはまだ人間達だった。


 錆付いた機材が無造作に放置されたままのただっ広い倉庫の正面ゲート、開け放たれたそこでは三人の男が錆びた機材を椅子と机代わりにしトランプに興じていた。

 机代わりの機材の上にトランプ以外にも酒と煙草のように丸めた大麻が置かれ、机から少し離れた焚火では馬肉が焼かれており、パッと見ればアウトドアを楽しんでいるように見えるが、それを囲む男達の出で立ちがそれを完全に否定していた。

 三人の服装はそれも仕様は違うもの特殊部隊のような迷彩服だ。

 だが、その腰には剣や鉤爪といった原始的な得物を各々装備し、一目で傭兵などといった『争い』を生業にする者たちであると分かる。


「いやぁ今日はついてやがるぜ。こりゃ夜は都市まで女でも買いにいくかな」


 二人から賭け金を受け取った短髪の白人の男は得意げに言う。迷彩服の胸や腹には合金が埋め込まれ白兵戦での戦いを見据えているのは明らかだった。二十代前半といった風貌で三人の中では最も若く見える。

 得意げに残りの二人に笑い続けるその様子に金を渡した二人の黒人は不機嫌そうに顔を見合わせる。

 二人の黒人の内、片方は二メートルありそうな大男。もう一人は一・四メートルもないだろうという小男といった極端な身長差だった。


「調子に乗るなエドガー。すぐ取り返す。サタジットもこのままじゃ終わらんだろう」

「……当たり前だ。ジャカルジット」


 ジャカルジットと呼ばれた大男は灰色の迷彩服の下から筋肉が服を破りかねないのではと思わせる程に練られており、また腰には迷彩服の上から足首までの腰布を巻いている。そして小男のサタジットは口元を黒いターバン布のようなもので隠し、両腰には三本爪の鉤爪が怪しく光っていた。


「……次で、取り戻す」

「ハハハ何回でもお相手するぜ凸凹野郎ども! このエドガー様に勝てると思うならな」


 小さい声でそう呟くサタジットに対し、エドガーはトランプの束をシャッフルしながら挑発する。負けの怒りを隠そうともしない大男ジャカルジットと小男サタジットは二人共不機嫌そうにエドガーを睨んだ。相当負けが込んでいるらしい。


 三人はそのままゲームを続けようとするが、



『――――おいお前ら、ちょいとゲームは終わりだ』



 そこに唐突に声がかけられる。

 闖入者の声に、三人は声のした木々の方へと顔を向けた。



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