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極東堕ち・4


そんなわけでアーナ、菊千代、ウラグナの三人は食事に向かった。


―――のだが、



「貴様、それは何のつもりだ?」

「んぁあ? 何だお前ら?」



 その途中、菊千代は三人の男とにらみ合っていた。


 男たちの装備は黒の軍服を統一されている。

 黒の兜には金色の竜が描かれており彼らが同一の組織である事を誇示しているようだった。

 腰にはそれぞれ直剣や手斧と各々の得物は異なっているが、菊千代も含めその得物には手は伸びていない。

 つまりまだ、空気は剣呑でも互いに明確な敵性を表してはいない段階だった。

 もちろん周囲にはそんな差異は分からない。

 ウラグナとアーナを残し通りのど真ん中でにらみ合う男たちの剣呑さに通行人は急いで4人から離れていく。


「ちょ、ちょっと菊千代!」

「止めんなウラグナ、絡んできたのはこいつらだ」

「絡んだだと? 貴様、自分の立場が分かっていないのか」

「お前らこその服装じゃ都市警備隊とは違うだろ。人に注意したいならまず名乗って欲しいもんだな」

「ふん、どうやら物も知らん馬鹿のようだな」


 三人がわざとらしく笑ってみせる。


 男たちからのあからさまな侮蔑の態度にほんの僅か、菊千代の腰がほんの僅かだが下がるのをウラグナだけが気付き、静かに菊千代の後ろに走り寄る。

「菊千代、その人達は『グリンメルス』っていう都市の正規部隊よ」


 小声で伝えるウラグナ。対し菊千代は先程と同じ声量のまま返す。


「都市の? 警備隊以外にも正規の武装集団なんてあったのか」

「あんな一般兵の雑魚共と一緒になどするな貴様ッ」

「我々は独立部隊だ。都市の外敵の迎撃。敵性勢力の無力化が目的とされており、そしてその行使を行う権限を与えられている」


 左右のグリンメルスはそう言うと、菊千代の正面の一人が手を動かす。

 男は真っ直ぐ、菊千代の左肩を、その肩口から見える長剣を指差した。


「つまり我々は都市警備隊などと違い、この都市への危険を速やかに解決しなければならない。貴様、何の権限をもって都市内で武装している」

「おいおい、武器持ってるやつなんて珍しくもねえだろ。都市間移動している傭兵団だって普通に、」

「警戒令が出されているこの都市で帯剣する意味も分からんようだな」

「警戒令だぁ?」


 グリンメルス達がにやりと笑う。が、彼らが次の行動に出る前にウラグナが菊千代の前に出た。


「もちろん、知っていますよ。警戒令については都市警備隊から直接伺っています」

「直接だと?」


 怪訝な表情になる男たち。ウラグナは男たちのそこから口を開く暇を与えずに言う。


「私たちはがらくたの(ラビッシュ)曲芸団(サーカス)。この都市の人材派遣組織です」

「サーカス団? 人材派遣組織だと?」

「そうです。私たちは都市警備隊から都市治安維持への協力依頼を継続して頂いています。それにより都市警備隊総隊長のゲンマル・ダクトから都市の協力組織として武装の許可も頂いている」

「ゲンマルからだと……」


 三人がにが虫を噛みつぶしたように顔を歪める。

 対しウラグナの後ろでアーナが菊千代に小さい声で、


「協力関係って、そうなのか?」

「いやウラグナがゲンマルの警備隊と手伝い行っているのは知ってたが、武装許可なんてあるんだな……」


 二人がぼそぼそしゃべり合うが、ウラグナは無視して進める。

 鉄のワンピースの首元から金のメダルの付いたネックレスを引きだし、グリンメルスに向ける。メダルには曲剣と直剣が交わった彫り込みが描かれていた


「……都市から協力組織に渡されるネックレスか」

「御理解いただけましたか?」

「ちっ、」

 

 露骨なまでに忌々しそうにグリンメルスが背を向ける。


「協力組織だというなら分かるようにしておけッ。分かりづらくて迷惑だ」


 そう吐き捨て男たちはさっさと離れていった。 

 男たちが立ち去り、アーナはそこで口を開く。


「感じの悪い者たちだったな」

「あんなのがいるなんざ知らなかったぞ」

「二人ともこの都市で生活してて何で正規部隊を把握してないのよ……」


 疲れたとばかりにウラグナは息を吐く。


「グリンメルスは都市警備隊とは違う指揮系統の独立組織。そのせいか元々横暴な面もあったんだけど……」

「あん? どうしたウラグナ?」

「とりあえず屋台通りまで行きましょう。そこで続きは話しましょ」

「賛成ね、私も喉乾いたから果実酒飲みたくなってきたわ」


「水を飲めお前は……」



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