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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

同一世界

あるチンピラの終わりと始まり

本当は姉を壊された復讐のため闇に堕ちた高校生に倒されるラスボスの設定でしたが長編を書く能力がなかったので短編にしておきました

 怖い

 どういうことだ

 何でこんなことになってるんだ

 俺達はここまでされるほどのことしたっていうのか




 躾けは厳しくしないとな。甘やかすとつけあがる。

 兄貴がそう言ったのは目の前のここ2か月の間躾けていた女を最初に暴行で恐怖を植え付けた時に言った言葉だったか。

 あんまりやりすぎて穴が使えなくならないようにしてくださいよ、と仲間と笑いながら言ったのを覚えている。


 綺麗な女や少し痛めつければ金をむしれそうな奴をやったり暴力を振るったりして楽しく過ごしていた俺達はとても充実していたと思う。


 目の前で壊れきった女もそうだ。

 ようやく心が折れて従順な肉穴兼金稼ぎの道具になったところだった。


 二つ隣の進学校の2年で生徒会長をやっていたという女を薬漬けにして脅したのを覚えている。家族の生活を守りたいなら黙っているように言ったんだった。

 薬物で逮捕されれば家族の面目はまるつぶれで親の仕事もクビになる可能性は高い。そんな風に守るものがあるやつほど公になるのを恐れてこちらに牙を向けられないのだ。


 順調にいっていた。母親も美人だったので同じように躾け、最後に弟を連れてきて汚れた自分の姿を見せれば大体は発狂して壊れるのだ。その時に弟の手足を切り落とせば自分のせいだと泣き叫ぶ。実際壊れた。

 そしていつものように使える穴と稼ぎ道具が増える。それで終わるはずだった。








「今までお前は楽しかったか。俺は楽しくなかったな。後自分の鈍さに嫌になる。まあ高校に姉貴が入ってからはあんまり話す機会がなかったのがまずかったな。こうなる前に気付くべきだった」


 心臓を抉り抜かれた死体だらけの中、何でもないような顔をして最後に残ってしまった俺に向かって化け物は軽い口調で言った。


「ひ、ひぃ」

「命乞いはやめておけ。生かす気はない上にもうお前は死んでいる。一時的に生きる屍として話せるようにしているだけだ。なるほど、兄が一人に弟が一人。ああ、そういえば弟のほうはもう殺したか。兄弟そろって屑だなぁ。まあ人のことは言えないが。で両親ともに存命。よし、縁切りと」


 胸を手で貫かれる。やめてくれと言いたいのに声が出ない。掠れ声しか出ない。親も兄も一般人で関係ないから許してくれと乞うこともできない。おかしいだろ。家族ごと皆殺しとか俺達でもやらねえぞ。頭がおかしいだろ。ってか何だよ。俺らを媒体に親族や親しい友人まで殺せるとかどんな反則だよ。実際は殺されてないんだよな? 死んでないんだよな? そうだと言えよ。そんなことあるわけがない。死亡連絡ばっかりかかってきたって泣き叫んでいた奴らがいたがあれは偶然だよな?


「さっきの奴らもそうだったがどうしてそんな自分は理不尽な可哀想な目にあった被害者なんです、みたいな顔をしてるのか分からんな。お前は人を地獄に落として金儲けと女を使ってたんだろ? 中にはその家族も一緒に地獄に落としていたわけだ。だからこうなった。それだけの話だろ?」

「家族は関係ないだろうがよ! 俺の親も兄貴も一般人で」

「うちのお袋もそうだったはずだが? ついでに親父の金も持ち出させたと聞いたが? 関係ない家族を地獄に落とした阿呆が俺の目の前にいるんだが?」


 同じような言葉に生かしてやってるだろうが! と前に言った仲間はそうか、という言葉の後仲の良かった堅気の友人まで殺された。最後は泣き叫びながら俺がごみだった。もう俺の知り合いを殺さないでくれと泣き叫んだあと死んだ。


 兄貴は絶対に地獄に落としてやると言って死んだあと、死体から人型黒い靄らしきものが浮かび上がったが目の前の化け物に問答無用で浄化されてあの世にたたき送られた。涙を流しながら悔しそうに消えていったのを見て殺意が浮かび、そしてこちらに視線を向けられすぐに恐怖に塗りつぶされた。



「一般人と違ってお前らは人を破滅に追いやる頻度が何十倍も多かったんだ。お前らに歯向かおうとした奴らもいたはずだ。まあここまで生きていたってことは返り討ちにしたってことなんだろうが」


 そうだ。中には警察に届けるといったやつや武器を持って殴り込みに来た奴もいた。家族を見せしめに殺してやった。心を折った。臓器を金に換えた。


「まあつまりはお前らは馬鹿だったということだよ。お前らは死亡率の高い選択肢ばっかり選んできてとうとう引き当てただけなんだよ」





「大外れをな」



 善行を積めってのは単にこうやって恨みを買う機会を減らして外れを引く機会を減らすべきっていう至極当然の理論でしかないってことだな。


 そんな言葉を最後に俺は意識を失った。












「あ、あの外れさん。ちょっと最近人壊しすぎじゃないですかね? ここ1か月で百人以上も」

「ん? じゃあ身代わりにお前が死んでみるか? もちろんお前の家族もな!」

「あ、いえ! すいませんでした! 生意気なこと言ってすいませんでした!」

「そうか。まあ許してやろう。お前はな」

「は、はは」

「お前はな」

「え、ちょっと」



 あの後、俺は死体だらけの中、一人だけ目を覚ました。あいつは俺はもう死んでいるといった。実際心臓は動いていなかったのも覚えている。おそらくを俺を生かすつもりはなかっただろう。つまり俺がこうして動いているのはあいつにとって予想外の事態だったはずだ。


 人でないものになった感覚はあった。この世界で少数の化け物。人の理を外れた者とかいう意味で理外者とかいうやつになった俺はまず、俺たちの後援をしていた葛乃葉会の末端がいるはずの事務所に向かった。事情を話したらすぐに報復を約束してくれた。



 あの化け物の家族は全員死んでいた。


 ……俺達じゃない。報復にさらされないように自分から家族を殺したのだ。まあ三人とも壊れかけだったがそれでも殺すか。普通じゃない、と裏にいる葛乃葉会の奴も引いていた。




 葛乃葉会とその親組織丸ごと親をはじめとした家族含めて死んだのは半年後の事だった。

 俺は死ななかった。死ねなかった。もう死者だったからか。


 ただ一人だけ呆然としながら座り込んでいたのを覚えている。死者は数百万単位だったという話だ。堅気も多かったはずなのに自分の復讐相手の身内なら皆殺し、というその姿勢ははっきり言わなくても狂人だった。



 災厄の七と呼ばれたそいつはそれっきり姿を消した。どこかに消えうせた六災厄にならぶ化け物と認められたそいつはもうやることはないとばかりにそれ以降いくら探しても見つかることはなかった。六災厄もそうだがどうしてあいつらやることやったら姿をくらますんだ。討伐でもされたのだろうか?





 俺は死ねなかった。仲間も親も兄弟もすべてを失って復讐もできず、ただ生き延びることしかできなかった。

 まあ間違いなくあいつの言う通りだ。

 俺達は屑だった。人を何人も破滅させて楽しんでいた。そんなことをしていたから引くべきではなかったババを、大外れを引いて自分たちのほうが破滅してしまったのだ。

 悪行はしてはならない。ろくでもないことをしているものにはろくでもないものが集まってくる。そのろくでもないもの中にあの化け物という大外れもいただけだ。


 俺は死ねなかった。

 そして自分で死ぬことができなかった。

 自分の身体は傷つけるはしから再生し、耐性を得て頑丈になっていく。腕力が飛躍的に上がった。敏捷性も上がった。人の頭くらいなら握りつぶすのは容易になった。俺を傷つけた奴が呪いで死ぬようになった。


 俺はもう人生なんてどうでもよくなったというのに自分では死ねなくなった。

 自殺? 試みたさ。結果が灰になっても蘇るこの身体さ。

 海に沈め? 火山に身を投げろ? 宇宙に行け?

 

 宇宙はやってないが前二つはやったな。灰になっても蘇るってのはそこからだよ。溶岩に沈んでどうやって浮いてきたのかはさっぱりだ。バミューダトライアングルで身を投げた時も死ねなくて海底から戻ってくるのに苦労したのを覚えている。宇宙に行こうがたぶん適応しちまうんだろうと予想するには十分な結果だろ。


 ……はっ。それじゃあ死ねないってことだな。








 だから俺は今こうしている。


「やめてください! 俺は死んでいいですから俺の家族を殺すのはやめてください!」

「そうか、なら俺を殺すしかないな。出来たら死なない。簡単な理屈だろ?」


 目の前の壊れた女に哀れみが沸いたのか余計なことを言った部下は泣き叫びながら許しを乞うてきた。

 なら俺を殺せばいい。それをすれば全ては解決する。俺も死ねて満足でこいつも家族が無事で満足だ。お互い得しかないじゃないか?


「外れさんに何歯向かってんだこいつ」

「おい、大外れさんの邪魔はするなよ。大外れさんは自分の手でやりたいんだからな」

「お、お願いします。ほんとに俺はどうなってもいいので家族は」


 笑顔を浮かべて俺は言った。



「駄目だ」



 最近は俺を殺そうとする敵は少なくなってきた。部下も従順で歯向かう様子は殆どない。偶にこんな風に意見する奴はいるがそれだけだ。


 それじゃ困るんだよな。俺を殺してもらわないと困る。もう既にこの世に未練なんて何もないのだ。だから死にたいのだ。

 だというのに俺はこんなどうでもいい身体になってしまった。俺の体質を軍事転用しようとしている科学者に身体の研究をさせているがうまくはいっていない。体質を解明して技術を確立した後は俺を殺す気満々そうなやつを雇ってやったというのに思ったより無能だったのか3年も経っているのにまともな成果もないと来た。国ぐるみで隠ぺいされていたが弟と息子がいるという事実は突き止めている。殺してやれば死にもの狂いになってくれるだろうか。




「はぁ……」


 うまくいかないものだ。


 俺にとっての大外れを引く日はいつ頃やってくるのか。

 こうやって悲劇を量産していたら、いつかきっとあの化け物みたいな大外れを引くはずだ。


 お前らに害をまき散らしかねない災厄はここにいるぞ。

 向かって来い。殺意をまき散らして来い。

 俺は俺が殺されるまで、やる気になるようにお前らにとっての災厄(おおはずれ)で居続けてやるぞ。



魔王大外れ

1000万単位で人に害をなしうる化け物で八番目。第八災厄。本名は出てこない。元は凌辱調教物で出てくるようなヤクザがバックにいる下種集団の舎弟ポジションのチンピラ。女を食い物にし、金まで稼がせていた正真正銘の屑。褒められたところはないので同情する必要もない。とはいえ巻き込まれて死んだ家族には死んだあと土下座しにいかないと、くらいは思っている。


名前の由来はことあるごとに大外れ大外れ連呼しているところから。頭をつぶされようが極一部だけしか身体が残っていなかったとしても再生してしまうほど再生能力が高いうえ攻撃者に呪いを振りまく。しかも攻撃に耐性ができて攻撃がどんどん効かなくなっていく。


どちらかというと殺すことより精神を極限まで追い詰めることであの化け物みたいな狂人が生まれることを期待している。女を壊すのもその一環。だから大体身内に立ち会わせることが多い

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