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002話 失踪?

一話から後が全く続かず、誠に申し訳なく思っております。

不定期ではありますが、ボチボチと再開させて頂きたいと考えております。


 光の道を進む風太郎の精神は、これまでと違った感覚を感じながら辺りを見回していた。

 「なんか・・・、思っていたより進むのが遅い気がするんやけど。」

 初めの勢いこそ良かったものの、暫くすると、当初の勢いとはかけ離れる程、その速度は低下していったのであった。

 「まあ、遅くなったとは言え進むべき道は見えているし・・・ええか。」

 持ち前のお気軽さをもって兎に角前に進んでいる風太郎ではあったが、その心中に不安が無いと言えば嘘であると言えよう。

 なぜなら、時折、馴染みのある声や、そうで無い声で語りかけられる感覚に襲われたからであった。

 そのような感覚はこれまでに経験した事が無かった訳で・・・

 風太郎は、その原因と言うか状況とと言うかを釈然としないまま受け入れつつ進んで行った。


その頃・・・

 フレアが異世界から元の世界へと去ってから約一月、異世界にある遺跡都市、バ・ヴェールにおいて交代で風太郎の看護に当たっている婚約者達の姿があった。


 関係者達によるこれまでの献身的な看護の成果か、見た目には回復の兆しが見えてきた風太郎の身体ではあったが、生命の維持はされているものの、未だ意識が戻らず自室のベッドの上に横たわっていた。


 「風太郎さん、いつ目覚めてくれるのかしら・・・」

 婚約者の一人であり、オネアルト王国 王女のティアは、風太郎の身体の濡れた布で優しく拭きながら未だ意識が戻らない風太郎を心配していた。


 あの日以降。そう、特異点の暴走現象の顛末をデリク国王に状況報告してからのティアは多忙を極めた。


 「領主が不在では町の発展は望めん。代理としてその方がバ・ヴェール開拓の指揮を執れ」

 デリク国王はそのようにティアに指示を伝えると、主だった開拓メンバーにその旨を下知し、日頃は町作りに奔走しており、その合間を見つけては風太郎の看病に当たっていた為であった。


 カチャ・・・


 「貴女自身も忙しいのに・・・身体壊さないでね」

 バ・ヴェールの塔を管理しているエヴァが飲み物を持って入ってきた。

 エヴァは、テーブルに飲み物の入ったコップを置くと、イスの一つに座り、ティアの作業が終わるのを待った。


 一緒に手伝っても良かったのだが、ティアから「私にやらせて・・・」と念を押されていたので、あえて静観する事にしていた。

 暫くすると、一通りの着替えまで終わらせたティアは、満足そうにテーブルの側まで来ると空いているイスに座り、コップを手に取った。

 「有り難う。頂くわね・・・」

 中身は、以前風太郎が作ったスポーツドリンク風の飲み物をアレンジした物でスタミナドリンクとして愛飲しているクリーム色の液体であった。

 ティアはコクリと一口飲み込むと、コップを手に持ったまま

 「他の皆の助けもあるから大丈夫よ・・・私一人じゃ無いって、これほど心強い事は無いわね」

 笑顔で答えると風太郎のベッドの方へ顔を向けた。


 他の婚約者達、イシュテルとマーヴェルは、現在、それぞれの実家のある領地へと赴き、領主と細かな調整を行っている為、バ・ヴェールには居ない。

 調整と言っても、公式では無いため、どちらかというと、帰省を口実に領主である親に【おねだり】をしに行ったと言う表現の方が適している位、内々の交渉をしている訳で・・・

 「有能な人材は一人でも多い方が良いですからね・・・」

 ティアの方針に沿って、大凡半月に一回のペースで交渉の為、公募とは別口で人材集めに各地に派遣されている二人もそれなりに多忙であった。


 「明日には二人とも戻ってくるし、打合せを兼ねて皆でお土産を楽しみましょう。」

 ティアが嬉しそうに提案をすると、エヴァは頷いた。


***


 翌朝、バ・ヴェールの塔よりマイナダビゥに近い新開拓街、【バ・ヴェールゲート】管理棟内の一室で定例会議は行われた。

 そこにはイシュテル、マーヴェルの二人も戻っており、ティアは現状の確認と今後の動きについて、各担当者と調整を済ませていった。

 会議は昼食前には終了し、ティア、イシュテル、マーヴェルは、場所をバ・ヴェールの塔にある居宅に移し、昼食を兼ねて土産の茶菓子を楽しむことにした。

 広めに造られているダイニングルームのテーブルを囲み、エヴァとイヴも交えて5人・・・

 と言っても、エヴァとイヴは機人ボディーを使用している精霊のようなもので、食事の必要はほとんど無く、適当に給仕をしながら会話を楽しんでいた。


 「あらためて、二人ともお疲れ様でした。」

 ティアは二人の婚約者に笑顔で声を掛けた。

 「それはお互い様ですから気にしないでね」

 イシュテルが笑顔倍返しの如く和やかにティアに微笑み返した。

 「うむ、私の働きなど貴方達に比べたら大したことは無い」

 マーヴェルは風太郎が倒れてからこちら、少しずつ以前の堅く余所余所しい態度に戻りつつあったが、「風太郎の婚約者」という点が辛うじてそこを踏みとどまらせている様子であった。


 「そんなことは無いわよ~。マーヴェルも立派に風太郎さんのお役に立っているわよ。」

 ティアが爽やかな笑顔をマーヴェルに向けると、

 マーヴェルは、ティアのその一言にほんのり顔を赤く染め、頬に両手をあてながらティアを見た。

 「そ、そうかな・・・なら良いのだが」

 そんな様子を眺めながら、イシュテルが風太郎の部屋の方に視線を送り呟いた。

 「きっと風太郎さんも喜んでいるわよ。・・・きっとね。」

 その目は、涙を溜めながら虚ろに開かれており、先ほどまでの楽しい雰囲気から一気に静まりかえった空間へと変化してしまった。

 「あ・・・。ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃ無かったんだけど・・・ウウ・・・」

 場の雰囲気を壊してしまった事に気がついたイシュテルは、慌てて笑顔を取り繕おうとしたのだが、それがかえって逆効果となり、自身の表情はグチャグチャに泣き崩れてしまったのであった。

 「どうして・・・?意識が戻らないの?私達に出来る事は何も無いの?・・・ウウウ・・・」

 止まらない感情を誰にぶつけるでなく、声を荒げたイシュテルはそのまま風太郎の部屋に向かってフラフラと歩いて行った。


 他の女性達も、静かに後に続いて風太郎の部屋へと向かいながら、ある者は下を向き、ある者は唇を噛み締め、イシュテルと同じように思いを高ぶらせているようであった。

 これまで自分達に出来る事はやって来たつもりであるだけに、その無力感は表現出来なかった。


 カチャリ・・・


 風太郎の部屋の扉を開け中に入った女性達は、ベッドの上で横たわっている風太郎の様子を眺めた。

 「本当に・・・」

 ティアがぼそりと呟いた瞬間、風太郎の身体が淡く光り出したのであった。


 「え?風太郎さん?」

 驚いたティアは、風太郎に呼びかけたのだが、その呼びかけへの反応は全く無く、ただ、身体が光っているだけであった。

 「ねえ・・・どうなっているの?」

 イシュテルが状況を確認しようと問いを発するが、誰も答えを持ち合わせて居らず、只全員がその様子を眺めるのみの状況が五分程続いた・・・

 

 「・・メ・・・迎えに・・・」

 か細く、瞬間的な発声であったが、風太郎の口から言葉が発せられた。


 「風太郎さん?気がついたの?」

 ティアが口元に耳を近づけ、確認するもののピクリとも反応を示す事は無かった。

 「そんな・・・確かに何か声を出したのに・・・」

 

 ティアは、必死な形相で風太郎の身体を激しく揺すりながら反応を探ろうとしたのだが、他の女性達に止められ、初めて自分が正気を失いかけていたことを諭された。

 「あ・・・私としたことが・・・」

 「ティアも取り乱すのね・・・」

 イヴが静かに感想を漏らすと、その場の全員が苦笑いではあったがクスリと笑みをもらした。


 「けど、何?何て言ってたの?」

 エヴァがティアに問うと、ティアは首を横に振りながら答えた。

 「咄嗟の事だったので、ハッキリと聞き取れなかった。ただ、誰かを迎えに行く感じには聞こえたんだけど・・・」

 そう言いながら全員の視線が風太郎に向けられているさなか、新たな変化が起こった。


 「なっ!!!身体が・・・っ!!」

 マーヴェルが叫んだ・・・


 風太郎の身体は、淡い発光の状態から徐々に消えて行くように透けて見えるのであった。

 「嫌!嫌よっ!!消えないで・・・何故?」

 ティアが風太郎の身体にしがみつく。

 他の女性達も同じように風太郎の身体にしがみついたのだが・・・・


 だが・・・


 「そんな・・・ああ・・・」

 「え?」

 「なにが・・?」

 甲斐無く、風太郎の身体は、女性達の前からその存在を消してしまったのであった。

 

 

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