第七話
とりあえず、俺達は謎の人体模型を無視して進むことにした。
朝陽はさっきから怯えて俺の服の裾を掴んでいる。朝陽が可愛いすぎて理性が飛びそうだ。
ただ、朝陽を怖がらせる奴は幽霊だろうと殴らないと気が済まないが。
「あ、また人体模型」
泉の言う通り、二階に上がる階段の前にまた人体模型があった。
「さっきのが移動したんですかね?」
「いやいや、水瀬。さすがにそれはないだろ。さっきのとは別物だ」
まぁ、別物だったら別物で何で、こんな場所にあるのか謎でしょうがないが。
「あ、三体目」
二階に上がったところで三体目の人体模型を発見した。しかも何故か右腕がない。
もう意味が分からない。普通、こういう場合は人体模型が追い掛けてくるとかじゃないのか?
「これは別に人体模型が動いているわけじゃないな」
「ん? どういうだ、迅」
まぁ、俺も別に人体模型が動いているとか信じているわけじゃないが。
でも、だったら誰かが動かしたことになる。
「人の気配がするからだ」
人の気配? そんなもの俺には感じないが。
ガタッ!
どこかから何か物音が聞こえてきた。迅の言った通りか。
おそらく階段を登ったところから二つ目の教室の家庭科室からだ。
ん?家庭科室?何か嫌な予感がするんだが。
「おい、そこに犯人がいるのか!」
迅が迷わず家庭科室のドアを開けて中に入った。
「うわっ!」
あの迅が驚いた声を出すとは。俺の嫌な予感が当たったのか。
とりあえず俺達も家庭科室の中を見ることにした。
「げっ!」
中には全身が血塗れの女子生徒がいた。しかも心臓には包丁が刺さっており、左手には包丁を持っている。
ヤバい! これは怖い! 本物の幽霊か!
「ここは俺に任せてお前達は逃げろ!」
迅が血塗れの女子生徒に敵対して俺達を逃がそうする。
この状況でも迷わない迅が今回だけは格好よく見えた。ただ、妙に嬉しそうな顔をしているのが気になるが。
「お前の犠牲は無駄にしない!」
「迅くんのことは忘れないわ! 十分ほど!」
俺達は全力で家庭科室から飛び出す。アレには関わってはいけない。
後ろからは激しい戦闘の音が聞こえる。もしかして虫取り網と包丁で戦っているのか?
て言うか、急いでいたせいで一階に下りる階段とは逆方向に走ってしまっている。
「ちょっと逆方向じゃない! 深夜くんのせいよ!」
「いやいや、泉のせいだろ! 人のせいにするとは最低だな!」
走りながら言い争う俺と泉。にしても人のせいにするとは親から、どんな教育を受けているんだ。
「そんなことよりも、まずは外に出て宿直の先生を呼びましょう!」
朝陽が焦りながらも冷静に判断する。やっぱり俺の妹は最高だ。
「いえ、それは賛成できないわ」
「何でですか?」
「だって、そんなことをしたら面倒臭いことになるじゃない。それに迅くんならいなくなっても不思議がられないわ」
「お前、本当に最低だな!」
まさか、こんな状況で自分のことしか考えられないとは。人間失格だ。
でも、最低であることを除いたら泉の言うことは正しい。迅がいなくなっても誰も不思議がらないだろう。元々、あまり学校に来ず町で遊び回っているような奴なんだから。
「ハァハァ、そんなことりよりも私を背負ってください」
水瀬がすでに肩で息をしている。疲れるの早いな。
「よし、泉」
「OK」
泉が水瀬をムリヤリ背負うとする。何か犯罪現場に見えるな。
「ちょ、やめてください! 背負うのは深夜先輩で良いです」
「花菜ちゃんも異性に胸を当てるのは嫌でしょ? でも、同性なら恥ずかしくない」
普通なら、そうかもしれないがお前は例外だ。むしろ、異性よりも危険だ。
「こうなったら私が自作した深夜先輩と風間先輩のBL小説を学校中にばらまきます!」
何て悪質な脅しをするんだ。普通は俺に暴行された、みたいな偽情報をばらまくのが定番だろ。いや、それも困るけど。
「仕方ない!」
俺は水瀬を背負って走ることになった。
「ありがとうございます」
それに水瀬の胸は貧相だから当たっても気にならない。
「………」
「いたっ!」
水瀬がいきなり俺の腹をつねってきた。
「何するんだ!?」
「いえ、何となく」
もしかして俺の心を読んだのか? 怖いな。
「……仲良いですね」
「誰と?」
朝陽は何を言ってるんだ? ただ、ふてくされたような顔も可愛い。
「また人体模型だ」
四体目か。もう慣れたな。とりあえず人体模型をスルーして反対側の階段に向かうか。
今回の話はホラーみたいな感じにする予定でしたけど無理でした。キャラがゲスいです。
では感想待ってます。というより、批判でもいいのでください。