第三話
「何で迅は私服なんだ?」
全員、椅子に座って落ち着いたところで俺が質問した。無駄だと分かってはいるが念のためだ。
「そりゃ、さっきまで遊んでいたからだろ」
そろそろ、こいつに常識を叩き込まないとな。
「それよりも迅くん。今日はどうしたの?」
「ちょっと面白い話を聞いてな。それの調査だ」
面白い話? さっきクラスメイトが話していた内容と関係あるのか?
「で、それは何なんですか、迅さん」
「よく聞いてくれた、朝陽。それはだな……」
溜めるのかよ、めんどくせぇ。早く言え。
「この学校で七不思議にちなんだ事件がおきていると聞いてな」
「ああ、それなら私も聞いたよ。確か生物室の人体模型が動いたとか、真夜中の校舎の誰もいない音楽室からピアノの音が聞こえてくるとか」
どこでもあるような定番な七不思議だな。
「て言うか、この学校に七不思議とかあったのか?」
「さすがシスコンの深夜くんね。妹のこと以外は何も知らないといった感じかな? 多分、他の皆は知ってると思うよ」
泉の人を馬鹿にしたような言い方が腹立つ。でも、俺が知らないのは事実だから何も言えない。
「だったら風間先輩が教えてあげたらいいじゃないですか。隣の部屋は空いているので二人っきりで」
水瀬の楽しそうな顔も腹が立つ。こっちには怒ってもいいよな。
「おい、水――」
「だったら私が教えてあげますよ、兄さん」
「よし、教えてくれ」
朝陽と二人っきりなら何の問題もない。むしろ、それ以上の幸せはない。
「何だ、俺と隣の部屋に行かないのか?」
残念そうな顔をするな。寒気がする。
「じゃあ、早く移動しようか、朝陽」
「いえ、ここで教えます」
……普通に考えたらそうだよな。別に落ち込んだりしていないぞ。いや、本当に。
「うわぁー、見ていて面白いくらいの凄い落ち込みよう。コレは写真に撮らないと」
そう言うと泉はスマホを取り出して俺のことを写真で撮っている。
この学校はスマホの持ち込みは校則違反だぞ。後で先生に報告してやる。
「いつまで撮ってんだよ?」
「別にいいんじゃん? それよりも朝陽ちゃんもいる?」
「はい、もらいます」
そんな奴からもらわなくても、兄さんのことをいつでも写真に撮っていいんだぞ、可愛い妹よ。
「ところで先輩がた。そろそろ本題に戻らなくていいんですか?」
いつの間にか読書を再開していた水瀬が言ってきた。確かお前から話がずれたはずなんだが。
「早く深夜先輩と風間先輩は隣の部屋に行って熱い抱擁をしてきてください。私はそれをスマホの動画で撮ってネットに配信しますから」
「そんな話はしてねぇよ! しかもネット配信とか悪質すぎるだろ!」
やっぱりこの後輩は油断できない。て言うか、本当に最初の話題は何だったけ?
「じゃあ、朝陽ちゃんは私の家に行こう。今日は親がいないから大丈夫だよ。そこで……」
俺は読んでいた雑誌を泉に投げ付ける。
「それ以上言ったらぶん殴るぞ、変態」
「いや、その前に雑誌を投げてるし」
泉が若干、涙目で言ってきた。当たりどころが悪かったか? どうでもいいが。
「やっぱり外で遊ぶよりもこっちの方が面白いな。これからは放課後は顔を出そうかな」
迅が楽しそうに言っている。勘弁してくれ。これ以上、俺の負担が増えるのはごめんだ。
大体、何でこの部活は俺達、兄妹以外の全員が変態なんだよ。
三話終了。では感想待ってます。