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おばあちゃん

私の祖母の話ではありません。

先日、中学時代からの悪友からのメールが来た。同期会があるらしい。

ところが私が行方不明リストに載っていると、連絡をくれたのだ。私の両親がいなくなって実家も既になく、結婚後も転勤族の成せる技で、引っ越し続きの為にそうなったらしい。


生憎、しもべB関連の私用があって行けないので欠席だなぁと、のんびり画面をスクロールして驚いた。そこには


『そうそう、孫ができました。1歳です』


と、書かれていた。


「え~マジで~?」


確か、彼女にはまだ小学校に入るか入らないかの、お嬢さんがいたはずで……それにしても孫って、つまりはあの悪友はおばあちゃん? 嘘でしょ!?


もう既に成人しているお嬢さんが二人いるのは知っていたけれど、そうか~もう何時そう呼ばれても、可笑しくないって歳になったんだ~。


何だか、HP0になった気分だった。頭では自分がソレナリの年齢を重ねているのは理解しているし、体もそれを裏付けてはいるのだが、精神だけは何処かそれを拒絶していたらしい。まだ中学生のしもべBがいて周りの保護者も若いからか、ただ単に私の精神が、成長を拒んでいるのかはわからないが、とにかく脱力感で一杯になったのである。


「はああああ~」


いつぞやのしもべBではないが、そんな大きな溜め息が漏れた。



私は年齢を重ねる事自体に恐怖はない。白髪になってきてあまり染めたくないが、シワのない顔に合わないので仕方なく染めている。が、それだけだ。シワも同じ。むしろ、年相応に増えていくシワは魅力的だと思う。その人が歩んだ歴史の様に感じられるからだ。


確かに体は緩むし、あちこち痛くなるし、抵抗力も弱ってきているが、それでも過去に戻りたいとは思わないのだ。イロイロ消したい黒歴史も多々あるし、あの時~と考える事だってあるが、それもこれも私である。


今更、後悔はしない。私が強いのではない。後悔しても変わらない事を嫌って程知っているからだ。


それよりも、今を楽しみたい。あまり外出しない私だが、しもべ達との会話は大抵お笑いとなるし、窓から見える変わっていないようで、少しずつ変わっていく景色を眺めるのも楽しい。


だから世間ではおばちゃんと言われる事には抵抗は無かったんだが……。



一体、いくつから高齢者なのだろう。私が子供だった頃、定年は55で、定年過ぎたらお年寄り、みたいな感覚だった。段々定年が伸びて来て、今の60歳の方をお年寄り扱いしたら、憤慨されるだろう。私だって流石に後十年と少しでお年寄りと云うのは嫌だ。健康保険は確か70だ。国の財政に左右されていくのだから仕方ないのかもしれないが、高齢者の定義を国が決めるのも変だ。


そういえば、しもべAが産まれた時、母は執拗に名前を教え込んでいた。今になって思えば、何となくわからないでもない。孫は出来たが、おばあちゃんはいただけなかったのだろう。実際、Aは〇〇ちゃんと呼んでいた。Bが産まれて流石に諦めた様だったが、多分今しもべAに子供が出来ても、私も同じ事をしてしまうのだろう。


おばあちゃんイコール高齢者ではなくても、おばあちゃんという言葉のイメージはお年寄りを彷彿とさせるからだ。いくらなんでもそれはキツイ。そういう事なんだろうと思う。


友人のお母様は、友人を早くにお産みになられ、そのまた友人自身も成人してすぐに子供を授かっていた。ということは、友人のお母様は40前にお祖母様になられた訳だ。一体、何と呼ばせたのだろう。遠く離れているので聞く術はないのだが、ふとそんな事までを思い出した。



余談だが、以前R-18の方でオッサン祭があった。何故おばちゃん祭がないんだろうと思ったりもしたが、そこに出てくるオッサンの年齢に驚いた。30前半からそう呼ばれていたのだ。いくらなんでも、可哀相ではないかと思った私である。


子供の時とは時間の流れが違うのだ。今二十代でいる方が三十代になった時、時間の流れの速さに驚くのではないかと思う。そこからはもっと早い。自虐的に自分が申告するのは構わないが、もう少し優しい目で見ないと自分自身に跳ね返ってくるよ。そう老婆心ながら思ったのである。




……なんて事をとりとめもなく考えながら、メールの返信を返した。


「おめでとう。お互い、そういう年になったんだね」





メールを返信していたら、こんな会話が脳内で流れた。


「オレ、おじさんになったんだよ」


「へえー、てことはさー、お前のかーちゃん、もうばーさんかよ」


・・・私は、Aを呼んだ。


「せめてBが高校を卒業するまでは、孫はいらん!」


Aは何を突然言われたのかわからず、キョトンとしていた。

次回は小話の回です。

それではまた来週、金曜夜に怪しい母がお待ちしております。

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