はじめての学校
巻きすぎでしょうか?
「よし、こんな感じかな」
僕は鏡の前でくるりと回ってみました。
スカートがふわりとゆれます。
「うう……、違和感ないのが嫌です」
ちなみに僕の髪はボブショートです。
これがよけい女の子っぽく見せる原因かもしれません。
けど、短いの似合わないのでしょうがないのです。
「おい、もう出るぞ」
リコリスに声をかけられました。
僕は慌ててついていきます。
「リコリス、学校ってどんなとこでしょうか」
「あ? なにお前、学校行ったことねーの?」
「はい。ずっと家庭教師でした」
「ふうん。じゃあ楽しみだな」
「はい!」
そうです。楽しみなのです。
こんな格好でなければ、もっと楽しかったんですが。
ちなみに僕、スカートの下に膝丈のズボンを穿いてます。
これだけはもう譲れませんでした。
セントーレア学院はリコリスの屋敷からわりと近かった為、徒歩通学です。
車を出してもいいと言われたんですが、リコリスに「それじゃつまらんだろう」と反対されたのです。
帰りにいろんなところに連れてってくれるとのことです。
今からとっても楽しみです!
学校につきました。
おお、ここがセントーレア学院……。
僕はうきうきしながら、リコリスの後について入っていきました。
まわりにはたくさんの僕と同年代の人達がいます。
普段、あまり人と接しない生活だった為、なんだかどきどきします。
「ここだな」
リコリスはそう言うと、とある部屋に入っていきました。
「ここは?」
「私達の教室だな。良かったな、同じ組分けで」
「はい、そうですね」
僕はにっこりと頷くと、あたりをきょろきょろと見渡しました。
「おい、とりあえず席につけ。もうすぐ先生がくる」
「あ、はい」
僕はリコリスの横に座りました。
そして、横にいるリコリスに小声で話かけました。
「ねえ、リコリス。見てください。あそこにいる女の子、ものすごく可愛くないですか?」
「うん? ああ、確かに」
その人は、一人で大人しく座って本を読んでいました。
金色のサラサラの長い髪が揺れて、瞬きのたびにバサバサと音がしそうな長い睫。真っ白な肌に、大きな潤んだ瞳。
「なんだ、お前はああいうのが好みか?」
「ふえ!? ち、違います! めったにいないようなすっごく綺麗な人だって思ったから、それだけです!」
「へえ。そうか?」
「そうなのです」
僕は強く頷いた。
「あ、後はほら、あの男の子なんてとってもかっこいいです。僕もああなれたら良かったなーって憧れちゃいます」
僕は話題を逸らそうとそう言いながら、実のところ本当に羨ましく思ってました。
そこには、僕がこうでありたいと思う男の子がいたからです。
凛とした姿勢に、涼やかに整った男の子らしい容貌。
男子の制服も、とってもよく似合っています。
「ん? だがあれは……」
リコリスが眉をよせ言いかけたところで、先生が入ってきました。
リコリスは口を噤んで前を向きました。
リコリスは、何を言いたかったんでしょうか。
前回の答え:草花の名前です。