白牙が関わる神の血族
魔磨のお話です
魔磨、時空を司る最上級神、新名の息子、新狼と人間の間に生まれた娘。
自分の管轄した世界の住民の非合法な強制移民を行おうとした新狼に協力していた。
事が露見し、新狼が罰を受ける中、オーフェンと呼ばれる違法集団の幹部になっていたが、新狼の意志を知り、新名の使徒となる。
しかし、その力は、使徒として十分な物で無かった。
「俺達も人が良いよな」
人の姿を闘甲虫の言葉に手を合わせる狼打。
「感謝してる。この借りは、必ず返す」
「過保護も大概にしておけよ」
そう指摘したのは、人に変化した白牙。
「だよな、孫の魔磨がどさ回りで苦労しているからと蔭ながらサポートしようって言うんだからな」
闘甲虫が皮肉る。
「いくら分身だとしても、最上級神の上位使徒が三つも居るのは、尋常じゃないぞ」
睨む白牙に狼打がため息を吐く。
「気付かれないレベルまで力を落とした状態では、一人では、力不足なんだから仕方ないんだ」
あきれ顔になる白牙。
そんな中、狼打の孫にあたる新入り使徒、魔磨が仕事に入る。
魔磨が仕える神、新名は、空間を司っている。
使徒の主な仕事は、新名の力で成立している空間の調整である。
魔磨の今回の仕事もそれである。
魔磨は、空間の歪みを感じ、自分の力で、微調整していく。
「ハッキリ言って下手だな」
白牙のストレートな感想に狼打がフォローする。
「まだ新人なんだから仕方ないと思うが……」
「それを考慮に入れても駄目だぞ。才能が無いんじゃないか?」
闘甲虫の指摘に狼打が怯む中、白牙が続ける。
「半分は、人間の上、魔力活性に特化した力を使い続けていたせいで制御に向いてないんだ」
反論出来ない狼打だったが大きなため息を吐いてから立ち上がる。
「今回は、全体的に力を貸すか……」
「却下、そんな事をしても何の解決にもならないよ」
いきなりのダメ出しの声に狼打達の視線が集まる。
「八百刃様、どうしてここに?」
狼打が戸惑う中、白牙がいつの間にかに居る八百刃を睨む。
「俺達が動いて居てお前が気付かないって事は、無いと判っていたが、お前が直接来る理由は、なんだ?」
「新名から頼まれたの。それにしても中々の顔ぶれね?」
嫌味たっぷりの八百刃の言葉に闘甲虫が肩をすくめる。
「言わないで下さいよ」
「最上級神がでばって来てる事に比べれれば大した事じゃないだろう」
白牙が言い返す。
「とにかく、手出し無用だよ」
八百刃に釘を刺されて押し黙るしか出来なかった狼打であった。
結局、仕事に失敗した魔磨は、落ち込んでいた。
その上、本来なら責められる事にかかわらず、誰も魔磨を責めようとは、しなかった。
「父様の力……」
自分の無力さ、親の七光りを痛感する魔磨は、人の酒場に来ていた。
「半分人間の利点は、酔っ払う事が出来る事くらいね……」
自傷の言葉を紡ぐ魔磨に花売りの少女が近付く。
「お姉ちゃん、お花買って」
眉をひそめる魔磨。
「意味を判ってるの?」
少女が首を傾げる。
「花を買って貰うのに何か意味があるの?」
魔磨は、席を立つ。
「貴女に花売りさせている奴の所に連れて行って」
少女を促し魔磨は、花売りの元締めの所に行った。
「売春がいけないとは、言わない。でも、本人に自覚させるのが最低限のルールでしょ!」
詰め寄る魔磨に元締めは、失笑する。
「小娘が余計な口だしをするんじゃねぇ」
魔磨は、血を垂らすと床が盛り上がり元締めを締め上げる。
「化け物……」
「改善することね」
激しく首を振る元締め。
帰り道、自己嫌悪に陥る魔磨。
「こんなのただの弱い者いじめじゃない……」
そんな時、複数の女性が現れた。
「あんたが元締めを締め上げたんだよな?」
魔磨が頷くと女性の一人が言う。
「だったら、あんたが決めてよ。あたし達がこれからどうしたらいいか」
興味無さそうに魔磨が告げる。
「そんな事は、自分達で決めたら」
「決まらないから、こうやってあんたを探して来たんじゃないか!」
眉をひそめる魔磨。
「だからってあたしが決める事でもないわ」
魔磨の素っ気ない態度に女性達が落胆し、それぞれの勝手な主張を始める。
「だから売春なんて止めるべきなのよ!」
「それでどうやって生活していくのよ!」
「元締めから奪い取れば……」
纏まりそうも無い展開に魔磨が呆れて口を挟む。
「貴女達は、何人居て、何か出来る事があるの?」
「えーと、二十人くらいだっけ?」
「まだお客をとっていない子も居るから三十人は、越すはずじゃ……」
女性達の頼りない答えに魔磨がため息を吐く。
「先ずは現状把握ね」
そう言って女性達の話を聞き始める。
その様子を見ていた白牙が呆れる。
「何をやってるんだ?」
「人が良いって言うか……」
苦笑する闘甲虫。
しかし、狼打だけは、違っていた。
「あいつ、こんな事が出来るのか」
「ただ相談にのってるだけだぞ」
白牙の突っ込みに闘甲虫が手を叩く。
「そうか、使徒は、人間となんて話をしない!」
狼打が頷く。
「一般的な使徒にとっては、人間は、家畜と変わらないからな」
「八百刃獣では、絶対にあり得ないことだがな」
白牙の言葉に狼打が失笑する。
「八百刃獣が特別なんだ」
その後、魔磨は、交渉役として様々な事案に関わっていく事になるのであった。
八百刃神殿。
「結果オーライってやつだな」
白牙の言葉に八百刃が微笑む。
「あれが偶然だと思った?」
白牙が短い思考の後、鋭い視線を向ける。
「あの騒動は、お前の仕組んだ事だったのか?」
楽しそうに八百刃が答える。
「半分外れ。仕事の失敗から含めて、あちきと新名の作戦だよ」
「どうしてそこまで?」
驚く白牙に八百刃が説明する。
「正確に言えば魔磨のバックに気を使って楽になっていた仕事難度を普通に戻してたの。それで、成功すればOK、失敗したら、あちきが用意したあの騒動に巻き込まれる様にしておいたの」
「母親は、強しだな」
肩をすくめる白牙であった。




