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天道龍に挑み続ける竜

天道龍が立ち会う、一体の竜と少女のつながりの話

 天道龍は、主に世界間の移動の管理をしている。

 違法通行者の中でも力が強きものには、天道龍が直接動く事がある。



「天道龍様、またです!」

 一刃の八百刃獣の報告に天道龍は、ため息を吐く。

「またか。いま行く」

 そういって重い腰をあげる天道龍であった。



 世界の壁、それは、神々の意志の有効範囲と言ってもいい。

 異なる神同士の意志のぶつかりで、他者を否定する壁が形成されている。

 その壁を突破するには、それ相応の力が必要であり、移動する世界の密度が高い場合、入った瞬間に自ら消滅する場合もある。

 それが故に、下位世界から上位世界への移動は、極端に少ない。

 逆に上位世界から下位世界への移動は、かなりの件数になる。

 理由は、様々だが、そうやって移動した存在は、下位世界にとっては、迷惑な存在であり、神々が構成した世界のあり方を変貌させる可能性が高いため、許可がない移動は、禁止されている。

 そして、今、一体の竜がその禁を破ろうとしていた。

「通せ!」

 竜の中でも有数の力を持つ、プラネットドラゴン、その身体は、惑星に匹敵し、時には、その身体の上で人を生活させる事もある存在だ。

 それだけの存在だけに、八百刃獣でも苦戦は、否めない。

 実際問題、倒すだけなら中位の八百刃獣でも可能かもしれないが、強大な力の損失は、世界のバランスを崩す事になる為、許可がおりていないのだ。

「プラネットドラゴンよ、何度もやっても同じだ。貴様を下位世界に送り出す事は、認められない。そして、我が力の前では、汝の力は、通用しない」

 やってきた天道龍だったが、外見上では、プラネットドラゴンの方が遥かに巨大であるが、恐れるのは、プラネットドラゴンの方だった。

「もう来たのか。しかし、私にも誓がある。押し通る!」

 一気に進もうとするプラネットドラゴンだったが、前に進んだ筈なのに、プラネットドラゴンは、子後退していた。

「空間干渉で、直進を許さぬか! まだだ、ドラゴンワールドで!」

 自分の干渉能力で、中和しようとするプラネットドラゴンだったが、天道龍の空間干渉は、揺るぎもしない。

「これが、上位八百刃獣の力だ。貴様程度では、指先ほどの揺らぎも起こせぬ」

「くそう! 次こそは、絶対に抜けてやる!」

 逃げていくプラネットドラゴン。

 ため息を吐く天道龍に部下の水流操竜が言う。

「いい加減、精神干渉を許されるレベルだと思いますが?」

「八百刃様がお認めになると思うか?」

 天道龍の言葉に水流操竜が眉をよせる。

「絶対、無理ですね」

 天道龍が頷く。

「八百刃様は、記憶の改ざんや精神干渉を基本的に禁止している。それは、その存在のあり方を歪める事になるからだ。我々は、力を持って当たらなければいけない。その為に強大な力を授かっているのだ」

 水流操竜が渋々頷く。

「それは、理解していますが、プラネットドラゴンの行動は、この世界に多大な影響を与えます。こう度々行われたら……」

 何が言いたいのかは、天道龍にも解った。

「私が、説得してみよう」



「何で八百刃様が居るのですか?」

 移動中の天道龍の背中に何故か八百刃が居た。

「ちょっと気になったから」

「白牙殿がよく許しましたね」

 天道龍の質問に八百刃が一つの要請書を見せる。

「あのプラネットドラゴンについては、狼打から苦情が来てるから早くどうにかする必要があるんだよ」

 それを聞いて複雑な表情になる天道龍。

「私の力が足らない為、ご迷惑をおかけしています」

 それに対して八百刃は、気楽な顔で言う。

「気にしない。貴方達が精一杯やってるのは、知ってる。あちきが無茶を言ってるのは、理解してるから、あちきが悪いって思ってるんだから」

「そんな、我々は、八百刃様の御心に沿う為の存在です。八百刃様がその様に思う必要は、一切ありません!」

 熱弁する天道龍。

「この話は、また今度ね。それより、到着したみたいだね」

 人間サイズの八百刃から見ると壁にしか見えないプラネットドラゴン。

「何の用だ!」

 プラネットドラゴンの怒声に天道龍がいきり立つ。

「控えろ! このお方は、最上級神が一柱、聖獣戦神八百刃様であられるぞ!」

 プラネットドラゴンは、失笑する。

「冗談も大概にしろ、そんな存在がこんな所に来る訳がないだろうが」

「天道龍、空間封鎖をお願い」

 八百刃の言葉に天道龍が従い、空間を封鎖した次の瞬間、八百刃が自らの力を解放した。

「もう良いよ」

 力の解放を止めた八百刃の言葉で天道龍が空間封鎖を解除した時、プラネットドラゴンの巨体が震えていた。

「馬鹿な、そんな、本物なのか?」

「そうだよ、まあ、気にしないで。恐縮する必要ないから」

 八百刃の軽い言葉に天道龍が苦笑する。

「今の力を見せ付けられ、恐縮するなと言うのが無理です」

「さて、話は、天道龍から聞いてるけど、貴方は、一人の少女を助ける為に隣の世界に向かうつもりなんだよね?」

 八百刃の言葉に恐れながらも天道龍が答える。

「はい。彼女とは、世界の壁を越え、夢で交信していました。その彼女がその力を悪用しようとする連中に囚われ、苦しめられているのです。助けられるのは、私だけなのです! どうかお認め下さい!」

 八百刃が資料を確認しながら天道龍をこつく。

「言わないつもりだった?」

 天道龍が沈痛な表情で言う。

「死んだ訳では、無いので」

「何が言いたいのですか!」

 プラネットドラゴンの言葉に八百刃が告げる。

「その娘は、もう力を失ったよ。貴方が言っている悪い奴と愛し合って、巫女としての力を失ったみたいだね。世界の壁を越える為には、精神的な純潔が強い力になるからね」

「馬鹿な! あの子は、そんな子では、ありません!」

 プラネットドラゴンの言葉に八百刃が言う。

「人間は、変わる。いっそ進化したと言っても良い。自分が苦しみ、苦痛を感じる状況を自分のあり方を変えて適応した。良いことじゃん」

「そんな事実は、認めません!」

 暴れるプラネットドラゴンを見て、八百刃が視線で指示すると天道龍が動きを封じた。

 悔しそうな言葉を漏らすプラネットドラゴン。

「私が傍にいけなかった所為で、あの娘を穢してしまった!」

 大きなため息を吐く八百刃。

「あんたみたいのがストーカーって言うんだけど自覚してる?」

「何だと! 私の何処がストーカーなんですか!」

 相手が何者かも忘れて怒鳴るプラネットドラゴンに八百刃が言う。

「少しは、相手の事も考えたら。精神的な純潔って言葉にすると綺麗だけど、それって孤独って事なんだよ。唯一触れられたのは、異界の貴方だけ。それがどれほど寂しい事か考えた事ある?」

 沈黙するプラネットドラゴン。

「解らないわけ無いな。竜と言う強大な存在は、常にその強大な存在故に孤独だ」

 天道龍の言葉に何も言えないプラネットドラゴン。

「こんな偉そうな事を言っている天道龍だって、人との交友の為に暴走した事は、あるよ」

 八百刃の暴露に天道龍が情けなさそうな顔をする。

「自分の事ながら情けない事だ。自分との繋がりだけが絶対だと勘違いし、相手の考えなど無視して、暴走した。それを止めてくださったのが八百刃様だ」

 プラネットドラゴンは、遠い目をする。

「私は、また独りになったのか?」

 プラネットドラゴンの言葉に、八百刃が微笑む。

「繋がりが欲しいんだったら、あちきが繋がってあげるよ」

「よろしいのですか?」

 プラネットドラゴンの言葉に八百刃が頷く。

「これでも偉い神様なんだからどんと来い!」

 こうしてプラネットドラゴンは、八百刃獣となったのであった。



 暫く後の八百刃の神殿。

「あの時の事を思い出すと、我ながらとんでもない事をしたものだと思う」

 プラネットドラゴンこと惑星竜の言葉に水流操竜が言う。

「八百刃様って、懐が深いからな。もしも他の神だったら即時に消されてたぞ」

 惑星竜が頷く。

「八百刃獣になって八百刃様の力を知れば知るほど、とんでもない存在に口答えしようとしてたんだって恐怖だけが募るぞ」

 そんな二刃の前に穏行をする八百刃が居た。

「何を為さっているのですか?」

 惑星竜の問い掛けに八百刃は、指を口の前に当てる。

「またですか?」

 水流操竜が呆れた顔になる。

「そこか! 何度も言っているが、お前が現場に出る必要なんて無いんだ! お前は、大人しく確認と承認作業を続けろ!」

 白牙に引っ張られていく八百刃。

「あの現場主義だけは、直りそうもないな?」

 惑星竜の言葉に水流操竜が頷く。

「白牙様もご苦労な事だ」

 そんな二刃だったが、調子にのって余計な事を喋っていた水流操竜が命令を下しに来た天道龍に聞かれ、また面倒事を押し付けられる事になるのであった。

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