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山河竜が見守る出世コース

どっかで見たことがあるキャラが出てきます

 山河竜サンガリュウは、元々は、鯉の魔獣だったが、出世して変化した魔獣でした。

 そのため、強力な力を持ち、戦乱期は、第一線で活躍していました。

 安定期に入ってからは、階級制度などの管理、調整などの仕事を主にやっており、時には、現地での長期調査もあった。



 ソオルアーマーと言う特殊兵器を使って世界統一を成し遂げたブルースピア帝国。

 ソオルアーマーと言う絶対兵器を持つゆえに軍部は、ゆっくりと腐敗を始めて居た。

 一人の青年将校が居た。

 ソオルアーマーの乗り手、ソオルライダーが幅をきかせる軍部の中で、指揮能力で登り上がってきた変わり種であった。

 名前は、バッド=タタケーと言った。

 バッドが帝都ジョジョエーンのバーで独りロックを口にしていた。

 そこに一人の将校がやって来る。

「随分と寂しい昇進祝いだな」

 バッドが立ち上がろうとするが、将校は、制止した。

「プライベートの時間だ、堅苦しい挨拶は、要らない。それよりも聞いたぞ、その年で、セカンドのフォーススターに昇進したらしいな?」

 ブルースピア帝国では、大きく分けて三つの階級がある。

 一般兵士等のサード。

 ソオルライダーや現場指揮官がなるセカンド。

 中隊長以上のファースト。

 各階級の中でも階級が上がる度に星が増えて最大五つまであるが、ファーストのフィフススターは、皇帝のみである。

 着任からセカンドのソオルライダーでないバッドがセカンドのフォーススターになると言うのは、かなりのスピード出世であった。

 しかし、バッドがグラスを握りしめて言う。

「ドット=ミンテ、セカンドのフィフススターのソオルライダースペシャルチーフ、部下を犠牲にした昇進にどれだけの意味があると言うのですか?」

 やって来た将校、ドットが席に座り注文する。

「マスター、マスター御自慢のカクテル、『滝登り』を作ってくれ」

「かしこまりました」

 マスターは、カクテルを作った。

 ドットは、それをバッドの前に差し出す。

「このカクテルの事は、知っているだろ? 私からの昇進祝いだ」

 バッドは、首を振る。

「残念ながら、昇進出来ると言うジンクスがあるカクテルを飲む気には、なりません」

 ドットが強い口調で告げる。

「それでも飲むのだ。部下を殺さないで済む軍を作る為に上に登りつめろ」

 バッドは、差し出されたカクテルを一気する。

「苦いです……」

「その味がこれからの道を意味してる」

 ドットの言葉にバッドがマスターに告げる。

「もう一杯、私は、部下を殺さなくても済む軍を作る為に絶対に登り詰める!」

 二杯目も一気するバッドであった。



 バッドは、その後も戦果をあげ続け、中隊長の登竜門と言われる大隊長補佐官に就いた。

 誰もが羨む出世街道だったが、バッドは、今日も『滝登り』をあおって居た。

「随分と荒れているな?」

 ドットが声をかけるとバッドが悔しそうに呟く。

「上を見れば見るほど腐敗が解ります。帝国軍人の誇りは、何処に行ったのですか?」

 ドットも顔を曇らす。

「足の引っ張り合いに、騙し討ち、自分が出世するためなら何をやっても構わないと思っている誠無き者が多い。だからこそ私は、お前のような男に上を目指して欲しいのだ」

 バッドがグラスを握りしめ、絞り出す様に告げる。

「判っています。軍がこのままでいいわけがありません。必ず変えて見せます」



 バッドは、自分の信条を圧し殺し、上に登りつめろ為に努力を続けた。

 遂には、中隊の副隊長にも手が届く所に立っていた。

 そして運命の日が来た。

 何時もの様にあまり前線に出ようとしない上官の代わりに刻一刻と変わる戦場を見極め、兵に指示を出していた。

 バッドの指揮もあり、地方都市を巡る内乱も終結しようとしていた。

「タタケー補佐官、もう一押しで反乱軍も鎮圧出来ます」

 兵の言葉にバッドが頷く。

「お前逹にも苦労をかけた。大隊長に掛け合って、長期休暇がとれる様にする」

 兵士逹から喜びの声が上がる。

 そこに伝令兵がやって来た。

「タタケー補佐官、大隊長がお呼びです」

 バッドが頷く。

「早く決着をつけろとの催促だろう。ついでに休暇の話をしてくる」

「頑張って下さい!」

 兵士逹から声援を受けてバッドが大隊長の元に向かった。



「すいません。言っている意味がわからないのですが?」

 バッドの言葉に大隊長が苦笑する。

「難しい事では、ない。こちらが想定していた被害に達していない。ならば予定した日まで適当に戦いを続ける。無論、馬鹿高いソオルアーマーも要らないだろう。出撃記録だけ残して差額を私の懐に入る」

 完全な私欲のみの言葉にバッドは、言葉を無くすが周りの人間は、平然としていた。

「弾薬を消費して、買い付けなければ武器商人からのキックバックも無いからな」

「うちの部隊は、期限一杯まで戦って貰わないと横流しした分の帳尻が合わないぞ」

「それは、大変だな。付け届け費用の捻出も楽じゃないな」

「全くですな」

 笑い合う上官逹への怒りを堪えるのにバッドは、血が滴る程拳を握りしめた。



「何故突撃許可がおりないのですか!」

 困惑する兵士逹にバッドは、絞り出す様に告げる。

「上官の命令は、絶対なのだ……」

 その一言に秘められた意味に兵士逹も悔しげな顔をする。

 攻撃が緩んだ為、反乱軍の自棄っぱちの反抗が始まる。

 自分の命を気にしない万歳アタックの前に死傷者が続出する。

 バッドは、大隊長の元に訴えに駆け込む。

「これ以上は、損害が多すぎます! どうか突撃許可を下さい!」

 必死の懇願だったが大隊長は、電卓を叩き告げる。

「ソオルアーマーを使わなければまだまだ予定範囲内だ、このまま防戦を続けろ」

 バッドは、食い下がる。

「しかしながら、兵士に死者が出ています。彼等の命を無駄に失う訳には行きませ!」

「サードの連中なら死んでもいくらでも替えがきく」

 大隊長の軽い回答に、バッドは、大隊長補佐官の腕章をむしりとる。

 兵士の死にも淡々としていた場がざわめき、補佐官の一人が信じられないとばかりに問い掛ける。

「タタケー補佐官、貴殿は、正気か? 補佐官の地位を捨てれば、出世の道が閉ざされるのだぞ?」

 バッドは、大隊長逹に背を向け、足を進めながら吐き捨てた。

「私は、部下を殺さなくても済む軍を作る為に出世してきた。だが今の部下を無駄に殺してまで出世など望まない!」

 前線に戻るとバッドが告げた。

「私は、たった今補佐官を辞めてきた。なんの権限も無いが一つだけ言える事がある。私は、お前逹を生かして帰したい!」

 動揺する兵士逹だったが、覚悟を決めた兵士が声をあげる。

「俺達だって死にたくない。あんたに従うぜ!」

 その声は、どんどん拡がり、兵士逹は、バッドの指揮に従い突撃を開始した。

 突然の猛攻に反乱軍も浮き足立ち、両軍ともに、大きな被害を出さずに内乱が鎮まった。



 ジョジョエーンの何時ものバー。

「馬鹿な事をしたな」

 苦々しい顔のドットにバッドが封筒を差し出す。

「すいませんが私が処分された後、部下の保証を頼みます」

 封筒の中身、大隊の不正の証拠が想像出来たドットが問い掛ける。

「これを自分の為に使う気は、無いのか?」

 バッドが揺るがない瞳で答える。

「軍人が上官に逆らった軍事行動をとったのです、死は、覚悟の上です」

 残念そうな顔をするドット。

「お前のような男こそ、軍に必要なのだかな……」

 封筒を持ってバーを出るドット。

 独り最後の酒を飲むバッドにマスターが問い掛ける。

「お客様、後悔しないのですか?」

 バッドがグラスを軽く回しながら答える。

「している。これでは、いままで犠牲にしてきた部下の命を無駄にしてきたようなものだからな……」

 するとマスターが真剣な顔で告げる。

「やり直せるとしたら止めますか?」

 バッドが即答する。

「何回やっても、部下の命を無駄に失う選択は、選べない」

 マスターが納得した顔をして、軽く地面を蹴った。



 翌日、バッドが想像しなかった展開が待っていた。

 バッドの所属する大隊の基地が地震にみまわれた。

 早い対応で人的被害は、皆無だったが、事故の調査の際に様々な不正が発覚した。

 その中には、あの戦場での一件も含まれていた。

 軍上層部も関わっていたため、隠蔽工作が行われ、その結果、バッドは、早期に内乱を鎮めた功績から地方の中隊の副隊長に栄転する事に成った。



 何時ものバー。

「今回の人事は、栄転とは、名ばかりだ。地方では、現地の実力者が重役を独占している。そして、上層部に悪印象を持たれたお前が呼び戻される事もない。完全な左遷だな」

 ドットの言葉にバッドが頷く。

「しかし、部下への追及がなくなり助かりました」

 ドットが苦笑する。

「これからどうするのだ?」

 バッドは、迷いのない顔で答える。

「新しい部下を理不尽な命令から守って行きます」

 ドットが言う。

「娘をソオルライダーにするつもりだが、お前の所なら真っ直ぐに成長してくれそうだな」

「その時は、お任せ下さい」

 バッドとドットが乾杯する。

「それにしても、あの地震は、奇妙な地震だったな?」

 ドットの言葉にバッドも頷く。

「基地以外には、被害も無く、人間の避難を待っていた様に揺れが大きくなったらしいですからね」

 するとマスターが言う。

「きっと神が貴方を助けたのです」

 意外な意見にバッドが苦笑し、ドットが笑みを浮かべる。

「そう言う事にしておこう」

 こうしてバッドの中央での戦いは、終わった。

 彼は、地方の中隊の副隊長として、現地領主の次男坊を支え戦って行くことになる。

 そして、帝国を揺るがす大事件に関わっていくのだが、それは、また別の話である。



 八百刃の神殿。

 バーのマスターに化けていた山河竜の報告に八百刃がため息を吐く。

「蒼貫槍が力を注いでる世界だからかなり期待してたけど軍の腐敗は、防げなかったね……」

「しかし、強い信念を持つものも多く居ました」

 山河竜の言葉に白牙が言う。

「それだ、あそこは、蒼貫槍様の管轄、余計な手出しは、するなと通達してあった筈だが?」

「それは、その……」

 答えに困っている山河竜に八百刃は、気楽に言う。

「その事は、あちきから話を通しておいたから気にしないで良いよ」

 頭を下げる山河竜。

「お手数をおかけしてすいません」

 そんな中、白牙が言う。

「どうでも良いことなんだか、メイド喫茶の称号にハイドジッ娘メイドのヤオとあるのだが?」

 視線をそらす八百刃に白牙の容赦ない追究が入るのであった。

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