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影走鬼が放つ世界を覆う力

エッグオブワールドイーターを追って影走鬼がやってくる

 八百刃の世界消滅即決権。

 それは、八百刃だけが持つ権利で、別の世界に多大な影響がある世界と八百刃が判断した場合、その世界を独断で消滅させる事が出来る権利である。



 そこは、魔法と強力な魔獣が蔓延る世界。

 その世界で一番大きな国の首都、ベルムーンの宿屋兼用の酒場に一組の旅人が入ってきた。

「宿をとりたい。すまないが、一番いい部屋を……」

 年上の青年の言葉を一緒にいたポニーテールの少女が止める。

「一週間以内に洗濯したシーツのベッドがあれば、どんな部屋でも構わないです」

 青年が困惑した顔で見るが、少女が強い視線で黙らせる。

 そして部屋に入ったところで少女が言う。

「あちきに気を使わなくても良いよ」

 青年が困った顔をして言う。

「しかし、八百刃様をこの様な部屋で寝させるわけには、いきません」

 その青年、人の姿をした影走鬼が言うと少女、八百刃の分身が答える。

「あのね、あちきは、虫が湧いた布団でだって眠れるよ。今は、情報収集が最優先で目立たないほうが良いの。それと、これからは、ヤオって呼ぶのよ、エード」

 その言葉に、影走鬼、人だった時は、エードを呼ばれた者が言う。

「解りました。早速、情報収集に動きます、八百刃さ……、ヤオ」

 途中でヤオに睨まれて、訂正しエードが外に出て行った。



 それから数日が経った。

「それじゃあ、お兄さん達は、偉いんだ」

 ヤオが酒場に来ていた人畜無害そうな少年に確認するが、その青年は、苦笑する。

「別に偉いわけじゃ無い。一応は、王位継承権があると言っても、物凄く遠いから、陛下の臣下の一人でしかないよ」

 その言葉に、隣にいた高価な魔法装備した女性が言う。

「マルーサ殿下、そんな無礼な口のきき方しか出来ない娘は、無礼討ちにすべきです」

「別に構わないよ、メイリー」

 この国で、武官の王子、マルーサの言葉に、その側近、メイリーが不満気な顔をする。

「そうだ、こんな胸も無い小娘の態度を一々気にしていたら、きりがないぞ」

 もう一人の側近、巨漢のムージンの言葉にメイリーが文句を言う。

「だいたい、どうしてこんな場末の酒場で酒を飲む嵌めになったのですか!」

 それに対してマルーサが頭を下げる。

「すまない。うちの部隊は、装備の充実にお金を使っている所為だ」

「マルーサ殿下が謝る事じゃありません!」

 慌てるメイリーの様子を見て、回りの隊員も笑う。

 そんな中にエードが帰ってきた。

「ヤオ、こんな所にいたのですか?」

 ヤオが頷く。

「そうだよ、それより、どうだった?」

 それに対してエードがマルーサを見て言う。

「よろしいのですか?」

 ヤオが頷くとエードが言う。

「あれは、こちらの予測通り、クライシス教団が保有していました。そして、邪神の力を注ぎ込んでいる最中です。一週間以内にこの世界を喰らい尽くすことになるでしょう」

 酒場の空気が固まる。

 そんな中、ヤオが答える。

「そう、だとしたら、あちき達が出来る事は、もう殆ど無いね」

 少し寂しげな言葉にエードが頷く。

「もう結論を出されても結構だと思いますが?」

 そこにマルーサが声を掛けてきた。

「聞き捨てなら無い事を言っていたみたいだけど、本当なのかい?」

 ヤオは、指を振る。

「事が事だから自分で確かめないと駄目だよ。その上で行動しないと、どんな結末になっても後悔するだけだよ」

「貴女ね!」

 メイリーが文句を言おうとしたが、ムージンが残っていた酒をあおり言う。

「そのガキの言うとおりだ。クライシス教団が世界の滅びを求める狂信的な集団で、この頃の動きが怪しかったのも確かだ。調べた方が良いな」

 マルーサが頷く。

「すまない。こんな時間からですまないが、皆頼む」

 マルーサの言葉に、隊員達が動き出すのであった。

 そんなマルーサ達を見送った後、エードが言う。

「あれが最後の希望ですか?」

 ヤオが頷く。

「かなり淡い希望だけどね」



 それから一両日の調査で、マルーサ達が、ある程度の情報を得た。

「奴等が何か動いてるのは、確かだな」

 ムージンの言葉に頷きメイリーが続ける。

「教団のメンバーが大勢、自ら生贄になって大きな儀式を行っています。これだけでも踏み込むには、十分な情報です。一気に制圧して、全てを明るみしましょう」

 マルーサが首を横に振る。

「何かがあるでは、駄目だ。もしも、あの子達が言っていた事が本当なら、この世界が滅びる。皆も知っているだろう、近頃、異界から強大な力をもった何かが降りてきたと。それの使い方しだいでは、この世界に致命的なダメージを負わせられるとも。秘密裏で、多くの者が動いている」

 メイリーが唾を飲み込みながら言う。

「詰り、今回の物がそれだと?」

「だったらなおさら、急いだ方が良いだろう!」

 ムージンの言葉にマルーサが淡々と答える。

「それが何なのか解らず、止める方法があるのかい?」

 言葉に詰まるムージンとメイリー。

 マルーサが自らの苛立ちを堪えるように言う。

「物が物だ、失敗が許されない。どうにかして、もっと確実な情報を手に入れたい」

 そんな時、物陰からエードが現れる。

「エッグオブワールドイーター。世界を喰らい尽くす、暴走因子。増殖率は、核にした力に左右される」

「どこから入ったの?」

 メイリーの言葉にムージンが首を横に振る。

「違う。そこには、誰も居なかった。空間転移か?」

 エードは、答えず、話を続ける。

「クライシス教団は、多くの教徒を生贄に強力な魔獣を生み出し、それを核にしようと考えている」

 マルーサは、真直ぐエードを見て言う。

「どういう風の吹き回しですか?」

 エードは、答えず居るとムージンが腰の魔法剣を抜いて言う。

「これは、この世界でも数本しか無い、最強の魔法剣だ。ドラゴンすら断ち切る。大人しく全て答えろ」

 エードは、それでも答えない。

「死ぬのが怖くないの?」

 メイリーも問いかけるがやはり答えない。

 そして、マルーサが諦めた表情で言う。

「いいでしょ、あなたの連れの人と一緒に詳しい話を聞きましょう」

 その時、エードの顔が鋭くなる。

「まさかと思うがヤオに何かしたのか?」

 マルーサが頷く。

「少しでも情報が欲しかったので、うちの隊員を送りました。抵抗しなければ、無傷で……」

 その瞬間、ムージンのドラゴンすら断ち切る魔法剣がエードに握りつぶされた。

「もしも、傷一つでもついていてみろ、エッグオブワールドイーターなど関係ない。俺がこの世界を滅ぼす」

 圧倒的な力にメイリーが腰を抜かし、ムージンですら、震いを押さえられなかった。

 マルーサが本気で死を覚悟した。

「こら、脅したら駄目だぞ」

 ヤオの声にエードが慌てて駆け寄る。

「まさかと思いますがお怪我は、なされていませんか!」

 ヤオが頷く。

「当たり前でしょ。それより、マルーサ殿下。情報を渡したのは、時間が無いから。問題の儀式は、今夜だよ。儀式が終ったら、この世界の滅びを回避するのは、無理だと思って」

 マルーサが冷や汗を拭いながら言う。

「世界が滅びるって言うのに、随分と落ち着いていますね?」

 その問いは、ヤオ達の正体を探る為の物だったが、ヤオは、悲しい顔になった。

「あちき達は、これ以上干渉出来ない。どれだけ、多くの運命が消えていくのを知りながらもね」

 想像したどの答えとも違い、戸惑うマルーサ。

 エードも辛そうに言う。

「すいません。私の力が足らないばかりに……」

 ヤオが首を横に振る。

「全ての責任は、あちきにあるよ」

 そんな二人の会話にムージンが怒鳴る。

「そっちの事情は、解らない。それより、こっちだ! マルーサ、どうする? こいつらの言葉を信じるのか?」

 マルーサは、先程のヤオの顔に決心した。

「今は、彼女を信じましょう。メイリー直ぐに、皆に出撃の準備をさせてください」

 メイリーが頷く。

「はい、即急に!」

 動き出すマルーサ達。



 そして、出撃の準備が整う。

「はっきりした事は、殆ど解らない。しかし、これがこの世界の運命を決める戦いになるだろう。すまないが皆の命を預けてくれ!」

 マルーサの言葉に隊員達が頷く。

 そして、ムージンが舌打ちする。

「こんな事なら脅しであの剣を使うんじゃなかった」

 虎の子の魔法剣を失った事を後悔するムージンの傍にヤオが来て、剣を渡す。

「エードに壊された剣は、直しといたよ」

 ムージンが言う。

「あのな嬢ちゃんよ、あの剣は、それこそ、長い歴史の中でも指折りの魔術師と鍛冶屋が協力して生み出した物だ。お前が直せる物じゃ無い」

 そう言いながらムージンが剣を手に取った時、剣からの強烈な力に恐れ戦いた。

「おい、この剣に何をした?」

 ヤオは、笑顔で答えた。

「本来の力を解放しただけだよ」

「お前ら何者だ?」

 ムージンが冷や汗を拭いながら言うが、ヤオは、答えず、その場を去る。

 そこにマルーサが来て言う。

「多分、この世界の管理に関わる神の使いだろうね。神の世界にも色々あるだろうから、今は、これ以上の助力を期待する事が出来ない。こっから先は、私達がやらないといけない」

 こうして、マルーサ達のクライシス教団の強襲が始まった。



 強力な防衛魔方陣を張り巡らせたクライシス教団の本部。

「お前等は、大いなる神の裁きが振り下ろされるのをその場で見届けるのだ!」

 魔方陣の中から高笑いをあげる信徒。

「残念だが、俺は、そんなのを待ってられないんだよ!」

 ムージンが振り下ろした剣は、一撃で魔方陣を打ち砕く。

「馬鹿な、数十人の魔法使いが構成する魔方陣を個人で打ち砕くなど、不可能の筈だ!」

「黙れ、世界を滅ぼす邪教徒!」

 メイリーが疾風の如く突入し、次々と僧兵達を打ち破っていく。

「抵抗する者だけを相手にして下さい! 我々の目的は、一つ、エッグオブワールドイーターのみです!」

 そして、マルーサ達は、本部の中央のむせ返る様な血臭が漂う聖堂に到着した。

 教主が言う。

「まさか、ここまでこられるとは、予想外でした。しかし、もう手遅れです。私の命で、世界が原始に帰るのです」

「待て!」

 マルーサが叫ぶが教主の胸に突き刺さるナイフは、止まらなかった。

 死体が鳴動し、それは、外皮を持たぬ、血が滴る肉だけの四足の魔獣へと変貌した。

 メイリーが思わず口を押さえる。

「間に合わなかったのか?」

 ムージンの言葉に、マルーサが言う。

「まだです! 諦めないで下さい! まだ、発動していない筈です!」

「そうだ、しかし、暴走は、始まった。もう終わりだ」

 影からヤオを連れて現れたエードの言葉に、マルーサが首を振る。

「嫌です。私は、この世界を、この国を、私に命を預けてくれた仲間を護りたい!」

 そういって胸のペンダントを掴むマルーサを見てメイリーが慌てて止める。

「止めて下さい。それを使えばマルーサ殿下の命が!」

 マルーサは、強い決意を籠めて言う。

「多くの者の為に命をかける。これが皇家の者の定めだ」

 涙ながらメイリーが止める。

「しかし……」

 マルーサは、そんなメイリーにキスをして言う。

「それに、君を失うなんて絶対に嫌なんだよ」

 そして、マルーサは、魔法を発動させる。

 その光は、魔獣の体を喰らい、暴走を開始したエッグオブワールドイーターを消滅させていく。

 しかし、その光と増殖は、均衡を続けた。

「そんな……」

 絶望するメイリーだったが、ムージンは、違った。

「諦めてられっか! 俺の魔力を全部吸っても構わない、あれを打ち消せ!」

 魔法剣を振り下ろすムージン。

 少しだけ、光が押す。

「そうだ、私の命でマルーサ殿下の助けになるのなら!」

 己の魔力をマルーサに注ぐメイリー。

 それに続くように他の隊員達も力を注ぎこむ。

 そして、光は、増殖に打ち克った。



 脱力するマルーサ。

「何とか死なずに済んだようだ」

「マルーサ殿下」

 泣きつくメイリー。

 そんな二人を楽しそうに見るムージン。

 そこにヤオが来てマルーサに告げる。

「教えておいてあげる、いまの魔法で貴方は、五十まで生きられなくなったよ」

「本当ですか?」

 青くなるメイリーにマルーサが明るい顔で言う。

「それまでにいっぱい子供を作りましょう」

 顔を真赤にするメイリー。

「そしたら、遺児は、俺が立派に育ててやるぜ」

 ムージンが言うとエードが苦笑する。

「今のペースで酒を飲み続けたら、先に死ぬのは、お前だ」

 困った顔をするムージンにマルーサが笑顔で言う。

「それじゃあ、私の子供の為にもムージンには、禁酒してもらういますか?」

 ムージンが本気で悩む中、神々しい光を放ち、それが天に現れた。

『告、我は、この世界を統べる神。この世界は、エッグオブワールドイーターに穢された。もはや取り返しのつかない穢れなり。よってこの世界は、滅びる』

「……嘘、マルーサ殿下が命を賭けたのに、どうして!」

 メイリーが叫ぶ。

「滅びた筈だぞ!」

 ムージンの言葉にエードが答える。

「お前達には、見えないだろうが、エッグオブワールドイーターは、その種子をこの世界中に撒き散らした。その種子を放置すれば、この世界どころか、周りの世界も滅びるだろう」

 マルーサが悔しげに拳を握る。

「もう少し、もう少し早く気付ければ……」

 ムージンがエードに掴みかかり言う。

「お前達は、あの神様の部下なんだろ! なんとか出来ないのかよ!」

 マルーサが首を横に振る。

「無理です。その方達も神の使い。周りの世界を犠牲にする事には、手を貸せない筈です」

 そんな中、ヤオが告げる。

「影走鬼、やれ!」

『了解しました!』

 エード、影走鬼がヤオの言葉に答え、その姿を本来の影の鬼に変化させ、この世界の全ての影と同化する。

「あちきの中に籠めた、世界を滅ぼすのと同等の力の解放を許可する」

 影が一斉に動く。

 世界中の人間が、神の声の結果がこれだと疑わなかった。

 しかし、次の瞬間、天の神が戸惑う。

『馬鹿な、エッグオブワールドイーターが消えていく……』

 ヤオの隣で人と同じ形をとり、膝を着く影走鬼。

『全てのエッグオブワールドイーターの種子の消去を終了しました』

 メイリーが驚く。

「どういうこと?」

 そして、天の神がマルーサ達の前に人の姿をとり降臨した。

『貴様等、何者だ!』

 マルーサが戸惑いながら言う。

「あなた方は、神の使いじゃないのですか?」

 ヤオが笑顔で答える。

「あちきは、本当の名前は、聖獣戦神八百刃って言うの、影走鬼は、あちきの使徒だよ」

 降臨した神が震えだす。

『そんな、こんな辺境の世界に六極神の一柱、八百刃様が降臨されるとは?』

 ヤオが苦笑する。

「正確に言うとその分身だけどね。それより、さっきの神託は、誰からの命令。ここの最終判断は、あちきがやるとしておいた筈だけど?」

 降臨した神が慌てて言う。

『私の判断ですが、しかし、一度、発動したエッグオブワールドイーターは、いくら貴女様の力でも百パーセント排除することは、不可能の筈では?』

 ヤオは、あっさり頷く。

「そうだね。でも、この世界には、発動したエッグオブワールドイーターを止める意思と力を示した者達が居る。彼等が居る限り、万が一の時でも、対処が間に合うとあちきが判断した。その判断に口を挟むつもり?」

 首を振る降臨した神。

 ムージンがヤオを見て言う。

「詰り、どういうことなんだよ」

 降臨した神が慌てる。

『不遜者! お前等人間が話せる御方とでも思ったのか! この御方は、神々の統べる最上級神だぞ!』

 メイリーが顔をひきつらせる。

「嘘でしょ?」

 影走鬼が答える。

『真実だ。感謝するのだな、ギリギリまで待ち、お前達の行動を確認出来たのは、世界消滅即決権を持つ八百刃様が直にいらしたからだ。そうでなければ、エッグオブワールドイーターの危険度から考えて、もっと以前に滅びの決断がなされていた筈なのだからな』

 ヤオは、お気楽に言う。

「気にしないで良いよ、世界を管理維持するのが神様のお仕事なんだから。エッグオブワールドイーターを滅することで、この世界を救う道を作り出したのは、貴方達なのだから。それじゃあ、帰ろうか」

 そういい残し、影に消えていくヤオ、八百刃と影走鬼。

 降臨した神も消えていく。

 暫く呆然とした後、ムージンが言う。

「とにかく、世界は、救われたんだよな?」

 メイリーが実感なさげに頷く。

「そうみたいですね」

 その中、マルーサだけがまだ青い顔をしていたのでムージンが質問する。

「どうしたんだ?」

 マルーサが戸惑いながら言う。

「最上級神に兵隊を送ったって事が問題になるかもしれません」

 その一言に、周りの隊員達も青くなる。

 特に、ヤオの元に行った連中は、この世の終わりを再度感じるのであった。



 そして、数日後。

 何時もの酒場。

「とりあえず、あの件は、大丈夫だった、みたいですね」

 マルーサの言葉にムージンも渋い顔をする。

「嫌な事を思い出させるなよ」

 何時もだったら口の聞き方で文句を言うメイリーも何も言わない。

「一応、影走鬼には、間違っても罰を与えるなって釘刺しといたよ」

 マルーサ達が声の先を見るとヤオが居た。

「どうしてまだいるのですか?」

 ヤオが楽しそうに言う。

「この体の仕事が終ったから、フリーなの。上手く申請を誤魔化して、ここに卵料理を食べに来たんだ」

 嬉しそうに卵料理を頬張るヤオ。

『そういう事をやるから、分身の申請が通り辛くなって居ると自覚があるのか?』

 白い小猫の姿をした白牙が現れて言う。

「まだ、食べきってないんだい!」

 逃げるヤオとそれを追いかける白牙。

 呆然とするマルーサ達の前に影走鬼が現れて言う。

『八百刃様自身が気にしなくても周りの者まで同じと考えるな。特に八百刃様に媚を売る者もいるのだからな。出来るだけ知られないようにする事だ』

「へるぷみー!」

 ヤオが白牙に捕まり、そして影走鬼がヤオと白牙と共に影に消えていく。

 そしてマルーサが呟く。

「一生、この事は、しゃべりません」

 他の隊員達も頷く。



 クライシス教団の暴挙と降臨した神の件は、実情を知るマルーサ達がだんまりを決めた為、後世の歴史家達に多くの謎を残す事件になるのであった。

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