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女神の宮殿

谷口 明人の妻、渚は幸いに爆発の瞬間気を失った。 そして彼女が気がついた時、彼女のそばには美しい翼を付けるだろうは女性がいた。バルキリーの姿は作り出した者の思いによるもので女神になった辰巳が天使の姿を思ったせいだ。


「天使? いや天使様?」


渚は爆発の瞬間を思い出した。そして自分が死んだという事実を受け入れた。


『私たちはあなたが信じる神の使者ではない。 忘れられた古の神の一人であるフレイヤ様の使いバルキリーだ。簡単に言うと死神のようなものだ。』


「お母さん、お母さんも亡くなったんですね。」


ちょうど高校生になった娘、恵が涙を流しながら話した。渚は自分も、娘も、バルキリーと名乗った天使も人々が見ることも触れることもできない存在になっていることを悟った。


『分かっているようだが、あなたたちはすでに死んだ。』


渚は天使の話を聞きながら苦々しい表情になった。自分の遺体をつかんで嗚咽する明人の姿が見えたからだ。


(かわいそうな人. 申し訳ありません。 一緒にいることができなくて。)


谷口 明人は結構裕福な家の息子で、天才であった。 だが、それが彼を幸せにすることはなかった。 彼は誰にも理解されなかった。 忙しい両親たちは彼のそばにいなかった。

みんなは彼の富と才能にだけ関心があった。

人間に対する不信、家族の愛に対する飢え、理解受けることができない者の孤独によって彼の精神は社会不適応者のようになっていた。表には自身に満ちた青年実業家だけど内面はかなり病んで危なかった。

だれでも利用できると思っていたが同じように他人も自分を利用しようと思っていると信じていた。

そしてそのような彼を初めて哀れに思って人間的に接したのが彼女、渚であった。

彼女は欲があまりなかった。支出を減らすと儲けにこだわる必要がないと思っていた。お金と同じように時間も大事だと思っていたからだった。彼女の両親の教えでもあった。でもそのような考えで人々とつきあうのは難しい面もあった。両親を事故で失った彼女は孤独だった。

そのせいか彼女は欲のない目で彼の孤独を見ることが出来た。

彼とつきあい始めてから、いや結婚した後にも彼は凄く家庭的だが、同時にものすごいストーカーでもあった。 彼女を信じられないわけじゃなく、彼女を信じるけどとても大切でなくしてはいけないという強迫観念に彼女を追いかけた。

それで彼女は彼を愛するということと同時に哀れに思った。 明人を置いて行くのは出来ないとおもうくらいに。


『私たちはあなたたちが根源、例えば神のそばというか死の世界へ行くことを邪魔してあなたたちを抑留している。』


バルキリーの続いた話に渚と恵の目がバルキリーに向かった。 天使が死の世界へ導くのではなく、抑留しているという話は信じられなかった。


「何のお言葉ですか?」


彼女はキリスト教信者ではなかったが、事後世界で天使に会った今でも無神論に残るつもりはなかった。


『私たちの創造者であり主人である女神様があなたの夫の力を必要とする。 そのためにあなたたちを抑留した。 女神様はあなたたちに新しい身体と新しい人生をくださることができる。 ただし、それが以前の肉体と人生に戻るのではない。 あなたたちは女神様の世界で生きていくことになるだろう。 そしてあなたたちの夫でありお父さんである明人は女神様のために仕事をする代価であなたたちと会うことができるようになる。』


「その、そのような…」


バルキリーの話に渚の顔色が変わった。 死を受け入れる心の準備も終わっていないのに、状況が変わってしまった。


「夫に被害が及ぶことはあってはなりません。」


『全てのものは女神様の意にかかっている。 ただし、あなたたちの意思に反する抑留はできないとおっしゃった。 あなたたちの魂はこの世界に属するもの、あなたたちが願わないならばあなたたちを死の世界に行くように解放させる。』


『そして今の状況より彼にさらに悪いことはありそうではないな。』


娘恵のそばにあったまた一人のバルキリーが静かに話した。渚はバルキリーの話に同意するしかなかった。

決定的に自分たちの意思に反して抑留しないという、いや抑留できないというバルキリーの話を聞いては少しは安心した。


「私どもが同意すれば、どうなることですね?」


『あなたたちの同意だけでは問題が解決されない。 まずあなたたちが同意したうえ、明人と会って話を交わすことになる。 そして彼が同意すれば、あなたたちは女神様の宮殿で新しい肉体と生命を受けることになる。 もし彼が同意しないならば、あなたたちは根源、永遠の方のそばに戻ることになるだろう。』


「永遠な方? あなた方の女神様は永遠な方、すなわち神様ではないのですか?」


『私たちを創造された方で、私たちの主人だ。 そしてその方を神と信じる者たちの神だ。 ただし、永遠の存在でもなく完全な存在でもない。 それであなたの夫の力を借りる必要がある。あなたたち日本人が信じる神々はそのような物のはずだ。』


バルキリーは静かに、そして冷徹に話した。 そしてそのような姿がかえって渚の信頼を得た。


「受け入れます。 彼と話せるようにして下さい。」


『今はためだ。彼を観察する必要がある。葬式が終わるまでは待ってくれ。』


渚は少なくでもあの世に行く前、彼と最後の話だけでも分けることができるようになっただけ、それだけでもうれしく思うことにした。

そして葬式が終わった後予想のとおり、明人は喜んで彼女と娘のために何でもすると契約を受け入れた。


『それではまず、女神様の宮殿で案内する。』


バルキリーたちは二人の魂を連れて異世界アースガルドへ移動した。 そして彼女たちは女神に出会った。女神の姿は彼女たちが思った以綺麗だった。美の女神フレイヤについて恵は聞いたことがあった。


(想像以上と言うか、想像とおりと言うか。)


「ご苦労だった。谷口が協力することになったのは幸いなことだ。 あなたたちを歓迎する。」


渚がみた女神の宮殿はそれほど派手じゃなかった。 だが、心を込めて管理されている感じがした。

そして周囲を歩き回る美しいエルフの姿はいままで想像もできなかった別の世界に来ていることを実感させた。


「余はこのエルフたちの女神だ。 余が使う力は彼らから貰ったものだ。 人間の精神力を借りて、権能を行使する存在に過ぎない。 お前らが知っている無限の存在とは違う。 そしてこの世界は北区の忘れられた神々が作り出した隠れ場所。 この世界は神々の力で維持される所だ。 それで神々の力の根源である信仰心が消えれば、この世界は維持できなくなって、この世界に住んでいるすべての生命は命を失うことになる。 それで、無神論に溢れる地球の文化をこちら世の中に引き込んではいけない。 それが事実あなたたちに最も申し訳ないことである。」


「そのお言葉は…」


「あなたたちは選択をしなければならない。 地球の文物を調達して地球のように生きていく代わりに内宮殿で一切出て行ってはいけない条件を受け入れるか、地球の生活を完全にあきらめてこの世界の一員として生きていくか。 二つのうち一つは選択しなければならない。」


女神の説明に彼女たちは簡単に答えられなかった。


「地球に戻るのは出来ませんか?」


恵の質問に女神はしばらく口を閉じた。


「いつかは戻れる。 ひとまず説明をしておかなければならないだろう。 あなたたちが新しい肉体を手に入れた。その肉体はあなたたちのことだが、魂と完全に一つになるのはちょっと長い間の時間がかかる。 遺体離脱になりやすい状態だと言えるだろう。 余の領域にあれば問題はないが、あなたたちが属した世界に行けばあなたたちの魂がその世界の理によって、根源に引かれる可能性が高い。 1ヶ月に一日程度なら大丈夫と思われるが、三日以上滞留してもあなたたちは肉体を抜け出て行かなければならない所に行くことになる可能性が大きい。 ただし5年以上過ぎれば、その時はあなたの肉体と魂の結合が十分に強固になるだろう。 そしてその後にはどちら世界で生きるのか選択することができるはず。 あなたたちが地球式文明を選択するならば、外部と接触は切るだろうが、この案にあなたたちの住居環境を作れるように支援する。 もしこちらの人生を受け入れるならば、貴族の待遇を約束する。 もちろんこちらの人生を受け入れないといっても住民と対話するのを禁止するだけであって、監視下に外の見物をするのは容認する。」


女神の話に、母娘ははじめて顔が明るくなった。 理由もなしで地球に帰れないのではないようだった。

もちろんこの言い訳を作るために、女神が寝られず悩んだという事実は彼女たには想像も出来なかった。 少なくても1ヶ月に一日は地球に行ってくることができて、5年ほどが過ぎれば地球で帰っていく道も選択できるという言葉に安心することができた。


「もちろん死んでしまったあなたたちの身分は私が解決してくれることができない。 それはあなたたちの夫に任せなければならない。」


渚は過度に親切で詳細な説明に逆に違和感を感じたが、考えすぎだとおもった。 

そして意外に女神が話がよく通じると感じた。


プロローグが終わりました。

本格的な物語の始まりになります。


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