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人質と女神

 ゲーム上のキャラクターが持った銃は火縄銃だった。 もちろん一々装填する必要はなくただクールタイムが存在するだけだった。 エルフ族だと銃より弓の方に長所があるようだったが、銃より弓に上手だということだけで、銃を扱えないのではなかった。

 そして、現代人の彼に銃の方が使いやすかった

 調教師は基本的に遠距離攻撃キャラクターだ。 そして状況に合わせてモンスターを召還して使うことになっていた。

 同時に働かせることができるモンスターは始めは一匹だけだが、レベルが高くなるほど数が増えるようになっていた。

 もちろん、調教師を除いた他の職業もモンスターを働かせることができた。

 トレーナー(調教師)は働かせるモンスターの能力を向上させる能力中心になっていた。

 ゲームの開始は普通のゲームとあまり差がなかった。 村を守る民兵隊隊長に行けば簡単な狩猟技術を習得できるクエスト(依頼)を提供した。

 ウサギとキツネ、野良犬などを相手にしながら序盤レベルを上げる一般的なゲームだった。


(適当な水準だけなっても十分に現実世界では詐欺的な能力だから。)


 3時間ほど過ぎて、レベル10に達したし、モンスターのテーミング(手なずけ)を習うことができた。

 このゲームに登場するテーミング モンスターは普通3段階まで進化させることができた。

 道端にあるウサギもよく育てて最終段階である3段階まで進化させればボス級の険悪な外見を持つ『最終形態ウサギ』になった。 もちろん鋭い歯と足の爪、コウモリの翼を持つ巨体の野獣を『ウサギ』と呼ぶことができるかはべつとして。

 小さいモンスターを成長させるのも面白味はあるだろうが、直ちに使う電力が必要だった。

 ゲームの中では敵を殺せば殺すほどレベルアップになるが、果たして異世界に行ってもそうなるかは疑問だった。 いや人々にレベルが存在しないだけに、レベルアップはない可能性が高かった。

 最大レベルまで育てるのも良いが、一応、低レベルのままでで先に異世界に行ってみると思った。

 最大のレベルまでは時間もかかるしその間にエルフが減って女神席が飛んで行くかもしらなかった。

 先ずはゲームの能力が異世界で反映されるだろうか。

 ゲームの中のアイテムを異世界で使用できるだろうか。

 異世界でゲームのように経験値を得ることができるだろうか。

 いろいろ考えるべきものが多すぎて頭が複雑だった。


(やはり、権力者を一つそそのかすべきではないだろうか?一人では無理だ。)


 彼はゲームをしながら、悩んでいた。バーチャルリアリティ ゲームはマウスでクリックすることとは違うが、現実的に動くものともやはり違った。

 感じはマウス クリックにさらに近いものだった。 考えればそのとおり勝手に動いて戦ってアイテムを拾った。

 異世界で動かしながら感じたことは、現実とあまり変わりはなかった。

 彼が剣士や弓使いではない、調教師と銃を選んだことはそのためだった。


(むやみに人を引き込むことはできない。 だが、俺と共に運命共同体になればどうだろうかな? 愛する人々が女神の宮殿で留まることになれば、話は変わるだろう。 でも人質を捉える? それはお話にならない…)


 その時、彼が思い出したのは復活、いや魂を捉えて新しい肉体に入れる技術(奇跡)だった。

 オーディンが勝ち取った死を超越する技術.

 それがあるならば、死ぬ前にバルキリーを付けてその魂を一時的に捕まえた次に新しい肉体に入れるはずだ。


(そうだな。 そうなると自然に人質を確保することができるだろう。)


 すでに死んだ人を再び生き返らせることだ。 そして彼らが女神の宮殿に留まらなければならないと話せば問題はないと思った。

 フレイヤの記憶を参照して、実現の可能性を点検してみるまでもなかった。 バルキリーは厳密に話せば天使でなく、死神に近い存在であった。

 特定条件を備えた人が死を迎える瞬間、彼らを捜し出してその魂をおさめるのは彼女らの特技であった。

 実現の可能性は確実だった。

 組織暴力関係者は信頼できなく、政治家もそれほど信頼できなかった。 財閥家の人は能力があるのかも不明で家族と権力を分担して血縁で絡まっていると使い難くなると思った。

 自分の力たけで一家を成した人物の中で、家族を極力愛する人.


(そのような人が世の中にどれぐらいいるのかな。一人でもいることを望むしかないのか)


 彼は内心ため息をはいた。 だが、試す価値はあった。

 まずはレベル10のボスモンスターである『リザード ナイト』をテーミングした. 『ブラッドライン』最初のボスモンスターで、ドラゴン ナイトとしても過言ではない程すばらしそうな外見のものだった。

 初めてのボスと最終ボスを最もかっこよく作るのがゲーム製作の原則といってもよかった。

 そして彼はプラグインを実行させて、彼が作った女神の世界へ入った。

 モンスターが完全に絶滅した世界、平和が充満した世界が彼の目の前に広げられた。

 見どころもなくて遊ぶ物もないつまらない世界だということには間違いなかった。


「考えてみると指輪を貰うことができないな。」


 同時に二つのキャラクターで接続することはできない。 指輪を渡す中間媒介体が必要だった。

 女神キャラクターにはインベントリもなく、一般キャラクターとアイテムをやりとりする郵便機能も存在しなかった。


(バルキリーを一つ、倉庫管理用で置けば良いだろう。)


 考えは再び人質確保で流れた。 人質を作るのは簡単な問題ではなかった。

 1人だけ死ねば、一人で見慣れない世界で耐えるのが難しいことで三人以上は多かった。


(このように度々条件が狭まれば本当に対象者探すのが容易でないのに。)


 ひとまずブラッドラインでログアウトをした後、『運命』にログインをした。


(考えてみるとインベントリもないのに指輪をはめていたな。)


 現実の人間もインベントリのような便利な存在はないが、物をかけたり持っていることはできた。


(こうすることができたら武器でも一つ落とし込んでおくのにそうしたよ。)


 女神が銃を取って歩き回るということもちょっと可笑しいな気もしたので彼は一人で苦笑いをした。そろそろ、エルフたちが集まる時間になっていた。

 彼は女神のまま、異世界への扉を開けた。


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