―第七話華の中の少女
ついに〜!ヒロイン登場☆と言ってもまだあんまり話ません;今回の話、《》の中は略なんですけど、カタカナなので読みにくかったらゴメンナサイ↓↓
―第七話―
「…何だ?ここ。」
少年は辺りを見渡すと
灰褐色の瞳をいっぱいに広げ、間の抜けた声でそう言った。
吹っ飛ばされた後
ディオルは思っていたより小さかった穴に、とっさに自らの剣を刺し奥に煉瓦が倒れるよう周りに切り込みを入れ、
間一髪のところで手を掛けると、なんとか中に入り込んだのだった。
「どうなってんだ…?」
もう一度、周りを見回す。これが…光の原因?
部屋の、いたるところには壁の石が何色なのかも解らないほどに細い金色の糸のような物がはりめぐらされていた。
気付かずに歩けばすぐに足を取られてしまいそで、ディオルは慎重に歩きながら近付き、壁を触る。
過細い金糸はキラリと輝きながら、柔らかく揺れた。
…何でこんなモンの光が、オレにだけ見えたんだ?
壁を伝いゆっくり歩いていると、壁がないのか穴なのか、
スィっと金糸が揺れ中に腕が入る。
まだ奥に部屋があるらしい。
ディオルは少し屈みながら指で揺れる糸を掻き分け
奥へと入り込む。
「……は。」
瞬間、言葉を失った。
部屋はやはり金の糸に囲まれ光輝き、屋根は崩れ落ちていて、ほとんどないに等しかった
その隙間から…まるで差し込む月明かりを浴びているかのように
例えるなら
まるで
輝く華の
蕾のような
金糸の塊があった
…ドキン
まただ、鼓動が早くなる。オレを呼んでた
『何か』がそこにある。
ディオルは、本能的にだろうか、何故かそう思った。
一歩
また一歩
『それ』に近づいていく
鼓動は、まだ鳴りやまない
それどころか
より一層
強くなる。
金糸に手を掛ける
警戒心はなかった、まるでこれが
危険なものではないと、知っているかのように。
触れると金糸は
―シャラン―
と音を奏で
溶けるように消えた
そして
中から
現われたのは
「……………女……?」
青紫の
見たことのない髪色をした少女だった。ディオルは少女を黙って見下ろすように覗き込む。
……。
長いまつ毛を伏せ、眠っている少女。
体は細く、色は白い。
だが先程から香っているこの甘い香は
確かに彼女から発していた
………死んでる…よな?
ディオルは、確かめるように
そっと少女に手を伸ばす。
…あっ…
「あったけぇ…。」
触れた頬から伝わる温もりは、確かに
少女が生きている証だった。
…でも
「何でこんなトコに…。」
「…………ネ…?」
「ッッ!!!」
少女の口が微かに動いた。ディオルは頬から手を物凄い勢いで放す
視線は少女に向けたままで。
少女は、
ゆっくりと
瞳をあける。
吸い込まれそうな程深い紫の瞳が、緩やかにディオルをとらえた。
「……。」
ディオルはまるで声を失ってしまったように、身動き一つせず、ただ黙って
少女との視線を外せずにいた。
「……?」
ムクリと金糸の中から起き上がる、
少女は
とても薄そうな生地で出来た、レースがいたるところに付けられている細かい刺繍がいくつも描かれた、膝丈のドレスのような服に身を包まれていた。長くのびた髪が
サラリと揺れる
そして不思議そうな顔をして再びディオルを見つめた。
「ディオ太〜〜!何かあったかぁ!?何でもいいからとりあえず持って来いってぇ〜!」
「…っ!」
遠くから、ガウロの無駄に大きな叫び声が聞こえ、
ハッとして我に返った。
「…ってーか、“何か”ならあったけどよ…」
唸るように下を向くと
チラッと再度少女を見る。少女は、あいかわらずただボーっとディオルを見つめているだけだった。
「てか、よ。お前名前は?ここ住んでる…わけねぇよなぁ。」
「……?」
少女は何も言わない、ただ不思議そうに首を傾げるだけだ。
ディオルは何を言ったらいいのかサッパリ解らず混乱し、
「あ〜〜…;;」
とまた唸る。
「おい!!早くしろってぇ〜の!もぉ闇者が来ちまうぞ!」
「っ!〜…わぁったよ!!おいお前!とりあえずこっから出るぞ!」
ガバッと立ち上がり、彼女を無理矢理ひっぱり上げる。膝丈のドレスについたレースがふわりと広がる。
「…!?」
が、少女はふらつき
ディオルの方に倒れこむ。
「ちっ!しょうがねぇな。」
グイッ!軽がると、けれど乱暴に抱え、ディオルは入ってきた穴に向かい走りだす。
やはり少女は軽かった。
「しっかり掴まってろよ!」
言うなり、走ったまま思い切り勢いをつけ穴から飛び降りた。ふわっと腰の下まである少女の長い髪が宙に浮く。
「キャ…ア…!」
ディオルにとってはたいした事ない高さだが、少女は違ったのだろう。
叫び声が微かに聞こえたが、スピードを落とせる訳もなく、逆にそのまま速度を上げ落ちていく。
ディオルは、上手く空中で態勢を返ると、そのままトンッと着地した。
「ふぅ…。」
息をつき、前を見る。
すぐ目の前に2人はいた。…が、どちらもこちらを向いていない。
何か…おそらく先の闇者が近づいてくる気配を感じ
階段があるその方向を見つめていた。
「おっせ〜よディオ太、闇者到着寸前だぜ〜?」
「…っせーな、色々あったんだよ。つーか闇者倒したんじゃなかったのかよ?」
こちらを見ずに話し掛けてきたガウロに、ディオルは最初言葉を濁らせながら答える。
「倒すなんて出来っこないわよ、レベル5はあるわよ?あの闇者は…無傷なだけでも十分ありがたいわ。」
「へーっ、こんな遺跡にレベル5ねぇ。…はっ!?
レベル5!!?」
闇者はある程度強くなると、レベルで判断される。
レベルは10からあり、数が減るにつれて強さを増していくのだ。
レベル5の闇者は今のディオル達3人が、万全の調子で戦ったとしても。
適うかどうかのレベルだ。
「だからそう言って…ちょっ!!ディオル!何よその子!?」
ディオルの方に振り向いた瞬間、ルネットはギョッとしたような顔をして大声を上げた。
少女は今だディオルの腕の中でジッとしている。
「ルネ、今はとにかくどぉやってアイツから逃げるか考えよう…って、あら〜来ちゃったよ。」
『グオオォオオッッ!!』
ガシャーン!!
荒々しくドアを破壊し、怒り狂ったようなようすの闇者が姿を現した、
右目の血はすでに止まっているらしく黒い痂らしきものができているだけだった。
反対側も潰しとけばよかった〜…。
心の中で一人今更後悔するガウロ。
「おいッ!ムチャクチャ怒ってんぞ!!マジで逃げ切れんのかよ!?」
ディオルは改めてその闇者を見ると、焦ったようにそう叫んだ。
こちらには、戦い慣れなどまるでしていなそうな少女がいるのだ。
「…まぁ、見つかったからにはやるしかないっしょ〜。」
ガウロは答えながら長剣をゆっくり手に掴み、構える。
「いくわよ。」
ルネットが静かに言い、それぞれが行動を開始しようとした
――――その時。
「…バィグトゥ!!」
《…ヤメテ!!》
闇者の動きが止まり
聞いたことのない声が部屋全体に響いた、
聞いたことのない
言葉で。
「…あ?」
ディオルは少女を見た。
今の
コイツが?
…フワン…
まるで重力など感じていないみたいに、少女はディオルの腕から飛び降りた。
その瞳は、闇者をまっすぐ見つめている。
「お…前?」
ディオルは低い小さな声で言う。
「てか〜!誰?その子!」
今初めて少女に気付いたらしいガウロが驚いたように声を上げた。
3人が見つめる中、少女は前方にいるルネットとガウロの間をゆっくりと抜け
闇者の前に立つ。
「ちょっと!!危ないわよ!?」
ルネットは叫ぶが、聞こえているのかいないのか。
少女に動く気配はなかった。
そして、静かに。
「バグィ、ンベカルォシババンク…ジョヌィバンティイシトナ…ティマナゾルルォプッジォティダケイシル…バィグトゥ…。」
《ダメ、オネガイダカラ…タタカワナイデ…ワルギガアッタワケジャナイノ…ヤメテ…。》
と、宥めるように言った。
鈴が鳴るような
綺麗な声で。
『グオォ…』
怒りに満ちていた闇者の顔が徐々に解れる。
「バイグトゥ、ナハライシトナ。」
《ヤメテ、タタカワナイデ》
今度ははっきりとした、だが優しげな声色で言う。
3人は、茫然とそこに立ち尽くし
ただ黙って少女を見つめていた。
闇者からはすでに殺気はなく、大きな黒い体をドスンドスンと音をたてながら向きをかえ、闇のなかへ引き返していった。
「「「……。」」」
沈黙が流れる中、
今だ闇者が消えた方を見つめている少女から
3人は誰一人目を離すことが出来なかった
だが、誰一人口を開くことも出来なかった。
少女は気付いたようにクルンとこちらを振り返ると、そのパッチリとした大きな瞳で3人を順番に見つめ。
「レッワァ…ティグイヌクトゥ。ミフィアトナナルー!」
《エットォ…ハジメマシテ。ミフィアデス!》
ディオル達がサッパリ理解できない言葉を告げ終えると
少女は、ニッコリと微笑んだ。




