―第十話髪と空腹
―第十話―
ハラリ
数本の髪が床に落ちる。
「ワゴクヨ〜〜!!ディオォ!!」
《ドウシマショウ〜〜!!》
「何つってるかわかんねんだよっ!!おいコラッ!近寄んじゃねぇ!!」
自らの髪を片手いっぱいに持ち、ミフィアは混乱しながらディオルに近づいた。ディオルはいかにも嫌そうな顔をしている、とりあえずミフィアからはさみを取り上げる。
「ミフィイルバンパルォ〜〜!」《カミガ〜〜!》
「だからわかんねぇって!テメェがこんなもん持ってっからだろがっ!!」
彼女の腰の下まであった長く美しい髪は、一掴み程度ではあったが無残にも胸の少し上あたりで揃えられていた。
「ディオォオ〜!!」
“くっつけて”とでも言いたげに髪を握った方の手をディオルの前に差し出す。
「どぉしろってんだよ!!」
「ディイオォオオ〜!!」
「オレはディオル、だ!!」
「ディオ!、…ル?」
怒鳴られ、泣いてはいないもののグスンと涙ぐんだ声でミフィアが言うと、上目遣いにディオルを見ながら髪を持っちながら振り回していた手をとめた。
「はじめからそう言ってんだろ!…たくっ、つーかもうその髪じゃ揃えて切るしかねぇだろ。」
「……?イツ?」
《ナンテイッタノデスカ?》
「あ゛〜クソ、しょうがねぇなぁ、…座れ!」
ディオルがドスンとその場に座り、指でトントンと床を指すと
ミフィアは意味を理解し素直にディオルの前にチョコンと座った。
フワッ…
はじめて会った時に香った優しい華のような香が、ディオルの鼻をつく。
日当たりが悪い部屋に微かな光の筋が差し込んだ、
少女の艶やかで美しい青紫の髪と
対照的な少年の鮮やかな赤みがかった緋色の髪が並ぶ
ディオルは不満げな顔をしていたものの、持っていたはさみを握り直し
静かに少女の髪に触れた。ミフィアはシャキンシャキンという音が聞こえだすとはじめは何をしているのか不安そうにモゾモゾしていたが、やがてその単調な音に安心したのか
眠るように瞳を閉じて落ち着きを取り戻した。
ガチャン
古ぼけた木製のドアを開けルネットが大きめの紙袋を持ち姿を現す。
「ただいま、ごめんなさい店が解らなくて思ったより時間が………って、きゃあっ!ディオル!!アンタミフィアに何したのよ!!!」
入るなりドサッと荷物を落としミフィアを指差して壁を背にベットの上に座るディオルに向かい怒鳴る…というより叫びに近い声でルネットが言った。ミフィアは床の上に座りながら
「ルネー♪ンバンレルー!」
《オカエリナサイ!》
と明るく言うとトトト…と笑顔で近づく。
髪は数分前とはまったく違い、綺麗に胸の少し下あたりで揃えられていた。
「見て解んねーのかよ。」
「解るわよ!何でこうなったか聞いてるの!!」
ぶっきら棒にディオルが答えるが、更に声を荒げたルネットがミフィアの毛先を少しだけ摘み揺らしながら聞いた。
「テメーで切ったんだろ?はさみ持って遊んでたし。」
オレが切ったなんて死んでも言えるか。
しかたがなかったとは言え、やっぱりあんな奴の髪を切ってやるなんてどうかしてる…。
ディオルは内心そう思いながらもとりあえず平常心を装うことに集中する。
考え事が顔に出やすいタイプだと、いつかガウロにバカにされた事があったからだ。
「そ、そぉなの?…まぁ、髪色もあまりない色で目立ってたから丁度いいけど…」
ミフィアを見ながらやっと納得したようにルネットが言う、その直後
何を思ったのかミフィアがクルッとディオルの方を向き、
「ディオ!イヌジョ《マタ》チョキチョキな!」
そう楽しそうに笑って指ではさみを使う仕草をしてみせたのだった。
「…?どうゆう事?」
「バッ!!別に何でもねーよ!」
その一言で完璧に平常心を崩し、勢い良く立ち上がり汗りながら答える。
「でもチョキチョキって。」
「しつけーんだよ!オレは腹減ってんだ!そいつの服買って来たんならさっさと着せろ!飯だ飯!!」
それだけを一気に言うとドカドカ足音をたて
「準備出来たら呼べよ!」
と声を上げて部屋からでていってしまった。
「何なの?アイツ。」
まったく理解できないわ。と思いながら、しばらく戸口を見ていたが
気を取り直し落とした紙袋を拾いあげ、
「さっ、じゃあ着替えましょっか。」
ニコっと笑いながら袋からさくら色の布を取り出しはじめた。
幾分かたって、2人の部屋のドアをトンッと一つだけノックすると
何の遠慮もなしにガチャンとドアを開けたと思えば、
「ルネ〜腹減ってもぅ限界ぃい〜。」
腹部を押さえて弱々しい声で緑色の髪をした青年が入ってきた。
「ガウロ!返事するまで開けないでっていつも言ってるでしょ!…まったく、でもいい時に来たわね、ちょうど今呼びにいこうと思ってたのよ。」
「へ〜、それはよかっ……あれ?ミフィア何か違くない?腹減りすぎでおかしく見えるとか?」
そう言うと目をパチクリさせて今し方着替え終わったばかりのミフィアを見る。少女は買ったばかりの服に身を包み
少しはにかんだ笑顔で
「ガウロ、ミフィにぁう?」
と聞いた。
どうやらさっそくルネットに言葉を教えられたらしい。
「似合うよ〜!可愛い可愛い♪よかった俺がおかしいとかじゃなくて。」
ガウロは素直に感想を言う。
「と言うより、おかしいのは空腹のせいじゃなくてアンタが脳みそ筋肉バカだかでしょ。」
「ひっひど!!」
「髪は自分で切ったらしいの、服は私が見立てたのよ?」
「そっか〜♪ルネってば実はこぉゆう女の子っぽいの好きだよね〜。」
笑いながらガウロが言った。途端に顔色が紅く紅葉していくルネット。
「う、うるさいわね!別にいいでしょ!」
誉めたつもりだったのだが逆効果だったらしい。
ガウロは“ありゃ”と心のなかで呟いたが、
怒る時以外にめったに表情を変えない彼女の照れた顔が見れて、今度は満足気にニッコリと笑う。
「何、笑ってんのよ?」
抑えめの声でルネットがガウロを見る、
これもまた珍しい行動だな、とガウロは思った。
「うん。ルネが可愛いなって。」
「っ!?」
「ぷくく…ほら、早くディオ太連れて飯行こぉぜ♪」
3人は揃ってディオルを部屋まで呼びに行き、
ガウロ同様弱りきった様子の彼を連れて
やっと4人が集合した所で階段を下り一階にある食堂へ足を運んだ。
そこで初めてこの宿屋の食堂が、外から見た時には想像がつかないくらい広々としている事が判明した。
ただ明かりは低めの天井の中心辺りに大きくついているだけで、昼間だというのになぜか薄暗かった。
ルネットを待っている間に食事時は通り過ぎたのか、それともただ単にこの不気味な宿屋に泊まっている人がいないのか、
とにかく食堂には数える程しか人の姿は見当たらなかった。
がら空きの席にそれぞれつき、注文をする
ミフィアは字を読むことが出来なかったためルネットが代わりに適当な食べものを頼んだ。
しばらくすると、それまでそわそわとしながら黙っていたミフィアが口を開く。
「ディオ、ミフィなにぁう?」
「…へ?」
ガウロと毎度お馴染みの言い争いをしていたディオルが、初めて気付いたかのような声を上げる。
そして黙ってまじまじと真新しい服を眺めた。
ミフィアはさくら色の薄ピンクの胸のしたまであるベストをはおり、中には大きめの刺繍が施されたややオレンジが入った朱色のワンピースを来ていた。
可愛いらしい色合いが少女の愛くるしい顔を一層引き立てる、
要は
とてもよく似合っていたのだ。
「ャ〜〜♪ディオ太ってばぁ、ミフィアが可愛いからってそんな見つめんなよ〜。」
ガウロが直ぐ様ちゃかしに入る。
「あぁ!?アホかテメェ!オレがいつこんな奴見つめたってんだ!!」
「今まさに見つめてたじゃんか〜!このエロおやじぃ☆」
「アホかテメェエ!!だぁれがエロおやじだぁ!!!」
「ディオ〜?ミフィ」
「うっせぇな!似合わねーよっ!!!」
「…。」
まんまとガウロのペースにはまるディオル、
結果として勢いで言ったがもともと“似合っている”なんて言う気は更々もっていなかった。
ディオルにしてみれば
闇者が目の前にいるのと何ら違いはないのだから、たとえ姿形が少女であっても
ディオルは憎かった…
あの日
目覚めた時から
自分が唯一はじめから
持っていた気持ちだ。
「ディオル?言っとくけどコレ、私が買ってきたのよ?」
ルネットの声で我に返る、知らない間に料理は目の前に運ばれていた。
向かいではぎこちない手つきでオムライスを食べているミフィアがいた。
隣を見ると、ガウロはすでに頼んだ大盛りミートローフを口に運んでいる最中だ。
…静かになったわけだな。
ディオルも思いながら注文した大盛りミートスパゲティーを一口、口に含む。
「…ディオル?聞いてた?」
「あ?何が?」
「アンタ一週間雑用決定!!!」
「はぁ!!?んだよそれ!意味」
「解んないとは言わせないわ、私のセンスを侮辱したバツよ。」
「ふごふごぐー☆」
《雑用決定ー☆》
「何だよ!食いながら話すんじゃねぇ!!」
ベシンとガウロの頭を叩き顔を上げると、
ルネットも好物のポトフをぱくりと一口口に運び告げた。
「決定、だからね!」
まだ日が射す時間だというにもかかわらず
この場所と同じように
自分もお先真っ暗だ…そう感じた昼過ぎだった。
「けって〜♪」
ミフィアの鈴の音のような明るい声が、
響いて聞こえた。
何か今回は少し気分がのらなくてヘンテコな終わりになってしまいましたぁ〜☆気付けばついに十話突入!!てか、私の小説って話進のおっそ〜〜;;こんな所まで読んでくださったあなた!!本当にぁりがとうございますっ(*〇´∀`艸)




