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婚約破棄された悪役令嬢のスローライフ。辺境で農業をしていたら、いつの間にか溺愛されていました  作者: 黒崎隼人


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エピローグ:黄金色の未来へ

 あれから、さらに十年が過ぎた。


 私、セリーナ・グリーンフィールドは、五十路を少し過ぎた頃だろうか。鏡に映る自分には、目尻に優しい皺が増えたけれど、その瞳は今も変わらず、未来を見つめている。


 夫のエドワードも、髪には白いものが混じるようになったが、その背筋は真っ直ぐに伸び、今もなお、グリーンヴァレーの大地と、そして王国全体の農業を見守る「大地の賢者」として、人々から尊敬を集めている。


 私たちの息子アランは、立派な青年に成長し、父の跡を継いで農業学校の校長となった。彼は父譲りの才能と、私譲りの優しさで、生徒たちから絶大な信頼を得ている。そして先日、彼は同じ学校の教師と結婚し、私たちはついに、おじい様とおばあ様になった。


 娘のクロエは、王都の大学で植物学を修めた後、グリーンヴァレーに戻り、新しい品種改良を専門とする研究室を立ち上げた。彼女の情熱は、若き日のエドワードを彷彿とさせる。


 今日は、私たちの最初の孫、小さなリリーの誕生日。丘の上の我が家には、子どもたち家族が集まり、賑やかな声が響いている。


 私は、焼きたてのアップルパイを運びながら、その幸せな光景に目を細めた。夫がいて、子どもたちがいて、そして可愛い孫がいる。こんな未来が来るなんて、かつて王宮の片隅で泣いていた私には、想像もできなかった。


 夕暮れ時、私はエドワードと共に、昔と変わらず、二人で丘の上に立った。眼下には、孫のリリーが、成長したアランとクロエに手を引かれ、黄金色の麦畑の中を駆けていく。


「見て、エドワード。私たちの宝物が、あんなにたくさん」


 私の言葉に、エドワードは何も言わず、私の肩を優しく抱き寄せた。


 風が吹き、麦の穂が歌うように揺れる。それは、私たちがこの地で紡いできた、愛と努力の物語そのものだった。


 悪役令嬢と呼ばれたあの日々があったからこそ、今の私がある。絶望の淵に立ったからこそ、掴めた幸せがある。私の人生は、麦畑に咲いた一輪の花のようだったかもしれない。けれど、その花は多くの種をつけ、今、見渡す限りの豊かな実りとなって、この大地を黄金色に染めている。


 隣に立つ愛する人の温もりを感じながら、私は幸せに満ちた心で、永遠に続くかのような麦畑の歌に、静かに微笑み返した。物語はここで終わるけれど、私たちの人生は、この黄金色の未来へと、これからもずっと続いていく。

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