【Bar風花】第二章 シトラスの精油と桜の花びら 〜無粋な言葉を撥ね退けた夜に芽生える夫婦の絆〜
【前書き】
※『Bar風花』の日常を描いた、大人の純愛ストーリーです。
※無粋な客との静かな攻防から、日常の甘いひととき、そして家族の思いまでを紡いだ物語となります。
※暴力的な描写はございませんので、ゆったりとした気持ちでお楽しみください。
夜の静寂を守る『Bar風花』のカウンターに、土足で踏み込む無粋な雑音。
凛とした佇まいで店を守るオーナーバーテンダーの美和と、その背中を静かに支える夫の天。
夜の毒を爽やかなレモンの香りと甘い蜂蜜で洗い流したあと、ふたりを包み込むのは一足早い春のような陽だまりの時間。
去りゆく息子の背中と、桜の花びらに見守られる至福の休日。
どうぞ、そっとカウンターの向こう側を覗いてください。
第1章:鉄刀木を叩く雑音
風花町の夜は街灯の橙色が薄暗い路地に静かに滲むようにして深まっていく。
細い路地の奥に古風な真鍮ランタンがアンバー色の柔らかい光を放つ重厚なオーク材の扉がある。
その先にある『Bar 風花』の店内は程よく空調の効いたひんやりと静かな空気に満たされていた。
耳を澄ませても旋律というより残響に近いピアノの最後の余韻と古いレコードの針が落ちる微かなノイズだけが空気の中に溶けている。
立派な鉄刀木の一枚板を磨き上げたカウンターの端。
何十年もの歳月が刻んだ僅かな傷や指の跡が控えめな光沢となって浮かび上がるその場所で櫻庭天はウーロン茶の入ったロックグラスを静かに傾けていた。
ルポライターとして長年培われた鋭い洞察力そのままに彼は一切の動きを見せず店内の気配を把握している。
その時重厚なオーク材の扉が不躾に開き鉄刀木の木肌に不釣合いな雑音が入ってきた。
入ってきたのは三十代半ばと思しき高級スーツを身に纏った男二人だった。
すでに数軒は梯子してきたのだろう。
足取りは覚束なく革靴を床に擦る粗暴な音が静寂を乱す。
「——だからさ、あの政党のやり方は甘いんだよ。俺ならもっと大胆にやるね!」
一人がカウンターの上に乱暴に肘を突き昨今の政治について大きな声で不満を叩きつける。
隣の連れも負けじと贔屓のプロ野球チームの不甲斐なさを嘆く大声を張り上げた。
やがて話題は職場における部下の無能さをなじる醜い悪口へと滑り落ちていく。
バーにおける不文律——政治や宗教やスポーツという個人の情熱や信念に直結する3S。
解き放たれたエゴと他者への侮蔑。
彼らは足を踏み入れた瞬間に大人の社交場における境界線を足蹴にしていた。
カウンターの先客である老紳士が不快そうにわずかに眉をひそめバカラのグラスを静かに置く。
カウンターの奥で氷を牛刀で削っていた美和の細い手がぴたりと止まった。
「ねえ、バーテンダーさん」
男の一人がカウンター越しに美和の顔を覗き込むようにして声をかけた。
その濁った視線は彼女の右目がワインレッドで左目がアンバーという神秘的な異色瞳を下品に舐めている。
「君、綺麗な目をしてるね。ハーフ? それともカラコン? 独身なら、今度俺たちがいい店に連れて行ってあげようか。ここ、給料安そうだしさ」
プライバシーへの土足の介入と女性に対する性的なニュアンスを含んだ侮蔑。
美和は手にした氷と牛刀を音もなく作業台に置くとゆっくりと男たちの正面へと進み出た。
深みのある赤褐色に艶めく鉄刀木を挟み彼女の異色瞳が照明を反射して凍てついた高嶺の宝石のように冷ややかな輝きを放つ。
「お客様」
その声は低くそこに滲む凛とした響きは澄み渡っていた。
しかし騒いでいた男たちが思わず息を呑むほどの圧倒的な圧がそこにはあった。
「当店は、お酒の味と、お客様の静寂を守るための場所でございます。……今、お客様がこのカウンターの上に並べられた言葉は、あいにく当店ではお出しできない銘柄ばかりでございます」
「なんだよ、ちょっと冗談言っただけだろ……」
男が気圧されながらも食い下がろうとするが美和の視線は微塵も揺らがない。
彼女は男の前に置かれたまだ半分ほど残っているウイスキーのグラスをスッと滑らかな動作で手前に引いた。
「お酒が、泣いております」
「は……?」
「政治への憤りや他者への不満、そして女性を品定めするような言葉と一緒に喉を通ることを、このお酒は望んでおりません」
美和は冷やしたチェイサーの水を新しいクリスタルグラスに満たし男の前に静かに置いた。
「今夜のアルコールは、ここまでになさいませ。そのお水で、一度言葉を濯いでいただけますか。……お会計の準備をさせていただきます」
「チッ、気取った店だな」
男たちは吐き捨てるように言い放ち乱暴に千円札を数枚カウンターに叩きつけると逃げるように店を飛び出していった。
扉が重々しく閉まりカチャリと静寂が戻る。
美和は深く一礼し残されたグラスと札を速やかに片付けた。
そして先ほどまで不快な思いをしていた老紳士の前にそっと小さなクリスタル皿を置く。
「お騒がせいたしました。……これは店からの心ばかりのお詫びでございます」
供されたのは微かに桜の香りが漂う自家製のチョコレートだった。
老紳士は美和の凛とした横顔を静かに眺め満足そうに深々と頷いた。
「いや、いいものを見せてもらった。ここのカクテルに濁り一つない理由は、バーテンダーの『芯』がそれだけ澄んでいるからなのだね」
「恐縮でございます」
美和は再び静かに微笑むと何事もなかったかのように手元のクロスでグラスを磨き始めた。
その瞳は穏やかなアンバーとワインレッドに戻っていた。
だが彼女が守るこの聖域の門は無粋な者には二度と開かれることはないのだと静かな佇まいが物語っていた。
第2章:盾を払うレモンの香
最後のお客が店を後にし重厚なオーク材の扉が閉まった。
美和は静かにCloseの札を表に返し深く長いため息をついた。
それはプロのバーテンダーが盾を置いた瞬間の微かな震えを含んだ吐息だった。
騒動の間中カウンターの最端で一人の客として沈黙を守っていた天が静かに席を立った。
靴音を殺した足取りで美和の傍らへ歩み寄る。
美和はまだ少しだけ険の残った表情のまま無意識に自分の右腕をさすっていた。
「……お疲れ様、美和さん。今日も、この場所を守ってくれてありがとう」
「天ちゃん……見ていたのね。お見苦しいところをお見せしたわ。……あんな風に、お酒を蔑ろにする言葉を聞くと、どうしてもね」
「見苦しいなんてとんでもない。……冬の夜の桜みたいだったよ。凛としていて、触れたら凍りついてしまいそうなほど、綺麗だった」
天はそう言って美和の手から使いかけのダスターをそっと受け取った。
「さあ、ここからは僕の番だ。美和さんはそこに座って」
天は彼女を客席である黒革のローチェアへと促すと自らカウンターの内側へと一歩足を踏み入れた。
手慣れた迷いのない手際で彼は整然と並ぶフルーツの籠からもっとも瑞々しく香りの強いレモンを一つつかみ取る。
小さなナイフを使い果皮の黄色の部分だけを僅かに削ぎ取った。
「何をしているの、天ちゃん?」
「『毒出し』の儀式だよ」
天はそのレモンの皮を美和の近くでパチンと指先で弾いた。
果皮に含まれる精油が目に見えない微粒子となって空間に弾け清冽で鋭いほどのシトラスの香りが立ち上る。
先ほどの男たちが残していった淀んだ空気が一瞬にして鮮やかに塗り替えられていった。
「美和さんは、今日もしっかり仕事を果した。無粋な言葉を撥ね退けて、この聖域の純度を守ったんだ。……でも、そのせいで、君の心に少しだけ『氷』が残ってしまっただろう?」
天は美和の背後に回り込み彼女の細く華奢な肩に大きな両手をそっと置いた。
美和を深く慈しむ男の温かな体温が緊張で強張っていた彼女の肌へとじわりと溶け込んでいく。
「君が店を守るなら、僕は君を守る。……今夜は、君を口説く言葉も、お酒の蘊蓄もいらない。ただ、このレモンの香りと、僕の手の温度だけを感じていて」
「……天ちゃん」
美和はようやくいつもの柔らかで可憐な表情を取り戻し天の腕に自分の頭を静かに預けた。
ワインレッドとアンバーの異色瞳が安堵の熱を帯びて僅かに潤む。
「ありがとう。……あんな人たちの言葉なんて、本当はどうでもいいはずなのに。やっぱり、少しだけ悲しくなっちゃうの。お酒も、この場所も、もっと大切にしてほしくて」
「分かっているよ。美和さんがこの店をどれだけ愛しているか、僕が一番知っているから。……明日は休みだろう? 帰ったら、温かいハーブティーを淹れるよ。君が好きな、あの蜂蜜をたっぷり入れて」
美和は小さく頷き天の手をギュッと握り返した。
外はまだ冷たい夜風が吹き抜けていた。
だが鉄刀木のカウンターの内側だけは一足早い春のような穏やかで甘い時間に満たされていた。
第3章:百花蜜と朝の微睡み
昨夜の喧騒が嘘のように風花町の朝はどこまでも澄み渡っていた。
神社の裏手にひっそりと佇む平屋の自宅。
庭に咲く四季桜の淡い香りが開け放たれた木枠の窓から静かに室内へ流れ込んでいる。
鳥のさえずりと遠くの境内で鳴る鐘の音で美和はゆっくりと目を覚ました。
隣の枕元にはもう愛する夫の姿はない。
代わりに彼が使っていたリネンのシーツから陽だまりのような温かな残り香が漂っていた。
「……天ちゃん……?」
寝ぼけ眼のまま美和はのそりと身を起こした。
バーのカウンターに立つ時のあの凛としたオーナーバーテンダーの鎧はどこにもない。
髪に少し寝癖がつきオーバーサイズの柔らかな綿のルームウェアに身を包んでいる。
異色瞳も今はただ無防備で穏やかな光を湛えて細められていた。
パタパタと裸足で廊下を歩き陽の光が差し込むリビングへ向かうとキッチンで手際よく立ち働く天の背中があった。
「おはよう、美和さん。ちょうど今、淹れ終わったところだよ」
天が振り返り優しく目を細めた。
テーブルの上に置かれたのは昨日約束したたっぷりの蜂蜜を溶かしたハーブティーだった。
湯気と共にカモミールとレモングラスの清々しいアロマが部屋いっぱいに広がっていく。
「……おはよう。本当に、淹れてくれたのね」
「もちろんだよ。昨夜の『毒』を全部洗い流して、今日は心からリラックスしてほしいからね」
美和は天の隣に座り差し出された白磁のカップを両手で愛おしそうに包み込んだ。
使われている蜂蜜は皇グループが管理する農薬不使用の柑橘農園で採取された最高級の百花蜜だ。
一口含むとみかんや柚子の花から集められた濃厚でいて爽やかな甘みが喉から全身へと染み渡っていく。
昨夜に無粋な客の言葉で凍りついた心が春の雪解けのようにゆっくりと解けていった。
「ねえ、天ちゃん。……昨日の私、怖かった?」
ふと思い出したように美和がカップの縁越しに上目遣いで尋ねた。
天はトーストしたばかりの厚切りパンに自家製ジャムを塗りながら穏やかに首を振る。
「いいや。誰よりも誇り高く、気高かったよ。……でも、その分だけ美和さんが傷ついていないか心配だったんだ。だから今日は、僕が君を甘やかす係。朝食が終わったら、縁側で少し本でも読もうか。それとも、庭の柑橘を一緒に収穫する?」
美和はふふっと可憐に声を漏らし天の肩にこてんと頭を預けた。
外の世界では凛とした二人だがこの家の中ではただお互いを慈しみ合う名前のない一組の男女に過ぎない。
「……何もしないのがいいな。天ちゃんの膝を貸してくれたら、そこで少しお昼寝したい。……桜の匂いに包まれて、あなたの心音を聞きながら」
「贅沢な注文だね。……喜んで、承ります」
天は空いた手で美和のボブヘアを優しく撫で下ろした。
庭の四季桜が風に舞い縁側に数片の薄紅色の花びらを落とす。
特別なことは何も起きないけれどお互いの存在がそこにあるだけで昨日までの疲れや傷はすべて愛おしい記憶へと昇華されていくのだった。
第4章:至高のブランチと甘美な服従
陽の光がリビングの畳に長く伸び庭の四季桜が穏やかな風に枝を揺らす昼下がり。
櫻庭天はキッチンで静かにしかし並々ならぬ決意を秘めてエプロンの紐を締め直していた。
昨夜に毅然と店を守り抜いた最愛の妻。
その肩にのしかかった緊張の残り香を最高の料理で完全に消し去る。
それが今日の夫としての最優先任務であった。
ソファでクッションを抱えうとうとしている美和に天が優しく声をかける。
「美和さん、お待たせ。今日のブランチは、少し贅沢にさせてもらったよ」
テーブルに運ばれたのは目にも鮮やかなA5ランク松阪牛の極厚ステーキサンドであった。
最高級の松阪牛の中でも特に融点が低く繊細なサシが入ったサーロインを使用している。
表面はフライパンで高火力かつ短時間でカリッと香ばしく焼き上げ中は体温で溶けるほどの絶妙なレアに仕上げられていた。
地元の名店から取り寄せた小麦の香りが強いハードトーストには赤ワインとバルサミコ酢と黒トリュフをじっくり煮詰めた特製ソースがたっぷりと塗られている。
サイドには苦味のあるルッコラに完熟オレンジと生ハムを添えたサラダが並んだ。
ドレッシングはオリーブオイルと岩塩のみというシンプルな仕立てだ。
グラスに注がれたのは最高級のシャルドネとピノ・ノワールからアルコールだけを抽出したロゼのノンアルコール・スパークリングであった。
「……わあ、すごい。これ、天ちゃんが全部?」
目を丸くする美和。
天は当然のように頷くと彼女の隣に腰を下ろしナイフで一口大に切り分けたステーキサンドをフォークに刺した。
「さあ、美和さん。今日は僕が『給仕』だよ。手も使わなくていい。はい、あーん」
「えっ、あ、天ちゃん、それは流石に恥ずかしい……」
頬を一瞬で熟した林檎のように赤く染める美和。
しかし天の眼差しには一切の妥協がなかった。
昨夜の凛としたバーテンダーとしての彼女ではなく一人の愛される女性としての彼女を徹底的に甘やかす。
その強い意志が異色瞳を優しく射貫いた。
「今日一日は、僕の『お姫様』でいてくれるって約束しただろう? ほら、冷めないうちに」
観音したように美和が小さく口を開けた。
贅沢な和牛の脂の旨みが口いっぱいに広がりトリュフとバルサミコの芳醇な香りが鼻腔を抜ける。
その至福の表情を見て天の胸にようやく安堵が広がった。
「……おいしい。天ちゃんの作るご飯は、魔法みたい」
「魔法じゃないよ。ただの、ありったけの愛情だよ」
天は彼女の口元についた小さなソースを指先でそっと拭った。
その指を美和が小さく噛むようにして甘える。
そんな外の世界には決して見せられない二人だけの秘められた時間。
食事を終えお腹も心も満たされた美和は天の膝の上に頭を乗せて幸せそうに目を閉じた。
「天ちゃん……私、もう動けない。このまま春の夢の中に溶けちゃいそう……」
「いいよ、そのまま眠って。目が覚めるまで僕がずっとここにいるから」
天は彼女の長い髪を撫でながら自身も深い幸福感に包まれていた。
皇グループの権力も神としての力もいらない。
ただこうして愛する妻の平穏を守れること。
それこそが彼にとっての至高の幸福であった。
第5章:去りゆく背中、春の証文
松阪牛のブランチで満たされた美和は天の膝を独占し深い微睡みの中にいた。
天は彼女の柔らかな髪を指先で梳きながら庭の四季桜を眺めていた。
そこにあるのは世界中の何事にも代えがたい穏やかで濃密な時間だ。
その時庭の入り口にある古い木戸が僅かに軋む音を立てた。
天は持ち前の鋭い感性でその気配を即座に捉えた。
視線を向けるとそこに立っていたのは数ヶ月に一度この風花町を訪ねてくる息子・海里であった。
天がかつて別の道を歩んでいた時に授かった離れて暮らす息子だ。
海里は父に内緒で買ってきた地元の和菓子折りを抱え少し緊張した面持ちで立っていた。
久しぶりに会う父にどんな顔をして挨拶しようか——そんな思春期特有の迷いは縁側の光景を目にした瞬間に消し飛んだ。
(……父さん)
海里の足がぴたりと止まる。
そこには自分の前で見せる父親としての顔でも取材現場で見せるルポライターとしての顔でもない一人の男としての天の姿があった。
膝の上で眠る美和を見つめる天の眼差しは海里が今まで見たことがないほど深く熱く慈しみに満ちている。
それは海里の母親と暮らしていた頃の父からは感じることのなかった絶対的な充足感と愛の形であった。
美和が天の服の裾をぎゅっと掴み幸せそうに寝息を立てる。
天はそれに応えるように彼女の肩を優しく抱き寄せ静かな子守歌のように言葉を紡いでいた。
(……ああ。父さんは、本当にあの人を愛してるんだな)
海里は抱えていた菓子折りの角を少しだけ強く握りしめた。
寂しさが全くないと言えば嘘になるかもしれない。
けれどそれ以上に海里の胸を打ったのはそこにある空気が静謐であまりにも美しかったことだ。
自分たちがかつて築けなかった家族の形が別の形としてここで完成している。
それを邪魔することは野暮を通り越して罪だと思春期の繊細な感性が告げていた。
海里は木戸のそばにある平らな石段の上に持ってきた菓子折りをそっと置いた。
気気配を殺した所作で一度だけ父の背中に向かって声に出さない「またね」を投げかける。
足音を立てないようスニーカーの踵を浮かせながら海里は来た道を静かに戻っていった。
「……ん、天ちゃん? いま、誰かいた気がしたのだけれど……」
美和が夢の淵から戻ってきたような微睡んだ声で呟いた。
天は去っていく息子の自分によく似た軽やかな足音を最後まで静かに聞き届けていた。
「……ああ。誰かが、大事なものを届けてくれたみたいだよ」
「大事なもの……?」
「うん。……僕たちがこうして幸せでいるための、大事な証文さ」
天はそう言って美和を強く抱き寄せ彼女の額にそっと唇を寄せた。
庭の四季桜がまた一枚二人の肩へ薄紅色の花びらを落とす。
海里が残していった菓子折りは春のあたたかな陽光を浴びて二人が静かに立ち上がるその時までそこに置かれていた。
【あとがき】
今作は『Bar風花』でのプロとしての厳しい姿勢と、家で見せる愛おしい日常のギャップ、そして二人を包む家族の絆を描いたエピソードをお届けいたしました。
お酒や空間への愛ゆえに無粋な言葉を突っぱねる美和さんの凛とした強さと、そんな彼女の心を「レモンの香り」や「至高のブランチ」で優しく解きほぐす天ちゃんの深い愛情を感じていただけたなら幸いです。
また、ふたりの完璧で美しい世界を遠くから見守り、そっと去っていく海里の繊細な優しさも、この物語の大切なピースとなっております。
作品を気に入っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク登録】や【下部の評価(★★★★★)】、感想などをお寄せいただけますと、今後の執筆の大きな励みとなります。
天照(Bar風花)




