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下 ②

 隼人が亡くなってから2年が経った、隼人の死に関わったものたちは様々な運命を辿ることになっていた


 大沢正樹の場合


 隼人が死んで、その原因を作った隆次は少年院に入り、正樹は始めのうちは悠々としていた、これで自分がクラスのトップになれたんだと


 大希を呼びつけ、暴行を加える、ターゲットが元に戻り、その主が隆次から自分になると思っていた


 だが、そんな事を考えていたのは正樹1人だけである、当然あんなことがあったのにまたすぐにいじめを行うなど他の隆次の取り巻きたちは考えていなかった


 大希を殴った後のクラスメイトの目は冷たいものだけだった、頭のおかしいものを蔑むような目立った


 あの時の配信が原因の被害は隼人のクラスだけでなく学校全体にあり、その原因を起こしたクラスの者たちは学校全体から嫌悪の眼差しで見られていた、特に隆次の取り巻きたちは原因を起こした張本にとして特にだ


 それを感じ取った正樹は次第に学校での居心地が悪くなり、2年が終わる少し前に学校を中退した


 その後は反社とも関わりのある不良グループに入った


 アウトローの道に進む正樹にとってそれがカッコ良いものだと思ったのだろう


 ある日関わりのあるヤクザの請負で覚醒剤の売り子をすることになった正樹、ヤクザからの指示は人通りの少ない商店街の裏路地で取引をしろと言うものだった


 ただ覚醒剤を渡して金をもらうたったそれだけのことで10万も貰えると、正樹は軽く考えた、学校を辞めてこの不良グループに入って正解だったとそう思った


 しかし事はそう上手く運ばなかった、どこでバレたか警察に取引がバレていた、取引の最中警察が現れ正樹は逃げることに必死になった、全力で逃げ何とか正樹は警察から逃げ切ることが出来た

 だが、その際にあろうこと逃げるために覚醒剤を警察に投げつけてしまった


 取引も失敗し、覚醒剤も失ったのだから当然、正樹に取引を任せたヤクザは激怒した


「それじゃあエンコ詰めよか、何か分かるよな?」


 それは隆次のような激情にかられる激怒ではなく冷たい、とても冷徹な激怒だった


「いやだ、いやだ、ごめなさい許してください、お願いします、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ」


 正樹は指を落とされる恐怖に暴れ出す


「大人しくせいや、余計に指落とすハメになるで」


 その言葉に観念したのか正樹は暴れるのをやめる、しかし呼吸は過呼吸のように乱れている


 そして、部屋いっぱいにまさかの叫び声が響き渡る、指を落とされた苦痛の叫び声


「いいかガキ今後二度と俺たちの前に現れるんじゃねーぞ、わかったか?」


 血だらけの4本しか指のない手を押さえながら、正樹は必死に頷く、そして逃げるようにヤクザのいる部屋から出ていく


 それから正樹は自分の部屋に引き篭もり、二度と外に出る事はなかった



 大沢正樹

 いじめの主犯である上畑隆次の取り巻きの1人

 上畑に逆らう事はしないが上畑がいないところでは上畑の悪口を言いまた自分が一番偉いかのような言動をとる、愚かなる小物


            ◯


 真野大希の場合


 隼人が死んだと聞いた時、大希は絶望した、隼人が死んだことにではなく、また自分が隆次にいじめられると思ったからだ、しかしその心配は杞憂に終わった


 隆次が少年院に入れられた次の日は最初こそ正樹に殴られはしたが、それに賛同する者もいなく、すぐに辞められた、そうして大希はついに安定した生活を送れるとそう思った、しかしそう思ったのは最初だけですぐに、その思いは打ち砕かれた


 理科の授業を受けるために教室から理科室に移動してる時他のクラスの話し声が聞こえた、それはコソコソ話というよりわざと大希に聞こえるような声で話していた


「あいつ、死んだ市川隼人にいじめから助けられたくせに感謝するどころか、何を勘違いしたか自分もいじめる側だと思ったのか、いじめに参加してたらしいぜ」


「うっわ、最低な奴だな人としてマジで終わってるわー、そんなんだから最初にいじめられてたんじゃないの」


 その話を聞いて大希は思った自分は被害者なんだこいつらは被害者を何だと思ってるんだこいつらこそ最低な人間じゃないのか、そう思ったがその考えはすぐに終わる、なぜならどこへいってもそのような会話が聞こえてくるからだ


 最低な人間、人として終わってる、いじめられて当然、大希を擁護する言葉は何一つない、あるのは大希を非難する言葉のみ


 次第に彼の心は蝕まれ、人がこちらを見るだけで何か自分の悪口を言っているそう思うようになっていた


 人の目線が怖い人の声が怖い、大希は鬱になっていた


 そしてある日学校の帰り道、彼に向けられた言葉なのかどうかはわからないが「最低」その言葉が彼の耳に届くと彼の心が暴走した


「あー!あー!あー!あぁーーー!!」


 大希は突然走り出した何も考えれず走り出した喚きながら走り出した、彼は考えることが出来なくなっていた、交差点の信号が赤になっていることに気づかなくなっていた、彼は飛び出し車に轢かれていた


 幸い大希は死ぬ事はなかった、隼人のように死ぬ事はなかった、だが彼は事故が原因で半身不随となっていた


 大希の怪我は一生治ることがないと言われた、手足を動かすこともできずに自分の意思では何もできない状態になった、ただあるのは意識のみ、こんなことになるのなら死んだ方がマシだったと思ったが、しかし自分の意思で死ぬことが出来ない体になってしまったのだ


 大希はこれからの人生を死ぬまでベッド寝たきりの状態で過ごすことになったのだ


 真野大希

 最初の被害者、次は加害者

 最初に上畑隆次にいじめられていた者

 そのいじめを市川隼人が止めたことにより上畑のターゲットから外れる

 その後市川に感謝する事はなく、あろうことか市川いじめに参加する最底辺の人間


            ◯


 日名川美織の場合


 隼人が死んだとあって、最初こそはSNSに上がったクラスの生徒一人一人の情報を見ていない人達には、幼馴染がいじめで亡くなった可哀想な子として扱われていたがそれはすぐに変わった


 幼馴染を見捨て、その幼馴染をいじめていた張本人と付き合っていた最悪の女として扱われるようになった


 彼女はバスケ部に参加していたが部活での彼女の扱いは日に日に悪くなっていった


 練習での彼女へのパスはパスと言えるような者ではなく、投げつけると言ったものになりまた試合形式の練習では、かなり危ないファアルを行われるが誰もファアルを取る事はない、ボールを持っていれば乱暴にボールを奪われ、ディフェンスをすれば安全性など無視の体当たりをされていた


 そして他の者たちと同じように悪口も言われていた

最低最悪な女、尻軽女、幼馴染を見殺しにした女、などと言われたい放題だ


 ある時、授業が終わり部活に出てもまた酷い目に会うと思い、部活には出ずにすぐに帰ろうと下駄箱に行くと彼女の靴がなくなっていた 


 美織は必死に探したすると3階のトイレの横のゴミ箱に切り刻まれズタボロになっていた美織の靴が見つかった


 そして彼女は気づいた、いつか自分言っていた、いじめられて何もできないなんてダサい、存在価値なんてない、そう言ったものに今の自分はなっているんだと


 そこで初めて彼女は後悔をした幼馴染を隼人を見捨てたことを「ごめんなさい、ごめんなさい」彼女は誰もいないところでそう呟き始めた、だが隼人はすでに死んでいる彼女を許してくれるかもしれなかった人はもう死んでいるのだ、しかし彼女は呟き続ける壊れたおもちゃのように「ごめんなさい、ごめんなさい」と言い続ける


 ズタボロにされた靴で美織は学校から帰るその時も、常に「ごめなさい、ごめんなさい」と続ける


 家に向かって帰っていると唐突に昔のことを思い出だした、よく一緒に2人で遊んだな、高校1年の頃には水族館へデートへといったなと隼人への贖罪の気持ちと一緒に思い出が蘇ってくる


 そして家に着き、自分の部屋行くと勉強机に一枚の手紙が置いてあった、差出人は市川隼人だった


 美織は急いで手紙を開けた


 手紙に書いてあった内容は「君が幸せにならないことを心の底から願います」たったこれだけだった


「あっあ、あっ…ぁあー、ぁあーーーーーー!」


 声にならない絶望を感じる音が彼女の口から発せられる


 夜になり美織の両親が帰宅した、ただいまといっても美織の返事はない、家の鍵は空いているのに美織の返事がないことに美織の両親は変に思い、美織の部屋に入ると美織が首を吊って自殺していた


 急いで美織を下ろすがすでに彼女は亡くなっていた、裏切ってしまった幼馴染からの恨み手紙を受け取り、もうどうやっても許してもらえない状態で彼女は完全に絶望し、死という道を選んだ、こうして日名川美織の生涯は終わったのであった


 日名川美織

 市川隼人の幼馴染

 最初はいじめを最低と言っていたのに、市川がいじめられるといじめられる奴はダサいと言うようになる

 挙げ句の果てにそのいじめの主犯である上畑隆次と付き合うようになる

 最低最悪の幼馴染


            ◯


 上畑隆次の場合


 少年院からようやく出ることのできた隆次は途方に暮れていた


 政治家かである父親からは勘当され、帰る家がなくなり、最後に親の情けで渡されたお金で1日1日を過ごす毎日だった


 今までは、上限なく自分の好きなものはなんでも買えた隆次にとって、限度がありそれが着きたら一文無しになる状況は耐え難いことだった、そしてその状況は、こうなる原因を作った者たちへの恨み、憎しみへと向かっていった


 隼人が死ななければこんなことにならなかった、アイツがもっと頑丈だったらよかったんだ、あの程度のことで死ぬなんて、やはりゴミクズはゴミクズだと、そう思った


 彼の中に反省という気持ちは微塵もないむしろ、死んだことに、腹を立てるという始末だ


 そして、自分が少年院に入れられ、親から勘当される1番の要因を使った男、元担任教師であった前川悠斗には特大の憎悪を持っていた


 アイツが、あんな動画を上げなければ自分が少年院に入ることはなかったのに、親に勘当されることもなかったのにと、確かに前川悠斗がやった行為は恥じるべき最低な行為だが、隆次の行っていたことも人として最低な行為なのだが、彼には自分が悪いなどとは1ミリも思っていなかった


 そして少年院を出てから何日が経つと親に渡されたお金も底がつきかけてきた、金使いの荒い隆次は最初のうちは何も考えずに金を使っていた、勘当したとは言え、息子への情けなのか、それとも金持ちゆえの感覚の違いなのか、常人からしたら1ヶ月は余裕で暮らせることのできる額をもらっていた隆次だったが、隆次はそれを1週間で使い切りかけていた


 働く行為など他人から命令されるものと考え、彼は働く考えなど微塵もなかったその結果今では、半ばホームレスのような惨めたらしい生活を送ることになっていた


 それは隼人や悠斗への憎悪の拡大でもあった、自分が惨めな生活を送るたびに彼らへの憎悪は膨らんでいく、特に今も生きている悠斗への憎悪はとんでもないものになっていた


 そしてある日彼は偶然、元担任で今自分が最も恨む相手、前川悠斗を見つけたのであった


 上畑隆次

 市川隼人いじめの主犯、殺した張本人

 元々は真野大希をいじめていたがそれを市川に止められたことにより、ターゲットを変更、それ以降毎日、市川への暴行を行う

 育ちによるものか、自分が一番偉いと思い、他人に命令されることが大嫌いで、止められたことが命令と解釈して、いじめのターゲットを変更する

 元々のいじめの理由はただその時ハマっていた格闘番組の真似をするためのサンドバッグが欲しかったからと自分勝手な理由

 人の中でも最底辺の性格の人間


            ◯


 前川悠斗の場合


 前川悠斗

 死んだ市川隼人の担任教師

 市川がいじめられているのを知りながら無視を続けた最低最悪でこの世から消えるべきクズ教師


 悠斗は教員を辞めてからは、日雇いの仕事をして、暮らしていた


 彼がやった行為による賠償金はかなりの額となり、その日を暮すのでやっとのものとなっていた


 しかし彼は自分のしたことに後悔はなかった、自分の贖罪のために何人もの人を巻き込んだ、巻き込まれたものには本当に関係のないものもいただろう、それが原因で何人かの者が不幸な末路を辿ったとしてもら彼は自分のしたことを間違いとは思わないどろう、これが彼の願いだからだ、あの時託された思いなのだからと


 悠斗のやった行為は、最低の行動として全国のニュース番組で流れた、それにより彼の存在は世間に知られ日雇いの仕事先でも後ろ指を刺されたり、そもそも仕事すらもらえないこともある


 今でも時々、嫌がらせの電話がかかってくることがあるが、悠斗は無視することをせず、毎回出れるなら出ることにしている、それがせめてもの自分への罰だと思っているかのように


 ある日彼は、上畑隆次が少年院を出たという話を聞きつけた、そして彼が今どこにいるのかを調べ始めた


 最後に隼人に願われたことを実行するために、悠斗は隆次の元へと向かうのであった


 悠斗は調べ上げた情報を元に今隆次が泊まっているというネットカフェの前までやってきた、そしてその周辺で隆次を探していると、突然後ろから声がした


「お前のせいで、俺はこんな生活をすることになったんだ!!」


 それは見窄らしい姿になっていた隆次だった、そして手にはどこで手に入れたのかわからないナイフを持って悠斗に襲いかかってきた


 悠斗は襲いかかってきた隆次には抵抗せずにいた、その結果隆次の持っていたナイフは悠斗の腹に突き刺さる、悠斗に激痛が襲う、腹の周りが熱くなる


「お前が悪いんだぞ、お前があんなことしなければよかったんだよ」


 人を刺したことに頭が追いついていないのか少し放心状態になる隆次、今まで散々暴力をしてきたくせに人を刺したら恐れるのかと思いつつも、激痛に耐えながら悠斗は言葉を振り絞る


「そうだな、おれが、悪いな、隼人を見捨て、お前を止めなかった」


「そうだお前が悪いんだ」


「あーだから、俺は、ここで終わりだ、お前に、殺されて、ここで死ぬ、満足したか、けどお前もこれで、二度と、刑務所暮らしだな、お前はもう大人だ、子供じゃない、刑務所では、反省できるといいな…」


 段々と悠斗の意識は薄れていく、隆次は自分の手に持っていたナイフを放り投げ全力でその場を逃げていく、その逃げ姿は、まともに飯を食べていなかったのか、とても弱々しく悠斗の目には映った


 そして途切れていく意識の中隼人が死ぬ前日、最後に隼人に託されたことを思い返す


「先生、僕はこのままいじめられるといつか死ぬと思うんです、自殺とかじゃなく、上畑君に殺されると思うです、でもそれは事故みたいなもので、彼は少年院に入れられても絶対に反省しないと思うです。そもそも反省されても僕は嬉しくありません、僕は僕をこんな目に合わせてる彼が幸せになることを許しません不幸であることを願います、破滅の道を進むことを願ってるんです」


「そうか…」


「だから僕は証拠を残すことにしました、教室に幾つかのカメラをセットしました、そこに彼らが僕をいじめてる映像、僕を殺すであろう映像が映るはずです。後はそれをどうするかは先生に任せます。一度はいじめを止めようとした先生に僕のいじめを止めることができなかった先生に」


 悠斗は隼人の言葉に黙って頷いた


 そして隼人は最後に悠斗に行った


「先生僕はあなたにも最悪の人生を送ってもらいたいんですよ、先生も僕にとって最も恨むべき1人なんですよ、だがら僕は、あなたの破滅を願います」


 その言葉を思い出し悠斗は「これでよかったか隼人」そう呟き、薄れて行く意識は闇の底へと落ちていった

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