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下 ①

 隼人が亡くなった翌日の朝の教室、それを知らない隆次たちは隼人がついに休んだのかと話題になっていた


「あいつ、ついに休み出したか、まぁ今までよく休まないで来てたもんだよな」


「それか隆次のことが怖くなりすぎて自殺でもしたんじゃねーの」


「もしそうだったら、あれぐらいで自殺するめちゃくちゃダセーやつだな」


 教室内では隼人をバカにした笑い声が響き渡る


「おい、大希ちょっと来い」


 隆次が大希を手招きして自分の元まで来させると、唐突に大希の腹を殴った


「っぐ…何で…」


「はぁ?何でって当たり前だろ隼人のゴミクズがいなきゃお前がサンドバッグになるに決まってんだろ?」


 それの言葉を聞いて大希は困惑と絶望が混じった目を隆次に向ける


「何だお前、まさか一緒にあいつを殴っててまさか自分が俺たちと同等とでも思ってたのか?正樹、こいつをしっかりと押さえとけよ」


 それから隆次は隼人の代わりにと大希を殴り始めた、そしてしばらくすると前川悠斗が教室に入って、席に着くように促した


 隆次は席についてすぐに何故隼人がいないのかと、聞いた


「センセー、隼人はどんな言い訳で休んでるですかー?」


 笑いながら聞いた隆次に周りも同調して笑い出したが、帰ってきた答えは皆が思いもよらぬことだった


「市川隼人は、死んだ」


 唖然とするもの、冗談だと笑うもの、自分が原因かと俯くもの、皆の反応は様々だ


「おい、センセーつまんねぇー冗談言うなって、何であいつは学校に来てないか聞いてるんだよ」


 隆次は再度聞き返すが悠斗はそれを無視して話を進める


「全員携帯を出せ」


「なんだよ?いきなり没収か今までんなことしてなかったくせに」


「全員どのSNSでもいいこの学校を調べろ」


 またも隆次の言葉を無視して、隆次は舌打ちをしてからSNSで学校の名前を検索すると、隆次が検索する前に一人の生徒が声を出す


「何これ!?」


 その生徒の携帯の画面に映っていたのはこの教室のライブ映像だった


 『やっと気づいたぞ』『不謹慎者どもが』『人生終了乙』『殺人者と一緒の学校とかマジで嫌だは』


 そのライブ映像には様々なコメントがされていた


「何なんだよこれ!」


 正樹が声を荒げて言うと『取り巻きの一人が喚いてやがる笑笑笑』などバカにするコメントが上がる


「こいつらバカにしやがって」


「見ての通りこの教室は今ライブ配信されている、もちろんさっきまでお前たちがやっていたことだ」


 『この教師自分のクラスをライブ配信とか正気かw』『もしこんなんが教師だったら最悪だは』『生徒の情報出すとか頭おかしいだろ(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎』


 コメントを見ていた生徒が自分たちの情報が乗っていることに気づく


「いや、何よこれ…」


 それは一人一人の生徒が隼人とどう関わって何をしたのかが書かれていた


「おい!!俺が殺したって書いてあるぞ!どういうことだよ!!」


 『こいつ自分が殺したこと気づいてないとかやっばっ』『殺人罪乙』『ようこそゴミクズの世界へww』


隆次が叫んでから様々なコメントが飛び交い始めたがどれも隆次をバカにするか非難するコメントばかりだ


「この動画何?」


 そう言った生徒が見ていた動画には昨日の放課後隆次たちが隼人をいじめている動画だった


『ふざけんなテメェ!!服が濡れたじゃねーかよ!!』


「何なんだよ…何でこんな動画があるんだよ!?」


「隼人の死因は脳出血だ」


 悠斗がそう言うと館内放送がかかる


『2年2組上畑隆次君、前川悠斗先生、至急校長室までお越しください』


「ほら呼ばれたぞ、いくぞ上畑」


            ◯


 校長室に着き中に入って早々、悠斗は校長から罵声を浴びる


「何をしてくれているんだ!!君は!!」


「何とはどれを指しているんでしょう?動画ですか、それとも、隼人が死んでしまったことですか」


「動画に決まっているだろう!!生徒の死なんかよりも学校の信頼が大事だ!教師なら当然のことだろう!!」


 校長がそう言うと悠斗は冷たい目で校長を睨みつける


「な、何だ、文句があるのか…?」


「まあ、まあ落ち着いてください校長先生」


 そう宥めたのは校長の後ろにいた警察官だった


「すみませんね、あなたが前川悠斗さんで君は上畑隆次君だね、私たちがここに来ている理由に見当はつきますよね」


「ええ」


 素直に返事をする悠斗と黙って俯く隆次


「それなら話が早いですねではいきましょうか」


 警察が二人を案内しようとすると、隆次が立ち止まる


「なんで、俺が行かなきゃいけないんだよ…俺が原因とは限らないじゃないか、俺は関係ねーんだ!そうだ、親父連絡してくれ親父が何とかしてくれるはず、早く親父に連絡しろよ!!」


 隆次は自分のできる限りの手を使い逃れようとするが警察は冷静に対応する


「隼人君が倒れたところを目撃して連絡をしてくれた人が言うには彼は突然倒れたと言う、昨日の彼の行動を見るに原因は君によるものとつか考えられないんだよ」


「だから親父に連絡しろよ親父は政治家なんだぞ、お前らなんかよりよっぽど偉いんだ俺のやったことなんか親父が何とかしてくれる、ここは俺を見逃すのがお前たちのためだぞ!」


 隆次は冷静さをかき、まるで小学生かのような言い分を言い放つ


「君のお父さんからの伝言です、私と息子は関係ない好きに連れていってくれ、だそうです」


 警察のその言葉を聞き、隆次は腰を落とし床を殴り出した


「クソが!クソが!クソが!クソクソクソクソクソクソ!クソガーー!!!」


 それからネジが止まったネジ巻き人形のように動きを止め、そのまま隆次は警察二人にパトカーまで連れて行かれた、そして悠斗はもう一人の警察と一緒に校長室を出てもう一台のパトカーに乗り込んだ


            ◯


 警察署で事情聴取をされてから、悠斗は一時的に家に帰された

 悠斗の住んでいる家では電話が鳴り止まなかった、電話の相手は学校の生徒の保護者の苦情の電話やどこで番号を調べたのか何も関係のないネットで情報を知っただけの人からのイタズラ電話など様々だった


 悠斗は電話のコードを抜かずかかってくる電話には全て出た、すると悠斗が担当するクラスの親だと言う者から電話がかかってきた


『あんた、教師として最低なことをしたんだぞ!!あんたのせいで息子の学校生活が狂ったじゃないか、どう責任をとってくれるんだ!!』


「責任を取るとは?あなたは私に何を望むんですか?」


『そんな物まずは賠償金を払ってもらおう、息子は何もしていないんだぞ、それなのにネットに息子の情報を載せやがって!!』


「何もしてない、ふっ、あなたの息子は何もしてないですか、私が知る限りではあなたの息子をいじめに参加していたんですがね、あなたは息子のことを何も分かってないんですね」


『何だとキサマ!そもそもお前がいじめを止めればこんなこと起きなかったんじゃないのか!お前の職務怠慢が原因だろ!』


「その通りですねでも、もしあなたの息子が助けの手を差し出していたら変わっていたかもしれませんね」


『そんなもの関係ないうちの息子が始めたいじめじゃないんだ、他人の子は他人だ、私たちとは何も関係ない』


「なら、あなたたちがどうなろうが僕には関係ありま、所詮生徒と教師何ですただの他人です僕とは何も関係ありません、それでは」


 そう言って悠斗は電話を切った、それからはその親から電話がかかってくることはなかった、しかしそれからも他の親やいたずら電話が鳴り止むことはなかった


            ◯


 それから幾日か経ったが未だに電話鳴り出す、初日とは違い鳴り止まないとまでは行かないが、1時間に4、5回程の電話がかかってくる、その電話はほとんど生徒の親からではなく、いたずら電話になっていた


 家にも直接、隼人に関する事を取材に来る記者や、ピンポンダッシュなどの迷惑行為も行われていた


 悠斗は、今休職中だ、学校の教師に戻ることはすでに悠斗の考えにはないそれにあんな事をした教師を雇う学校も、もうどこにもないだろう、そもそも教員免許も剥奪されるだろう


 悠斗は世間から見たら、生徒の情報をネットに流した最低の教師として見られている、事実悠斗の行った行為はどんな理由であれ最低な行為である、しかし悠斗の家に一組だけ感謝をしにきた者たちがいた


 それは市川隼人の親からだった、いじめから救うどころか無視をしていた悠斗に感謝などおかしな話であるが、少しゆうとには分かる気がした


 まだ隼人がいや、大希がいじめられるより前、三者面談での市川親子への悠斗の印象はとても仲の良い親子であった、常に笑い合い、笑顔の絶えない親子それが悠斗の感想だった


 そんな親子だからこそ隼人は親に心配かけまいといじめられていた事をひた隠しにしていた、両親はそれに気づくことができず、隼人はそのまま死んでしまった


 悠斗が行ったことはいじめに対して何もしなかったせめてもの償い、それを理解した隼人の親は悠斗を恨むことができなかったそれどころか息子の状態を気づくことのできなかった自分たちを恨んでいた、だから隼人の両親は悠斗の感謝を述べたのだろう、自分たちが何もできなかったから


「ありがとうございました」

 

 それでだけ言って隼人の両親は帰っていった、彼等はこれから何があっても心の安寧を得ることが出来ないだろう、たった一人の最愛の息子を失ったのだから、彼らは何もしていないのに、大切なものを失ってしまったのだ、何も出来なかったからこそ失ってしまったのだ


 悠斗はその両親の後悔を無念を胸に留めることにした

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