中
いつもと変わらぬ朝、何も変わらない1日、ただ隼人の心の中は違った
学校に登校していつものように隆次達の暴行を受ける、だが隼人はまるで糸の切れた操り人形のように反応が薄い
いつもなら、殴られたあと悶えるのに今の隼人は悶えることすらやめて、殴られた時には流石に反応はするがそのあとは何もなかったかのように無表情だ
「なんだよ、もっと毎日のように悶えろよ!!」
隼人の反応に苛立った隆次は渾身の膝蹴りを隼人の鳩尾をめがけて繰り出す
「んっぐ…っかはぁ、っかはぁ…」
さすがに鳩尾に強烈な一撃が入ったこともあり、隼人の呼吸が乱れると、それを見た隆次は高らかに笑った
「そうだ、それでいいんだよ〜お前は俺にやられて、苦しそうにしていれば、いいんだよ!!」
そうして倒れ込んでいる隼人に隆次は蹴りを入れると、教室に教師の前川悠斗が入ってきて、何事もなかったかのように、ホームルームが始まる
いつもと同じ朝の始まり、だがやはり隼人の心はいつもと違った
◯
午前の授業が全て終わり隼人はいつものように教室を出て行った
「なぁ隆次今日はどうする?また昨日みたいに戻ってきてすぐにするか、それとも食べてる最中にやっちまうか?」
そう言ったのは、隆次の取り巻きの一人である大沢正樹であった
「あぁー、今は無視でいいは、なんかやる気起きねーからな」
「そうか、わかった、じゃあ俺一人で行ってこようかな」
隆次が隼人へのいじめに反応を示さないと、正樹は一人で向かうことにした
◯
隼人は体育館裏で弁当を食べていた、しかし隼人は今日いつもと違い急がずにゆっくりと弁当を食べている。するとそこへ、正樹がやってきた
「おい!探したぞ!!今日はこんなところで食ってたのかよ!」
正樹は、隼人を見つけるや否や隼人の襟元を掴み上げそのまま殴り始めた
隼人の持っていた弁当から食材が飛び散り、あたりに散らばった
「サンドバッグのくせに移動してるんじゃねーんだよ!!」
大沢正樹と言う男は典型的な強いものに従い弱いものを虐げる、弱いものいじめをするいじめっ子のお手本のような男である
だがそう言う男に限って人から命令されるのは嫌いで、隆次に命令されるたびに彼は鬱憤が溜まっていた
「今でもこそ大希のゴミががわりにお前を羽交締めにする係をやってたけどよ、なんでその前は俺がやらねぇといけねーんだよ!!それに今も隆次の奴は俺に上から目線で命令してくる、偉そうで腹が立つ、それも全部お前のせいなんだよ!!」
ただの言いがかりを正樹は述べながら隼人への暴行を続ける
そうして時間が経ち昼休みの時間も終わりが近づき、正樹の暴行も終わりを迎えた
「この時間はこれくらいにしといてやるよ」
そんなセリフをはいて、正樹はその場から立ち去って行った
「ふっ」
正樹が立ち去ったあと地面に倒れ込んでいる隼人は彼のセリフとその後ろ姿を見て鼻で笑った、まるで小物だなそしてそんな小物にやられてる自分はそれ以下だなと
◯
全ての授業が終わった放課後、昼休みと違い今度は隆次と正樹以外の取り巻き達もまた隼人のいじめに参戦していた
昼休みに何もしなかったからかその日はいつも以上に隼人を殴る蹴るの暴行を行っていた、いつもなら1時間程度だがその日は2時間近くもの長い時間行われ、外で部活をしていた生徒達が後片づけを行っていた
「あーくそ、疲れたなー、疲れさせてんじゃねーよ!!」
隆次は自分から始めた理不尽な暴力で疲れたことに対して、怒りその原因の隼人に蹴りをいれその日の暴行は終わった
そして、隆次は教室を出て行き、それに続くように取り巻き達も出て、最後に大希が隆次やその取り巻き達の鞄を持って出ようとすると、床に突っ伏している隼人が声をかけた
「君はそれでいいの…?」
「なんだよ、哀れみか?ふざけるな!!俺はお前と違うんだよ!お前なんかと一緒にするんじゃない!!俺はこっち側のにんげんなんだよ!!」
そう言って大希は隼人を何発も蹴り隆次たちのカバンを持って教室を出て行った
こっち側てなんなんだよそう思いながら隼人は辛い体を起こし一番近くの席に座った、そして少し休んでから自分のカバンから用意していたものを取り出した
◯
隆次たちが出てからしばらくたち、隼人が教室で休んでいると、教室のドアが開き、教師の前川悠斗が入ってきた
「なんだ、まだいたのか、今日は長かったみたいだな」
隼人は久々に前川悠斗に話しかけられたなと思った、自分がいじめられてから初めてだと、そしてこれから自分のすることを託すのならこの人だと何故かそう思った
「先生お話があります」
悠斗は隼人のその覚悟を決めた目をみて何も言わずに隼人の話を聞くことにした
◯
悠斗との話を終えて学校の門を出ようとすると前から話し声が聞こえてきた
「でも、美織の幼馴染なんでしょ、それなのにあんなに冷たくしていいの〜?」
何か荷物でも忘れたのか美織とその友達が学校に戻ってくる最中だったようだ
「いじめられてるのに何もできないなんてダサくない、存在価値すらないのよあんなの、それに隆次は親が政治家でお金があるけどアイツの親はただの会社員、だからアイツは存在価値すらないただのダサい奴よあんなの、あ…」
友達と話をしていた美織は前に隼人がいるのに気づき足を止めた
「な、何よあんた、何なのその目、キモイのよあんた、さっさと何処かに行ってくれない」
美織がそう言うと隼人は一瞬だけ俯き、そして美織から少し目線を離して美織に話しかけた
「変わったね、美織…」
「何よ、変わったって、本当に気持ち悪いから早く私の前から消えてくれない」
そう言いながら、美織は顔を歪めながらそそくさと校門の奥へと進んでいった
君も変わったけど、それ以上に僕も変わっちゃったな…
◯
次の日、何も変わらず隼人は隆次たちからの暴行を受けていた、ただ昨日との違いを隆次が気づいた
「なんだこれ?何でレンガなんかがロッカーに置いてあるんだ?」
昨日には何も置かれていなかったロッカーの上には何故かレンガブロックが置かれていたのだ
「さぁ?誰かが拾って持ってきたんじゃね、それか誰か庭でも作ろうとしてるんじゃねーの?」
隆次の問いに正樹が答える
「まっ、どうでもいいけど、せっかくだしこれを使ってお前を殴ってやろうか!」
そう言って隆次はロッカーの上に置いてあったレンガブロックを持ち上げて隼人の前で振りかぶるが、隼人はそれに反応はしなかった
「冗談に決まってんだろ!もっと反応しろよカスが!!」
反応がなかった、隼人に苛立ち隆次は手に持っていたレンガブロックを床に放り、鳩尾をめがけて殴りかかった
いつもは鳩尾に蹴りや殴りを入れられると疼くまる隼人だったが今日はそれを耐え、それが隆次の日に油を注ぎ隆次をさらに苛立たせる
「あーくそ!!うっぜーな!ささっとぶっ倒れとけよ!!」
するといつも顔は殴らなかった隆次だったが、怒りが達し隼人の頬を殴った
その一撃により隼人は倒れ込み頬を殴られたことにより口内が切れて口から血を出して倒れ込んだ
それから少し経つと教師の前川悠斗が入ってきていつものようにホームルームを始めその日は隼人もすぐに立ち上がり自分の席についていた
◯
昼休みになるとこの日は隆次とその取り巻きたちは全員で隼人のところに行っていた
隼人が急いで弁当を食べていると思っていた隆次たちだがその日隼人は弁当を食べず、まるで隆次たちを待っていたかのように隼人は空を眺めていた
「何黄昏てんだよ、ゴミクズ、テメェの大事な弁当はどうしたんだよ?」
自分の思っていたことと違うと言うだけで隆次はまたイライラし出した
そしてその理不尽な怒りはまた隼人へと理不尽な暴力として向けられていた
その暴行は昼休みギリギリまで続き、隆次たちは教室へと戻っていき、それからしばらくして隼人も教室へと戻った
◯
放課後、またいつもと変わらず隼人は暴行を受けていた、ただまた一つだけ変わっていたことがあった、レンガブロックの位置が変わり床の端に置かれていた
隆次たちはそれに気づいていない、気づいているのは動かした本人ただ一人だけ
「なんか、殴る蹴るだけって飽きてきたな、なんか他にねーか」
全くもっての理不尽ただ辞めれば良いだけなのを他のいじめの方法はないかと聞く隆次それに大希が答える
「な、なら水責めとかどうかな、1分くらいなら苦しいけど死にはしないだろうし…」
「いいなそれ、それで行こう!おい水汲んで来い!」
隆次がそう言うと大希は廊下にあるバケツに水を汲んで戻ってきた
水を受け取った隆次は隼人の襟元を掴み無理やり隼人の顔をバケツに押し込んだ、隆次は大希が言った1分よりも長く押し付け息が苦しくなった隼人は流石に暴れ出し、水の入ったバケツは倒れ辺りに水が飛び散った、そしてその水が隆次にもかかり、隆次な怒りが最高点に昇る
「ふざけんなテメェ!!服が濡れたじゃねーかよ!!」
隆次の強烈な一撃が隼人の顔を襲うと隼人はよろめいてそのままレンガブロックがある方へと倒れ、ゴツと音を鳴らし彼はレンガブロックに頭を強打した
「お、おい大丈夫かよ、今ちょっと嫌な音したぞ」
流石に今のはまずいかと思ったのか正樹は不安に思ったが、隼人はよろめきながら起き上がった
「心配すんなよ、立ち上がってんだ大丈夫だろ、てか誰だよこんなところにレンガ置いたの、紛らわしいだろ!!」
起き上がってすぐに蹴りを入れられ、隼人はまた倒れ込んでしまった
「今日はこんぐらいにしとくか、いくぞ」
流石に少しは不安に思ったのか隆次はそのまま教室を出ていき、それに続き取り巻き達も教室を出ていった
それからしばらくして、隼人は失敗だったかと思いフラフラになりながらたちレンガブロックに打った頭を押さえながら教室を出ていった
痛む頭を押さえながら校門を出て家へ向かう最中隼人の頭がズキンズキンとだんだんと痛くなってくる頭を触ってもタンコブはできていない
1歩1歩進むたびに痛みが増していく、そしてとうとう歩くことができなかなるぐらい痛みが増し、隼人はその場はと倒れ込んだ
痛みは増し続ける、そして隼人はやっぱり成功だったんだと思い
(あとはお願いします先生)
最後にそう思いそして、隼人の意識は闇の中へと消えていく
市川隼人はこの日、命を落とした




