ピンク・キャッツの戯言
ワタシの持ち主はヒナコちゃんと言っていた。何処に行くにもワタシの手を引いて、色んな所に連れて行ってくれた。布が千切れても、綿がはみ出ても、泣きながらママにお願いして治して貰った。それくらい、ヒナコちゃんにはワタシが必要だったの。
……でもある日、遠出した先の遊園地のベンチに忘れられてしまった。初めはあのコを探した。夜なら皆に聞けたから、あのコは、ヒナコちゃんはどこ?って動けない体でワタシは聞いたの。でも皆、口を揃えて知らないって。あのコがワタシを捨てたって言うのよ。酷いでしょう?
だからワタシ、我慢したの。ママがいつも、ヒナコちゃんがワガママ言われたとき、我慢しなさいって。お姉さんでしょってヒナコちゃんに言うから。今度はワタシが我慢できるお姉さんになるの。
次の日、望んでいた通りヒナコちゃんが来てくれたわ!でも腕に抱かれていたのはワタシじゃないキレイなコ。酷く寒気がしたわ。
そ
の
コ
は
だ
あ
れ
?
その時、ヒナコちゃんが突然足を止めたの。
「……ピンクちゃん?」
ヒナコちゃん!こっちを見て!!
「何ボーッとしてるの?早くぬいぐるみ探すわよ!」
ママ!待って!!
…………お願い。止まって…………。
遠ざかる足音。ワタシは全て理解したわ。ワタシは捨てられた。薄汚いワタシは、ヒナコちゃんたちには要らないんだ。
まるで、心にぽっかり穴が空いた気分よ。綿が詰まっているのに、不思議な感覚ね。
……結局、閉園時間まで見つけては貰えなかった。気がついたらベンチから落ちて、影になる場所に追いやられてしまったの。ワタシの体は来た時よりもボロボロで、左腕が千切れ、右目のボタンは外れてしまったわ。
それでもヒナコちゃんに会いたかった。ヒナコちゃんに会って、またぎゅっと抱きしめて貰いたかった。悲しくて、虚しくて……お腹が空いて。どうしても何かをお腹に入れたかったから、探したの。
――ご飯を。
ソしたら、まタあえるヨネ。