第一話 たからもの
「マスター、大丈夫ですか?」
少女のような見た目をしたアンドロイドは言う。
「なに?――」
マスターと呼ばれる車椅子に乗った少年は、アンドロイドの名前を呼んで笑った。
「いつもより、元気がないように見えます。心拍数は正常、血圧が少し下がっています」
目の前に表示された、モニターを見て言う。
「――は優しいね。ありがとう」
そういいながら、アンドロイドの頭を撫でた。
「これが僕の使命ですから。マスターをお守りすること」
アンドロイドは目を細めて、笑ったように見せる。
「ところで、――、言葉は覚えた?」
「はい!言語の習得は難しかったですが、頑張りましたよ!」
少女は声を弾ませる。
「わあ、すごいね!さすが――。一年でここまでできるなんて」
少年はアンドロイドの頭をさらに激しく撫でた。
「わわっ、あはは、マスターの教え方が上手だからですよ。僕、マスターのためなら、なんだってできますよ!」
アンドロイドはそういうと、窓の外を見た。
この機械都市は、ドーム型のバリアに守られている。
「これからもずっと一緒にいようね」
カチッ
45番は、モニターの映像を止めると振り返った。
名前を呼ばれた気がしたからだ。
いつか、どこかで呼ばれていた名前。
何なのかは思い出せないが、それは宝物だった。
さっき見ていた映像は、昨日の会議のものだ。
45番と、今度は本当に呼ばれ、慌てて声のする方向へ走っていった。
急いで向かったつもりだったが、教官は腕を組んで待っていた。
「45番、ぼーっとしているな。襲撃はいつ来るかわからない」
少し呆れた様子だが、怒ってはいないようだ。
「うう、すいません。教官」
「次からは気をつけろ」
「はい、っ、来ました!二零型と見られます!」
赤い空を見上げて叫んだ。
〈全軍伝達完了、任務を遂行します〉
屋外で待機していたアンドロイドたちが一斉に駆けつける。
〈装備展開、二零型戦闘方式で稼動〉
アンドロイドたちの背部から一斉に装甲と武装が展開される。金属音が重なり合い、波のように広がっていった。
〈ターゲット確認。機械生命体四体〉
「いや、増援あり」
〈八体に増加。αに移行〉
通信音とともに、アンドロイドたちが流れるように隊列を変え、戦場へと駆けだす。
先頭のアンドロイドが砲塔を起動した。
〈敵影捕捉、迎撃開始〉
ドン!
放たれた光弾が、先行していた機械生命体の頭部を貫いた。
直後、右側面から回り込んだ別の個体が、ブレードで敵の脚部を切断。
「今だ、囲め!」
一斉に飛びかかり、コアに一斉射撃を加える。敵機の装甲が割れ、赤い閃光とともに爆散した。
〈一体撃破。ターゲット移行〉
〈後方、増援確認〉
「スキャン強度を上げて!自爆機には距離を取れ!」
通信が飛び交いながら、各部隊は次々と戦線を押し広げていく。
衝撃、爆音、閃光、火花。
戦場は音と光の洪水に包まれていた。
45番は中央の高台から全体を指揮していた。
冷静に状況を読み、必要な指示を飛ばす。
〈損傷率10パーセント以下。戦線維持可能〉
〈現在位置を維持〉
「襲撃に備えろ」
数秒の静寂。
だがそれは、大きな波が迫る前触れだった――。




